コミュニケーションは、すべてグローバルコミュニケーションです。
これだけ覚えれば貴社のコミュニケーションが自然と良くなっていく!という内容を全5回のシリーズで紹介したいと思います。
第1回目…「簡潔で明確な英文を書く上で、非常に大切な2つの要素とは?」
第2回目…「英語は能動態が基本!」
第3回目…「読みやすさは指標で測れる!」
第4回目…「ライティングをどう見せるか…重要なフォーマット」
第5回目…「読む目印、リーディングガイド」
私自身、翻訳をはじめ、マーケティング、本、スピーチライティングなど、20年以上、コミュニケーションの業務に携わってきました。
そして、今まで200社以上の日系上場企業の公開されている英文を評価してきました。
そこで、残念なお知らせがあります。
この20年、日本企業が発信している英文コミュニケーションはほとんど進化していない、ということです。
20年前の日系企業が公開している英語のマテリアルと、現在の日系企業の英語を比べてみても、残念ながらほぼ変化はありません。
海外のトップ企業と同じレベルの英語でコミュニケーションができればいいな、と思ったことはありませんか?
もっとうまく英語の表現ができたら、海外の株主といい話ができれば、機関投資家のアナリストの質問にうまく答えることができれば…。
現在の日本…グローバルコミュニケーションにおいて他国に遅れをとっています。これは言語の壁だけではないです。ほかにも理由があります。
この状況は誰のせいですか、誰の責任ですか?
日本の教育?日本の文化?日本人独自の性質?
どれも要素の一つではあると思います。
しかし、責任が一番重いのは、我々和文英訳の翻訳者です。
和文英訳者の英文ライティング技術が全く進化していないので、日本のコミュニケーションが進化してないのが実情です。
文法や句読点の間違い、グローバルビジネス英語とは言えない表現や文章の構造。
この場をお借りし、翻訳業界を代表してお詫び申し上げます。
誠に申し訳ございません。
この話はショックかもしれませんが、私から言わせれば、皆さんが大切な対外コミュニケーションを任せている翻訳会社は、英文ライティングのプロが存在していないというケースがほとんどです。
それどころか、大学の英文ライティングの授業でパスできるかできないかのギリギリのレベルの英語を成果物として皆様に納品しているとケースがほとんどだと思います。
「え?英語のネイティブなのに、英文が書けないとは、どういうこと?」と思いますよね。
ご自分の経験を振り返ってみてください。
日本人として、日本語の文章を読んで、「この人文章が上手い!」と思う方、そうそういないと思いませんか?
皆様が英語をネイティブレベルで自由自在に使えたら、海外企業とゼロベースのスタート地点になれる訳です。
ということは、和文を何とかして英文にするのが向こうのゼロベースになります。
「翻訳が完了したので納品します。最終版をお送りします。」
その翻訳会社が言う最終版は、たたき台の英文にすぎません。
では、どのようにこの状況を乗り越えられるか?そもそも、乗り越えることができるのか?
私は乗り越えることはできると思います。
日系企業も海外のIR優良企業と同等の説得力のある英文マテリアルを出すことができると思います。
英語のネイティブではない日本人であっても、英語、英文法、それなりにできるスキルはあると思います。
そもそも、ネイティブではないという理由以前の問題があるのです。
その問題に打ち勝つためのヒント、一番役に立つと思うガイドラインを紹介させていただきたいと思います。
「良いビジネス英語は簡潔で明確です。」
そして簡潔で明確な英文には、非常に大切な要素が2つあります
一つの要素はライティング自体です。
正しい文法、正しい文章構造、正しい句読点使い、適切な表現、適切な言葉選び。
これらを間違えると、御社の伝えたい大切なメッセージが正確に伝わらない可能性が出てきます。
もう一つの要素はライティングをどのように見せるか、いわゆるフォーマットです。
英文の質がそれほど良くなくても、効果的なフォーマットを使えば伝えたいメッセージを有効に共有することはできます。
この二つの要素を上手く組み合わせれば、海外のどの企業とでも、対等に説得力のある英文で戦うことができるでしょう。
ではまず、ライティングについて書かせていただきます。
いいライディングにはルールがあります。ルールというよりは、ガイドラインと思っていただければ良いかと思います。
今回紹介するのは、私が一番重要だと思っているガイドラインです。
これから紹介するガイドラインは、私自身も英語のネイティブに教育したいと思っているものです。
これらのガイドラインをしっかり頭の中に入れ込んでいただければ、英語自体に自信がなくても、御社のコミュニケーションが良いものなのか、改善できるものなのか、自信を持って判断することができるようになります。
それでは、私が一番重要だと思っている「ライティングの三つのガイドライン」を紹介させていただきます。
- 逆ピラミッドという原則
- 文章の構造(特に能動態)
- 読みやすいライティングが指標で分かる
今回のブログでは一つ目の「逆ピラミッドという原則」について書きます。
良いビジネスライティングと新聞の記事には非常によく似ている部分があります。
新聞の記事を考えてみてください。
新聞は紙媒体です。現在のネット媒体と違って、テキストが入るスペースが限られていますよね。
白黒時代の映画では、新聞業界をキャプチャーする場面が多かったですね。
当時憧れの業界だったからでしょう。
新聞の編集長(葉巻をくわえながら)が記者に指示をします。
「エリック君!今日4時までに1,000ワードの記事を出してくれ!」
なぜワードの数を指示したか、それはページのスペースが決まっているからです。
さて、ここで1,000ワードの記事ができましたが、なんらかの理由で、そのページには200ワード分のスペースしかない、となった場合、どうなるか分かりますか?
もちろん、書き直す時間はありません。
そういう時は、編集者が記事を下から切ります。
今、切ると言う言葉を使いましたが、昔は全て紙媒体だったので、実際にスペースに合わせるために記事を切りました。
こういう状況で、ニュースやメディアの業界では、逆ピラミッド方式と言う書き方が主流になりました。
要するに一番重要な情報を一番頭から伝えるという方式です。
例えば、1,000ワードの記事を下から切られても半分切っても、一番重要な情報は必ず残るわけです。
未だに、メディア業界は、この逆ピラミッド方式を使ってます。
テレビやラジオも、新聞や雑誌も。
そこで、一番重要な情報とは、何かですね。
誰、何を、どこで、いつ、なぜ、そしてどのように。
これを英語で言うと【five w’s and one h】と言います。
Who, What, Where, When, Why, How
グローバルビジネス英語も、この逆ピラミッド方式が基本です。
IRマテリアルだけではないです。メールの書き方もそうですね。
一番重要な情報を、最初に書きます。それから、詳しい情報、補足説明、などを書きます。
一つ、事例を見てみましょう。
日経新聞のイブニングニュース、冒頭です。見出しは、別として、第1段落を読んで見ましょう。
「KDDI(au)は電力・ガス販売で東京電力ホールディングス(HD)と提携する方針を固めた。auの携帯代と電気・ガス料金をまとめて払えば、数%の割引を受けられるようにし、携帯電話の解約を抑える。東電はauがもつ4000万人の顧客基盤を生かし、電力小売りで生き残りを狙う。飽和市場で大規模な顧客数をもつ異業種同士の連携が増えそうだ。」
この4、5行だけで大体5W1Hが分かりますよね。素晴らしいライティングだと思います。
そして、冒頭の文章を読むだけで一番重要な情報が分かります。
日本語の文章は、起承転結と言う構造で書かれていることが非常に多いです。
あるいは、一般的な情報を冒頭に、その情報の背景などを説明し、そして結論。
一番重要な情報を最後に持ってくる、こういうパターンが多いですが、英文のビジネスライティングのガイドラインと異なります。
欧米でも起承転結という方式を使わないわけでもないですが、大体、小説や映画の世界です。
しかし、私たちが書くのはビジネスライティングです。
英文は、なるべく結論から書きましょう。
さっき、何も解説しなかった日本の例文を紹介しましたがちょっと見てみましょう。
この中で一番重要な情報は何でしょうか?最後にきていますね。
これは日本の典型的な書き方と言えると思います。
日本人から見ればすんなり入ってくる良いライティングと思われるかもしれません。
しかし、これをこのまま、この順番に英語に翻訳してしまうと、外国人は違和感を覚えます。とりあえず結論から言ってくださいと。
貴社の株主や投資家の立場から考えて、一番重要な情報、一番知りたいであろう情報は何なのでしょうか?一番の核となる質問は何なのでしょうか?
もちろんマテリアルの種類にもよりますが、そのマテリアルにおいて、株主や投資家が一番知りたい情報から書いていくことを心掛けていただきたいです。
次回のブログでは、「文章の構造(特に能動態)」について書かせていただきます。
Reference: 日本経済新聞電子版 2019/2/18 18:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41410870Y9A210C1TJ2000/?nf=1
Eric Jackson エリック ジャクソン
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