私と同じように、「ChatGPTのほうが数字に強いに決まっている」と思っている方も多いのではないでしょうか。なにしろAIですから、データを処理したり、情報を分析したりするのは得意分野のはずですよね。
しかし、ChatGPTに大きな数字の翻訳を完全に任せきりにしている方には、少し残念なお知らせがあります。実は、数字の翻訳において、意図せず訳文を“水増し”してしまっているケースがあるのです。
ChatGPTの“数字の水増し”:ケース1
私もそうですが、大きな日本語の数字を英訳するときに迷う方は多いのではないでしょうか。
「100 million」は「一億」?それとも「百万円」?
「一億」ってゼロがいくつだっけ……?
以下のスクリーンショットは、ある翻訳で困ってChatGPTに助けを求めたときのやりとりです。

赤枠で囲ったこの2つの箇所を見てみましょう。

ChatGPTは、9億円と125億円の両方を「9 billion yen」「125 billion yen」と誤訳してしまいました。
(正しくは「0.9 billion yen」「12.5 billion yen」であり、見過ごせない大きな誤りです。)
「一度だまされたら相手のせい。二度だまされたら自分のせい。でも、堂々とウソをつかれたら……さすがに驚きます。」
次の例では、42,383百万円をゼロとカンマ付きで入力する必要がありました。
ChatGPTが返してきた答えは「423,830,000,000」。
最終チェック中に「あれ?この数字おかしいかも」と気づきました。
「百万」は「one million」なので、42,383百万は「42.383 billion」のはず。
なのに、ChatGPTはなぜ「423 billion」と言ってきたのでしょうか?
念のため、「42,383,000,000は間違ってますか?」とChatGPTに確認してみました。

ご覧のとおり、ChatGPTは「42,383,000,000は間違いです」と断言してきました。
さらに説明を求めたところ、どうやらChatGPTは「百万円=1億円(=100,000,000)」という前提で計算していたようです(これはさすがに驚きです)。
まさか、世界最先端のAIが「数字の計算」で間違えるなんて、思ってもいませんでした。
再確認と常に慎重な姿勢を
このような誤訳が、生成AIに翻訳や最終確認を任せている方々にとって、重大なリスクをはらんでいることは言うまでもありません。
AIによる翻訳を鵜呑みにしてはいけません。AIは強力なツールではありますが、まだその回答を全面的に信頼できる段階には達していません。
もしあなたの目的が“架空の10億ドル評価”で投資家を驚かせることでない限り、特に財務翻訳においては、AIを過信せず、細心の注意を払って使うべきです。

Mia Omatsuzawa 大松澤実絵

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