日本語レポートの英語表記、本当に正しいですか?

(English blog: Are You Using Incorrect English in Japanese Design? | One World Link)

日本語の報告書デザインの中で英語を使用していますか。

ブランディングやグローバル対応、または開示資料全体での一貫性を目的として英語を取り入れるケースが増えています。しかし、最終的なレイアウトを確定する前に、必ずネイティブの英語話者による確認を行うことが重要です。

この確認がないままデザインを進めてしまうと、レイアウトに組み込まれた英語表記に問題が潜んでいることが多く、翻訳段階になって初めて課題が表面化することがあります。その時点でデザインを修正しようとすると、大幅な変更が必要になる場合があり、日本語版と英語版のどちらにも影響が及ぶ可能性があります。

課題が発生するポイントはさまざまで、カタカナ英語、短い英語ラベル、英語ベースの見出し、タグライン、その他のコピー表現など、多岐にわたります。以下では、IR・ESG関連の日本語報告書で特によく見られる代表的な例をいくつか紹介します。

カタカナ英語

日本語の報告書で使用される英語表現の多くは、カタカナ語や日本語の文脈では自然に機能する略語が元になっています。しかし、これらの表現は英語として見ると明確さを欠くことがあり、誤解を生む場合もあります。よく見られる例として、次のようなものがあります。

  • テーマ

Theme と訳されることが多い言葉ですが、文脈によっては適切ではありません。topics、discussion points、focus areas など、内容に合わせた訳語を検討する必要があります。

  • インプット・アウトプット(または類似の見出し)

Input や Output が適切な場面もありますが、文脈によっては複数形が求められます。日本語のカタカナ語はそもそも単複の概念を持たないため、そのまま訳すと意図が伝わりにくくなる可能性があります。場面に応じて、singular と plural のどちらが必要なのか判断しながら翻訳することが重要です。

  • トップメッセージ

日本語レポートで頻繁に見かける見出しですが、Top Message は米国のコーポレートコミュニケーションでは一般的ではありません。Message From the CEO や CEO Message など、より自然な選択肢があります。

これらの訳語は必ずしも誤訳というわけではありませんが、英語として見ると幼稚、直訳的、あるいは「日本語の構造をそのまま英語に置き換えた表現」に見えることがあります。さらに、こうした英語が背景デザインやグラフィックの中に組み込まれている場合、翻訳段階で問題が見つかっても簡単に修正できません。

デザイン段階の早いタイミングで、ネイティブの英語話者や信頼できる翻訳会社に確認することが非常に重要です。

タイポグラフィ

日本語レポートの中で英語を使用する際は、タイポグラフィにも注意が必要です。日本語用に最適化されたフォントは、英語の文字間隔(kerning)や文字の形状に必ずしも対応していません。英語に適したフォントを選ぶことで、英語表記が日本語版・英語版のどちらでも整った印象になり、文字間隔の不自然さやレイアウト上の不一致を防ぐことができます。

下の例では、同じフレーズを4種類のフォントで表示しています。右側には Georgia と Arial(英語向けフォント)、左側には 游ゴシック と メイリオ(日本語向けフォント)を使用しています。

日本語向けフォントでは、文字一つひとつの間隔がわずかに広くなっていることが分かります。この文字間隔が kerning(カーニング) です。英語では、この間隔が引き締まりバランスよく整っているほど、洗練された印象になります。

また、日本語フォントは漢字や仮名の縦方向の特徴に対応するため、英語フォントよりも広めの leading(行間) が設定されています。そのため、日本語フォントで英語の段落を組むと、行間が広くなりすぎて間延びしたレイアウトになってしまうことがあります。

英語向けフォントについて詳しく知りたい方は、こちらのブログをご覧ください
日本語向けフォントについては、こちらをご参照ください。

まとめ

日本語の報告書の中で英語を使用することは、グローバルな印象を高めるうえで効果的です。ただし、その英語が正確で自然であり、タイポグラフィの観点からも適切に整えられていることが前提となります。直訳的な英語やフォーマットが不適切な英語は、翻訳段階で修正が必要になることが多く、日本語版のレイアウトが英語の仕様を考慮していない場合、対応が難しくなることがあります。

英語を使う前提でレイアウトや構成を検討すると、日本語版・英語版の双方の完成度が高まります。明確で一貫した英語は、投資家の理解を促し、IRコミュニケーションに求められるプロフェッショナリズムを示すことにつながります。

One World Link では、日本語レイアウトに組み込まれた英語のチェックから翻訳前の事前確認まで幅広くサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。


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Mia Omatsuzawa 大松澤実絵

Chief Executive Officer (CEO)One World Link Inc.
英語のコミュニケーションにお悩みの方、私にご相談ください。真のコミュニケーションを、心と心のコミュニケーションの実現をご提供いたします。 担当記事:主に英語のコミュニケーション、ライティングについての記事を担当。また、価値あるグローバルな情報をいち早く日本語で皆様にお届けいたします。      mia@oneworldlink.jp  Facebook(Mia Omatsuzawa) 

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