HTMLで統合報告書を発信する7つのメリット

統合報告書をPDF形式で公開していませんか?印刷を前提としていないのであれば、HTML形式で発信することで、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションの機会を広げられるかもしれません。

PDFは長年にわたって情報発信・印刷に活用され、多くのメリットがあります。しかし、企業コミュニケーションの在り方は変化しています。ペーパーレス化が進む中、PDFは最適な手段ではなくなりつつあります。

自社の報告書が本当に読まれているか、把握できていますか?PDFのダウンロード数を追跡していますか?閲覧データを可視化することは、ステークホルダーの関心や重視しているテーマを理解する上で欠かせません。

Microsoft、Philips、BASF、Bayerといったグローバル企業は、ハイパーリンクを活用して情報同士のつながりやナビゲーション性を高めた包括的なオンラインレポートをHTML形式で公開しています。 HTMLでの発信は、閲覧者の利便性を高めるだけでなく、分析データを通じて読者理解を深めることにもつながります。

HTMLとPDFの違い

コーポレート・バリュー・レポーティング・ラボ(Corporate Value Reporting Lab)によると、統合報告書を発行する日本企業の数は年々増加しています。2015年には200社強だった発行企業数が、2023年には1,000社を超え、今後さらに増加が見込まれています(詳細はフルレポートをご参照ください)。

PDFとHTMLのどちらの形式で発行している企業が多いのか、明確な統計はありませんが、デジタルレポートへの移行が進んでいる傾向は明らかです。

NexxarのCEOであるエロイ・バランテス(Dr. Eloy Barrantes)氏は、2018年にIFRS財団の統合報告に関するニュース記事で次のように述べています。

「統合オンラインレポートは多くの企業で定着していますが、企画やデザイン面では十分に配慮されていないことが多いのが現状です。良質なHTMLレポートは、Webという媒体の特性を理解し、それに即した発信方法を考慮しています。」

さらに次のように述べています。

「現在、オンラインレポートの優良事例は、長年HTMLレポートを発行してきた企業が中心です。そうした企業は、発行とコミュニケーションの両戦略においてHTMLレポートを重要視しています。」

IR業務においてHTML形式で報告書を発行することは、読みやすさやアクセシビリティの向上につながり、海外ステークホルダーにも情報が伝わりやすくなります。また、検索エンジンでの可視性も高まり、より多くの投資家に報告書を届けることができます。

「PDFとHTMLは具体的にどう違うのか?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。以下の表で、一般的な違いを確認してみましょう。

図の和訳

項目PDFHTML
アクセス解析が可能(アクセス数がアナリティクスで確認できる)いいえはい
共有しやすい(共有ボタンの設置が可能)いいえはい
CMSと連携し、簡単に更新可能いいえはい
アクセシビリティ対応(障がいのある方にも配慮)基本的に対応していない対応している
操作性・インタラクティブ性フォーム機能のみ高い
検索エンジンに表示されやすい(SEO対策)あまり対応していない対応している
書式の完全な制御(印刷に最適)可能不可
簡単にダウンロード・オフライン閲覧が可能はいいいえ

出典:Content Marketing Institute

ご覧のとおり、HTMLは「印刷時の正確な書式設定」と「オフライン閲覧用のダウンロード」を除くすべての項目で優れています。PDFの利点は、主に印刷を前提とした資料発行にあります。

HTML形式で発信する主な7つのメリットを詳しく見てみましょう

1. アクセシビリティの向上
HTMLは、障がいのあるユーザーにとっても利用しやすい形式です。スクリーンリーダーなどの支援技術がHTML構造を正確に読み取ることができ、誰にとっても情報へアクセスしやすくなります。

2. モバイル対応の閲覧体験
スマートフォンでPDFを読む際に、拡大・縮小を繰り返した経験はありませんか?HTMLならその必要はありません。レスポンシブデザインにより、画面サイズに応じて自動調整され、スムーズな閲覧が可能です。

3. SEO(検索エンジン最適化)への効果
HTMLコンテンツは検索エンジンによってインデックスされやすく、情報の発見性が高まります。一方、PDFはSEO対策がしづらく、検索結果に表示されにくい傾向があります。

4. インタラクティブ機能
HTMLでは、ハイパーリンク、動画、アニメーション、インタラクティブなデータビジュアルなどが利用可能です。閲覧者の関心を引きつけ、より動きのある表現が可能です。

5. 高速な表示・パフォーマンス
容量の大きいPDFが読み込まれるのを待つのはストレスです。HTMLは軽量で、特に大規模なドキュメントでも素早く表示されます。

6. リアルタイムでの更新
誤りの修正や最新情報の追加も、HTMLなら即座に対応可能です。ユーザー側で再ダウンロードする必要はありません。

7. アクセス解析とユーザー行動の把握
読者がどのセクションに興味を持っているのかを知りたい場合、HTMLなら行動データの取得が可能です。PDFでは得られないインサイトを得ることができます。

HTML形式への移行は、読みやすさを向上させるだけではありません。情報の即時更新が可能となり、再ダウンロードの手間がなくなります。これにより、修正ミスの削減、迅速な改訂対応、そしてタイトなスケジュール下での業務負担の軽減が期待できます。

なぜ今もPDFにこだわるのでしょうか?

配信方法がデジタル限定であれば、従来型のPDFに固執する必要はありません。印刷物として残したい場合はPDFが有効ですが、ユーザーフレンドリーで現代的なアプローチを目指すなら、HTML形式を選ぶべきです。

まだ全面的な移行に不安がある場合は、まずは主要な数値情報だけでもHTML化して、読者のエンゲージメント指標を比較してみてください。多くの企業は、HTMLとPDFを併用したハイブリッド型のレポートも採用しています。たとえば、2023年版のBayer統合報告書ではその具体例が確認できます。

まとめ

デジタル環境は急速に進化しています。古いフォーマットにとらわれていては、変化のスピードに対応できません。HTMLを活用することは、世界のベストプラクティスに則ることであり、「革新性」と「アクセシビリティ」を重視する企業姿勢を海外投資家に示すことにもつながります。

HTML形式で統合報告書を発信することは、単なる技術面のアップグレードではありません。企業のストーリーを、デジタルリテラシーの高いステークホルダーに向けて効果的に伝えるための重要な機会です。

HTMLレポートやハイブリッド型の具体例はこちらからご覧いただけます:


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