投資家向け広報やグローバルコミュニケーションの現場では、「何を伝えるか」ばかりに意識が向き、情報を「どのように伝えるか」を見落としがちです。明確でプロフェッショナルな英語を書くためには、内容そのものだけでなく、情報の示し方が重要です。英語テキストの構成やレイアウトは、読者がメッセージを理解しやすいかどうかに大きく影響します。
プロのビジネスライティングでは、情報を整理し、わかりやすいセクションに分けて提示する手法をよく用います。海外の読者にとって、長い文章の塊は負担が大きく、内容を追いにくくなります。投資家向けプレゼンテーション、株主向けメッセージ、統合報告書など、どのような文書でも、段落が密集していると読み手の集中力が途切れ、重要な点が伝わりにくくなります。
読みやすく、理解しやすい文書にするために、箇条書きや番号付きリストを活用することをお勧めします。これらのツールは、要点を簡潔に示し、読み手が内容を整理しながら読み進められるように導きます。グローバル向けの企業コミュニケーションを担う方にとって、欠かせないスキルです。
箇条書きが有効な理由
海外読者は、簡潔で整理された情報を好みます。
英語圏のビジネス読者は、限られた時間の中で効率よく情報を把握するため、文章を流し読みする傾向があります。読み手は、重要な情報を素早く、明確に確認したいと考えています。
箇条書きや番号付きリストを使うと、情報量が多い内容でも、構造化され読みやすい形に変わります。読みやすさが向上するだけでなく、文章全体がよりプロフェッショナルに見え、海外のステークホルダーに複雑な内容をわかりやすく伝えられます。
主なメリットは次のとおりです。
• 視認性の向上:文章を箇条書きで区切ると余白が生まれ、読みやすさが高まります。
• 情報を素早く把握:段落を読まなくても要点をすぐに確認できます。
• 理解しやすい構成:複雑な内容でも、整理された形で簡単に追えるようになります。
非ネイティブにとっても、箇条書きは書き手の負担を軽減し、誤解を防ぎながら明確なメッセージを伝えるのに役立ちます。
次の例をご覧ください。
Our company adheres to multiple standards and recommendations, including the Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD) guidelines, the Global Reporting Initiative (GRI) standards, the United Nations Sustainable Development Goals (SDGs), the International Integrated Reporting Framework (IIRF), and the recommendations of the Sustainability Accounting Standards Board (SASB).
VS
Our company adheres to the following standards and recommendations:
• Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD)
• Global Reporting Initiative (GRI)
• United Nations Sustainable Development Goals (SDGs)
• International Integrated Reporting Framework (IIRF)
• Sustainability Accounting Standards Board (SASB)
このように、箇条書きを使うだけで、情報の理解が大幅に容易になります。
箇条書きと番号付きリストの使い分け
箇条書きは、項目の順序が重要でない場合に適しています。Ho(2023)の研究では、箇条書きが読み手の負担を軽減し、情報を素早く吸収できるようにする効果が示されています。例えば次の場面で有効です。
• 長いリストを細分化して示したいとき
• 主なポイントをまとめたいとき
• 重要な情報を強調したいとき
一方、番号付きリストは、順序や優先度が重要な場合に向いています。次のような内容で効果を発揮します。
• ステップ形式の説明
• 優先順位のあるタスク
• 時系列で示すイベントやプロセス
注意点
Clearly Scientific Ltd. の記事では、箇条書きを使う際のポイントが整理されています。特に押さえておきたい点は次のとおりです。
• 箇条書きの項目数を7つ以内にする
• テキストをできるだけ短く保つ
• 文章構造を統一する
長くて読みにくい文章をそのまま箇条書きに移しても、読みやすさは向上しません。箇条書きや番号付きリストの目的は、情報を「短く、わかりやすい単位」に分解することです。項目が多すぎると、読み手にとって逆に負担になります。
一貫性も重要です。英語では、動詞で始まる項目と名詞で始まる項目が混在すると不自然に見えます。多くの項目が動詞で始まるなら、他の項目も同じ形式に揃える必要があります。また、リスト内の項目の長さが大きく異なると読みづらく、記事でも次のように指摘されています。
「短い文章と長い文章が混在すると読み手の注意がそれやすく、各項目の重要度について誤った印象を与える可能性があります。」
英語文書をもっと伝わる形にするために
次に英語のコーポレートコミュニケーション文書を作成するときは、海外の読者が重視する「明確さ」と「構造」を意識してください。長い段落を区切り、必要に応じて箇条書きや番号付きリストを使い、読み手が要点を素早く確認できる形に整えましょう。
これらの手法は、日本語では同じように適用できない場合もありますが、英語のビジネスコミュニケーションでは非常に効果的です。次回のIR文書やステークホルダー向けメッセージで、ぜひ取り入れてみてください。
読み手に、よりわかりやすく整理された情報を届けられるようになります。
Mia Omatsuzawa 大松澤実絵
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