Facebookの新しいタイムラインページのデザインやルールは大企業にとっては恵であり、中小企業にとっては痛手である。
1. カバー画像
Facebookのトップページを850ピクセルのテーマ画像で飾る、というのは実にわかりやすい。しかし中小企業には使える画像も、クリエイティブなスタッフも、Facebookカバーのためにこれらを作る時間もないのが現状であり、これは彼らのいう進化ではなく、ただの負担である。
2. カバー画像での宣伝禁止
Facebookは企業も個人と同じようにアクティビティー(行動)や交流を行って欲しいと思っている。そしてカバー画像での宣伝文句の使用禁止は、その哲学「行動喚起の切り札」を強化する方法の一つである。Facebookが特にこの新しいカバー画像に宣伝文句を禁止したことについて、Facebookデザイン部門を指揮するSam Lessin氏は以下のように述べている。
「カバー画像のキーポイントは物語りと表現である。私たちはすべての人にとって良い経験を作り上げたい、そしてこのガイドラインが企業にとって本当に役立つものだと思っている。企業は、閲覧者にまた帰って来たくなるような魅力のある内容を作ること、感情面での繋がりを作ることを奨励しているのだ。」(VentureBeatより引用)
感情面での繋がりを作るというは贅沢品であり、ランチタイムの休憩時間しかFacebookに手を加える時間がないといった中小企業にとっては手が届かない話である。
3. ランディングタブの消滅
以前のFacebookで中小企業が秀でることができた一つが、ランディングタブだった。これが多くの企業にとっての事実上ランディングページ/マイクロサイトとなり、特に安価なソフトウェア使用の場合、これで比較的ファンの動きを誘導しやすかったが、言うまでもなくFacebookはタイムラインでこれをやめてしまった。
「いいね!」を促進させる為に、他の手を採用できるような大企業にとっては、ランディングタブの消滅はさほど問題ではない。Facebookの変更に関してソーシャルメディア・マネジメント・ソフトウェア会社Involverの製品マーケティング責任者Roland Smart氏はこう語った。
「まったく大したことではないと思う。Facebook利用者はウェブ閲覧にそれほど長く時間をかけない。ナイキのホームページ上のリンクからナイキのFacebookページに行く。それはホームページ上の広告や、Facebookウォールのリンクからだ。」
4. 固定とハイライト
“トップに固定済の投稿 – 上部右端に小さなしおりアイコンが表示される。
ページトップに投稿を最長7日間固定させるオプションと、投稿をハイライトして倍の幅にするという新機能(ただし一つの投稿に両方は不可)は大きな進歩だと売り込まれている。大企業にとってはそうだろう。しかし中小企業にとっては、今やFacebookに何を投稿すべきか考え出すだけでなく、多くが十分な準備も資料もないままハイライトや固定のおかげでさらなる編集に時間を割くプレッシャーや複雑な対処に直面しなければならない。
5. ダイレクトメッセージ
Facebookはウォールチャットをより有益に保ち、Twitterがソーシャルメディア顧客サービスのデフォルトサイトへどんどん前進していくのを防ぐために、閲覧者が企業へダイレクトメッセージを送れるオプション機能として、提案しているようだ。 しかしこれは閲覧者がこの交流の主導権を持ち、企業が閲覧者に一方的にメッセージを送ることはできないことを意味する。称賛すべき機能のように見えるが、中小企業にとってはほぼリアルタイムでモニターし返答しなければならない「受信箱」が一つ増えることになる。
@kikolaniの最近の画面画像。
6. アクティビティー(行動)内容の配信
新しいタイムラインバージョンでは、全ページにそのページ上で行った行動すべてに加え、自分の友達がその企業と交わした交流も目立つように表示されている。したがって、中小企業がもし定期的(最低1日1回)にページのアップデートを行ないたくない、もしくは行えない場合、タイムラインのデザインによって行動の少なさが際立って目立つことになる。たぶんこれは良いことかもしれない。ページのアップデートができないような会社はFacebookをするべきではないのだろう。しかしこれも中小企業が嫌う変更点の一つだ。
7. 第三者アプリへのペナルティー
@kikolaniより。
ソーシャルメディア・マネジメントビジネス参入への無関心を公言し続けているにもかかわらず、Facebookはエコシステムパートナー達を片手で抱きかかえ、もう片方の手で平手を浴びせている。第三者ツールを使ってFacebookページに投稿を行うと、直接Facebook.comに入力した内容よりも見劣ったページがアップデートされることがよくある。
時間削減とソーシャルメディアの効率向上を意図し第三者ツールに頼る中小企業にとってこれは問題である。
8. 新しいタブの幅
アプリの居場所をさらに広げようと、またFacebookは最大幅を520から810ピクセルに変更した。これは壊滅的状況ではない。例によって小さいアプリが新しい大幅ページの真ん中で浮いているだけだ。しかしいずれはアプリを大きくしたり、見直さなくてはならない。中小企業が抱えるもう一つの問題だ。
(幸いにも、Lujure, North Social, Short Stack, Tabsite, Agorapulse 等、すでにこの処理に役立つ低額または無料のソフトウェアがいくつかある。)
9. プレミアム広告
InvolverのRoland Smart氏はこう言った。「Facebookはマディソン大通りにある企業が喜ぶような新しい広告機能の試作について公言している。」 実際、中小企業を犠牲にして行うだろう。Facebook広告が持つターゲティング潜在力は計り知れないほど強力だ。しかし、メッセージを最大限に取り上げることができるこの機会はそもそもブランディングやかかわりを求める大企業よりも、クリック・リード・セールスの成果報酬を求める中小企業の関心を引く所である。さらに大きくダイナミックになったこの新プレミアム広告はインプレッション単価(CPI)で大企業に高く売られ、中小企業の好むほとんどのコストパークリック(CPC)市場広告でのインベントリーを減らす。
広告代理店のすべてがクリックよりもインプレッション単価を好むので、Facebookの観点からするともちろん理にかなっている。しかし中小企業にとってこれは痛手だろう。
10. リーチジェネレーター
Facebookは今のところ大企業のみに向け、近況アップデート用に新リーチジェネレーター機能を利用した追加「リーチ」の購入を可能にした。Facebook最高執行責任者(COO) Sheryl Sandberg氏は、ステータスアップデートへのリーチ数の平均は16%しかないことを認めている、つまりファン100人のうち16人しか実際にステータスアップデートを見ていない。ニュースメールの平均閲覧率(最高25%)と比べてほしい。また、Facebookの可視性はメールの2/3しかないということも注目して頂きたい。だが魔法の如くFacebookはこの「問題」への解決策を見出した。企業からもっとたくさんの広告を購入するという策だ。
独自のEdgeRankアルゴリズムをベースに、Facebookが全体の16%を占めることを考慮して(しかし、これはPagelever.comのJeff WidmanなどFacebook専門家が導き出した数字7.5%-10%より高い)、今になってFacebookはこの最高で75%のファンの目の前に近況アップデートを持ってくるというリーチジェネレーターの宣伝展開に先駆け、作為的に近況アップデートへのリーチ数を減らしていたと根本的に認めたということが腹ただしい。
基本的に、Facebookは「いいね!」を獲得するために企業がアプリなど諸々に金と時間をかける必要があると言っている。しかし例により、企業が金をかけない限り、大部分のファンが企業の近況アップデートを見ることはない。企業の「無料」オプションとしてのFacebookはこれで終わった。そしてこんなに厚かましく陰険にやってのけるのを見るとパソコンの前で叫びたくなる。
11. リアルタイムインサイト
Facebookの埋め込み型インサイト統計データプラットフォームは、まさにその方向性転換の頻繁さからギングリッチ氏(アメリカ保守派政治家)のようだ。そして今度はリアルタイム統計を発表した。イメージとしては、企業は投稿が不均等にけん引されているとすぐに気づくことができ、即座にリーチ強化のための有料広告への切り替を行えるということだ。これは間違いなく粋な計らいだ。しかし言うまでもなく、予算に限りがあり、リアルタイムでデーター傾向をじっと座って見ていられるスタッフのいない中小企業には手が届かない。
12. ライフイベント(象徴的出来事)
スターバックスのライフイベント付タイムライン
新たなFacebookのスクラップブック神話を表す最大の指針がライフイベント機能だ。これによって企業は社歴のどの時点に関しても投稿できる(Facebook開始よりもっと前も含めて)、そしてこれをライフイベントとして投稿できる。この例ではページ右端にライフイベント年表として表示されている。長年続いている企業にとってこれはすばらしいオプションだ。しかし、投稿できる写真も時間も無く、昔の歴史的記録を探したい気持ちすら起こらないような中小企業なにとっておそらくこれは遠すぎた橋かもしれない。
13. 内容の自動再生
InvolverのSmart氏によると、タイムラインの非公表機能として、ユーザーのクリックなどのアクション無しでFacebookアプリが内容を自動再生できる、というものがある。高価なメディアアプリや動画向き内容への重大な含みを持っている。大企業にとっては新しくできた遊び場だが、中小企業にとっては金や願望を投じる対象にはならないだろう。
14. 開始スケジュール
企業向けタイムラインとその他変更に関するFacebookの発表で私のお気に入りのパートがFacebook Lessin氏のこの名言、
「私達は多量の事前通知をすることに尽力してきた。これで利用者の方にどんな変更かについて十分知ってもらうことが出来た。」(VentureBeatより引用)
中小企業に対して、Facebookまたはソーシャルメディア部門を持つ大企業は「大量の事前通知」への解釈の仕方が違う。カバー画像を見つける、ランディングタブを取り換える、宣伝文句の変更、いつどの投稿を固定しハイライトするかの決定、ダイレクトメッセージの対処法、古いアプリを修正しどの2つのアプリをデフォルトとして表示するか選ぶ、ライフイベントを加えるか?これらすべてを30日間で行わないといけない。毎日ゆっくり構えて、Facebookの一番の活用法を思案したりしない中小企業にとってこれは驚くほど短い。
そしてタイムラインへの強制変更までにFacebookが用意した4週間の内1週は、親切にも中小企業の方々の多くが家族旅行に出かける春休みにあたるのではないだろうか。皮肉にもFacebookが何よりも望む思い出や映像を作りながら…。
あなたの意見は?
思いのままのコメントを載せてください。あなたにとってタイムラインはどうですか?
Mia Omatsuzawa 大松澤実絵
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