(English blog: One Easy Way to Make Your English Writing Appear More Natural | One World Link)
日本語のリストや同じ階層に並ぶ項目をそのまま英訳すると、英語で重要な要素である「パラレル構造(parallel structure)」が抜け落ちてしまうことがあります。
パラレル構造とは、リストや同じグループ内の項目を、文法や表現の形式をそろえて示すことを指します。直訳では日本語の構造をそのまま反映してしまいがちですが、英語でパラレル構造が欠けると、読みにくさや違和感につながります。
質の高い英語は、正確さだけでなく構造の分かりやすさにも支えられています。構成が明確で一貫していると、読み手は重要なポイントをスムーズに理解でき、海外の読者にも迷いなく情報が伝わります。
非パラレル構造
OWLでは、日本語の報告書でパラレル構造になっていないリストや語句の並びをよく目にします。動詞、名詞、動名詞(ing形)、その他さまざまな品詞が一つのリストに混在するケースが多く、日本語では文脈から意味を推測できるため問題になりにくい表現です。しかし、英語では同じ読み方ができません。
構造に統一性がないまま提示すると、英語では不均一に見え、読みづらさが生まれます。特に、明確さと一貫性が求められるIR文書においては、読者の理解を妨げ、コミュニケーション上の問題につながる可能性があります。
以下の日本語の例をご覧ください。

このリストをどのように訳しますか。直訳すると、パラレル構造ではない次のような英語になるかもしれません。

項目③をご覧ください。最初の二つの項目とは異なり、environmentally friendly activities には動詞が含まれていません。この動詞の欠落は、英語の読者にとって違和感があり、企業がこれらの活動に対して「どのような行動を取るつもりなのか」が読み取れなくなってしまいます。
環境に配慮した活動に「取り組む」予定なのか。
それとも活動への参加を「増やす」予定なのか。
新たに活動を「開始」するのか。
現在の取り組みを「継続」するのか。
読み手は目的を推測しなければならなくなり、意図が正確に伝わりません。
パラレル構造を整えることで、読み手は内容をスムーズに追うことができ、誤解を防ぎ、重点項目が明確になります。また、文章全体に一貫性と洗練さが生まれ、信頼性の高いコミュニケーションにつながります。
同じ階層に並ぶ項目
同じ階層に並ぶ表現は、必ずしもリストとしてまとめられているとは限りません。
その一例が「マテリアリティ」です。マテリアリティは、サステナビリティレポート、ESG開示、IR資料など、さまざまな報告書で広く用いられる要素となっています。
各マテリアリティをレイアウトする際は、リスト形式でなくても、同じ階層に並ぶ項目は同じ時制・同じ文法構造で統一することが重要です。報告書内の複数のセクションで登場する場合でも、一貫した形式を保つことで読者にとって理解しやすい表現になります。
次のマテリアリティを見てみましょう。
パラレル構造になっているでしょうか。
それとも、動詞、名詞句、動名詞が混在している箇所を確認できますか。
もし混在が見られる場合、どのように修正できるでしょうか。

このマテリアリティの並びがパラレル構造になっていないと感じたのであれば、正解です。
では、どのように修正するのが最も効果的でしょうか。
対応方法として、次の三つが挙げられます。
- 動詞や動名詞(“-ing” で終わる形)をすべて名詞句に統一する
- 名詞句や動名詞をすべて動詞フレーズに統一する
- 名詞句と動詞フレーズをすべて動名詞に統一する
次に、編集後のマテリアリティ内容を見てみましょう。

このグループの各項目はパラレル構造になっているでしょうか。
正解は「はい」です。
今回の修正では、すべての表現を “–ing” で終わる形(動名詞)に統一しました。
ただし、どの形式にそろえるべきかは一概に決まっているわけではありません。plain verb(動詞の原形)、“-ing” verbs(動名詞)、あるいは名詞句のいずれを選ぶかは、文書全体のスタイルや文脈、そして読みやすさとのバランス によって変わります。
まとめ
直訳では、英語で重要となる構造上のサインを見落としてしまうことがあります。英訳時にパラレル構造を意識することで、誤解を防ぎ、日本語の意図をより正確に伝えることができます。
同じ階層に並ぶ表現や複数の要素を示す際にパラレル構造を整えることで、文章に一貫性と洗練された印象が生まれます。明確な構成は海外投資家の理解を助け、信頼性や透明性の向上にもつながります。
英文の一貫性づくりでお困りの場合は、ぜひ One World Link にご相談ください。
Mia Omatsuzawa 大松澤実絵
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