フォント次第で印象が変わる?知られざるその重要性とデザインの影響力

フォント選びの重要性をご存じですか? その影響は、想像以上に大きいかもしれません。

フォントは、可読性や余白の使い方、さらには企業の印象にまで影響を与える重要なツールです。米国の専門ガイド「American Profession Guide」では、次のように述べられています。

「フォントが持つ力は、想像以上に大きいものです。感情や印象を、微妙でありながらも深く左右します。この感覚的な影響を理解することにより、デザイナーやマーケティング担当者、広報担当者は、より効果的にメッセージを伝えることができるようになります。」

本日のブログでは、「スペース」と「印象」という2つの観点からフォントを見ていきます。

たとえばスペースは、文章作成において非常に重要な要素です。特に日本語と英語のように構造が大きく異なる言語間の翻訳では、スペースの使い方が非常に重要になります。
実は、フォントの選び方によって、縦方向・横方向の両方でスペースを無駄にしている可能性があるのをご存じでしょうか?

日本語資料を英語に翻訳する際、英語の文章量は日本語の2倍程度に膨らむことが多く、図表、見出し、レイアウトの設計で課題が生じやすくなります。

フォントによっては、こうした課題をさらに悪化させてしまう場合もあるのです。

現在お使いのフォントは、英語向けに最適化されていますか?

フォントには、それぞれ用途に適した設計があります。

MS明朝、游ゴシック、メイリオといったフォントは、日本語表示には最適ですが、英語では文字間のバランスや可読性に課題が出やすくなります。

以下では、日本でよく使われるフォントが英語の資料に向かない理由をいくつかご紹介します。

英文レポートに不向きなフォントの例(その理由)

  1. MS明朝
    日本語の漢字・仮名に最適化されたセリフ体フォント。英語では線が細すぎて、ブロック全体が不均一に見え、長文になると読みづらくなります。
    問題: 線が細く、ローマ字のバランスが不十分。
  2. MSゴシック
    日本語資料で広く使われていますが、英語の文字は角ばっており、古くさい印象を与えます。
    問題: プロポーショナルでないため、不自然で堅い見た目になる。
  3. 游明朝
    日本語では上品な印象を与えますが、英字の文字幅が**不均一(狭すぎる/広すぎる)**で、全体がアンバランスになります。
    問題: スペース効率が悪く、文字間(カーニング)が不安定。

では、どのようなフォントが英語に適しているのでしょうか?

英語のフォントは、セリフ(Serif)体とサンセリフ(Sans-Serif)体という2つの大きなカテゴリに分けられます。以下は、アメリカの印刷会社 Carter Printing による説明です。

セリフ体(Serif Fonts)
伝統的な本文用フォントです。Times New Roman や Garamond などが代表例です。文字の先端に 「ひげ(セリフ)」 と呼ばれる小さな線があり、文字サイズが8〜9ポイントでも可読性が高いのが特長です。書籍や小説などの印刷物によく使われています。

サンセリフ体(Sans-Serif Fonts)
“sans”は「〜なし」の意味で、セリフのないフォントを指します。Google Docsの標準フォント Arial や、Microsoft Wordの自動設定フォント Calibri もこのカテゴリに含まれます。セリフがないことで、すっきりとした現代的な印象を与えるため、デジタル資料に適しています。

(出典:Carter Printing

代表的なサンセリフ体・セリフ体フォント

サンセリフ体: Arial、Helvetica、Roboto、Calibri
セリフ体: Times New Roman、Georgia、Garamond

セリフ体・サンセリフ体のいずれも、英語の資料におけるプロフェッショナリズム、明確さ、標準的な見た目を実現するうえで有効です。

では、読み手に与える印象(トーン)にはどのような違いがあるのでしょうか?

American Profession Guide」によると、Times New Roman のようなセリフ体フォントは、新聞や書籍、その他のフォーマルな印刷物との関連性が高く、格式や信頼感を連想させる傾向があります。

一方で、サンセリフ体は、デジタルコンテンツによく使用され、モダンで、すっきりとした印象を与えるとされています。

  1. Arial
    よく使用されているサンセリフ体フォントで、すっきりとした現代的な印象が特長です。画面上でも印刷物でも読みやすく、プロフェッショナルなレポートに適した信頼性の高い選択肢です。
  1. Times New Roman
    クラシックなセリフ体フォントで、フォーマルさと読みやすさのバランスが取れています。学術資料やビジネス文書でも広く使用されており、大量のテキストを読者がスムーズに処理できる構造を持っています。
  2. Helvetica
    明瞭さと中立性が評価されている、汎用性の高いサンセリフ体フォントです。文字のバランスや曲線が整っており、企業レポートやブランド用途にも適しています

フォントにそんなに違いがあるのでしょうか?

日本語向けフォントと英語向けフォントを実際に並べて比較してみましょう

以下の図では、Yu Mincho(游明朝)と Times New Roman を同じサイズで使用し、「English」という単語を入力しています。

図1

Times New Roman(セリフ体)と同様に、Yu Mincho(游明朝)にも文字の下部に“ひげ”があります。一見すると似たようなフォントに見えますが、Times New Roman(英語向け)とYu Mincho(日本語向け)では設計が異なります。

ここでは、フォントサイズを120に拡大し、ハイライト表示でその違いを確認してみましょう。

図2

灰色のボックスの高さと幅の違いにご注目ください。

Times New Roman は英語に最適化されたフォントで、文字ごとの間隔(カーニング)や文字の上下の余白がよりコンパクトに設計されています。単語1つでは大きな差に見えないかもしれませんが、100ページに及ぶレポート全体で考えると、かなりのスペース差になります。また、Times New Roman の文字はやや丸みを帯びているのに対し、Yu Mincho の文字はやや角ばっている点にもご注目ください。

次に、フォントサイズを小さくして別の例を見てみましょう。

図3

この図では、左側に日本語向けの一般的なフォント3種、右側に英語に最適化されたフォント3種を使用しています。すべてのテキストはフォントサイズ10.5で統一しており、異なるのはフォントの種類のみです。

左側の日本語フォントは、文字間や行間に余白が多く必要であることが分かります。
中でも MSゴシックと Times New Roman の差が特に顕著で、MSゴシックでは1行分余計にスペースを消費しているのが見て取れます。

また、Times New Roman(セリフ体フォント)は、Arial や Helvetica(サンセリフ体)と比べて、より伝統的で信頼感のある印象を与える点にもご注目ください。

まとめ

フォント選びは重要です。見た目の問題だけではなく、伝えたい内容を明確かつプロフェッショナルに、そして読者に最適な形で届けるための鍵となります。

フォントの使い方についてご不明な点があれば、ぜひ One World Link までお問い合わせください

次回、英語版レポートのフォーマットを検討する際は、「フォントは言葉以上に多くを語る」ということを思い出してください。

初期のデザイン段階から、英語版におけるフォント、文字方向、レイアウトの調整を考慮するよう、制作担当者へ依頼しましょう。

参考リンク

タイポグラフィの入門記事(英語)
https://www.toptal.com/designers/typography/typeface-classification

英語フォントを2つ並べて比較できるユニークなサイト(英語)
http://www.identifont.com/differences.html


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