ビジネス英語とは何か

(English blog: What Makes Business English “Business”? | One World Link)

これまでの業務の中で、「ビジネス英語」という言葉を何度も耳にしてきたのではないでしょうか。金融機関や官公庁、多国籍企業など、さまざまなフォーマルな職場環境でビジネス英語は用いられています。

メール、提案書、報告書、プレゼンテーション、会議資料なども、ビジネス英語と聞いて思い浮かべる代表的な例です。では、何がビジネス英語を「ビジネス英語」たらしめているのでしょうか。

本記事では、主要な機関がどのようにビジネス英語を定義しているのかを確認し、一般的な英語との違いとなる特徴、さらにそれらが実務でどのように使われているのかを整理します。そのうえで、自社のステークホルダーとコミュニケーションを取る際に、なぜ相手を意識することが重要なのかを考えていきます。

定義

グローバルな求人プラットフォームであるIndeedは、キャリア開発に関する記事の中で、ビジネス英語を「スラングやイディオムを使わず、文法的な誤りもなく、より明確で直接的な表現を重視する文章の一種」と定義しています。(Indeed Career Guide

同記事ではさらに、ビジネス英語には語彙、文法、文構造においてより高い基準が求められる点にも触れています。「明確さと一貫性はビジネス英語の重要な要素であり、そのため、適切な語彙の使用やよく構成された文章が重視される」と説明されています。(Indeed Career Guide

教科書や学術資料、各種英語教育コンテンツを提供する多国籍教育企業であるPearsonも、ビジネス英語を同様の観点から捉えています。

「ビジネスライティングとは、プロフェッショナルな文脈において、明確かつ目的意識をもって言語を用いる文章を指す。メール、報告書、提案書、プレゼンテーションなど、さまざまな文書が含まれ、顧客、同僚、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションを目的とする」

A guide to mastering business English writing

これらの定義に共通して見られる要素は、明確さ、正確さ、構造、そして目的意識です。

ビジネス英語の考え方がどのように実務で使われているのか、具体例を見ていきます。以下は、一般的な決算資料からの一例です。

Ex. 1
Original:
Company Name Co., Ltd. (Securities code: 0000; the “Company”) hereby announces that XXX Co., Ltd. has resolved, at its meeting of the Board of Directors held on MM DD, YYYY, to acquire the shares of the Company through tender offer as described in the attachment.

こちらは、株式公開買付けに関する開示において、JPXのテンプレートをもとに英訳された例です。

ご覧のとおり、情報が一文に詰め込まれており、読みにくい構造になっています。

文の構造を整理し、語句を少し調整することで、より明確で読みやすい文章にすることができます。

Rewrite:
Company Name Co., Ltd. (Securities code: 0000; the “Company”) announced that the XXX Co., Ltd. Board of Directors approved a resolution to acquire shares of the Company via tender offer, as described in the attached materials. The meeting in question was held on MM DD, YYYY.

もう一つの例を見ていきます。

Ex. 2
Original:
Although the electronic component business saw lower average selling prices resulting from inventory adjustments by customers in the previous fiscal year, demand grew for high value-added power management ICs for semiconductor applications, mainly in Europe, and operating efficiency improved due to cost reduction efforts, resulting in higher sales.

こちらは、One World Linkで日常的に見られる、日本語から英語への直訳に近い構造の例です。文全体の結論である「売上が増加した」というポイントが、長い説明の後ろに埋もれている点に注目してください。

このような構成は日本語では一般的ですが、英語では冗長な文章となり、結果を伝える意図が不明確になります。

では、この情報をどのようにすればより分かりやすく伝えられるでしょうか。OWLのライターであれば、次のように書き換えます。

Revised:
Sales increased in the electronic component business. despite lower average selling prices in the previous fiscal year due to customer inventory adjustments. This result reflects strong demand for high-value-added power management ICs for semiconductors in Europe and stronger operating efficiency driven by cost reductions.

まず、結果を文の冒頭に置きます。

その上で、「なぜそうなったのか」「どのようにそうなったのか」を整理して補足します。元の文では、プラス要因とマイナス要因が一文に詰め込まれていましたが、修正後は情報を分けて、より直接的に伝えています。

また、「resulting from inventory adjustments by customers」は「due to customer inventory adjustments」に、「cost reduction efforts」は「cost reductions」に置き換えています。複雑な表現を、より簡潔で力のある語に変えることで、可読性が向上します。

Ex. 1およびEx. 2では長い文を扱いましたが、短い文であっても同様に改善は重要です。

次の例では、短い文の明確さをどのように高めるかを確認します。

Ex. 3
Original:
We are working to contribute to the promotion of sustainability through our business activities.

Revised:
We support sustainability through our business activities.

このような表現は、日本語から英語への翻訳で非常によく見られます。「working to contribute to」や「the promotion of」は、「貢献」「推進」といった日本語表現をそのまま反映したものです。

文法上は正しくても、構造が複雑で冗長になりやすく、読み手にとって分かりにくい文章になります。ビジネス英語では、明確で直接的な構造と強い動詞が好まれます。「We support」とすることで、同じ内容をより簡潔かつ自然に伝えることができます。

動詞の形にも注目が必要です。直訳では「〜しています」に引きずられ、-ingが使われることが多くあります。一方で、英語のビジネス文書では、現在形の方が簡潔で明確な表現となります。

Ex. 4
Original:
Our Group is promoting initiatives such as reducing environmental impact and contributing to local communities in order to realize a sustainable society.

Revised:
The Group supports a sustainable society by reducing environmental impact and contributing to local communities.

こちらは、日本語をAIで翻訳した際によく見られる例です。修正では、動詞を現在形に変更し、主旨を文の前半に配置しています。また、直訳的な不自然さも修正しています。

主なポイントは以下のとおりです。

  1. “Our Group”
    “Our Group”は不自然です。Groupは固有名詞の代替として使う場合のみ大文字にします。この文では一般名詞のため小文字が適切です。「当社グループ」は英語開示では「The Group」と表現します。
  2. “is promoting initiatives”
    “promoting”は「推進」の直訳ですが、英語のビジネス文書ではこの用法は一般的ではありません。意味に応じて、pursue、implement、carry outなどの動詞を使う方が自然です。
  3. “in order to”
    「in order to」は直訳で多用されますが、多くの場合「to」で十分に意味が伝わります。簡潔な表現の方が可読性が高くなります。

Ex. 5
Original:
Net sales increased significantly by 28.5% year on year as a result of the expansion of sales in overseas markets and the strengthening of product competitiveness.

Revised:
Net sales rose 28.5% year on year, driven by higher overseas sales and stronger product competitiveness.

こちらは、四半期決算でよく見られる表現です。

Ex. 3と同様、元の文は短いものの、それだけで明確とは限りません。語彙をより簡潔で力のあるものに置き換える余地があります。

日本語の文章は、動詞と名詞を組み合わせた表現に依存する傾向があり、AIや機械翻訳ではこれが英語において間接的で動詞に頼った冗長な表現として訳されることが多くあります。日本語から英語への翻訳でよく見られるのが、「〜の実施」「〜の強化」「〜の推進」といった表現です。これらは、AIや機械翻訳では「the implementation of」「the strengthening of」「the advancement of」といった名詞化表現として訳される傾向があります。

これらの名詞化表現は文章を重くし、可読性を下げます。「the expansion of sales in overseas markets」を「higher overseas sales」に置き換えることで、より簡潔で直接的な表現になります。

金融分野におけるビジネス英語

ビジネス英語はさまざまな業界で用いられますが、読み手に応じて書き方を調整することが重要です。

特に、投資家向け広報(IR)におけるコミュニケーションは、一般的な企業文書とは性質が異なります。主な読み手は金融市場で活動する関係者であり、機関投資家、アナリスト、海外株主などが限られた時間の中で開示資料を確認します。これらの読み手は、1日のうちに複数の企業、業界、法域を横断して比較を行うことも少なくありません。感情に訴える表現ではなく、明確で正確な業績情報、論理的な説明、一貫した用語の使用が求められます。

多くの米国企業は、開示文書の明確性を高めるため、「Plain English」を用いて財務情報を開示しています。その際、米国証券取引委員会(SEC)が公表した『Plain English Handbook 2011』を参照しています。SECは、投資家が重要な情報を不必要な複雑さなしに理解できるよう、短い文章、能動態、具体的な表現、論理的な構成の使用を推奨しています。

継続的な実践が上達につながる

ビジネス英語のライティングは、習得に時間と継続的な練習を要する重要なスキルです。

具体例の確認、文構造の分析、弱い動詞や名詞化表現の特定に取り組むことで、着実にスキルを高めることができます。その際、常に次の問いを意識することが重要です。想定する読み手に対して、結果を明確に伝えられているか。

さらなる実践として、One World LinkのFacebookやLinkedInもご活用ください。企業広報や財務コミュニケーションに携わる方々に向けて、ビジネス英語ライティングのポイントや具体例、短いクイズなどを定期的に発信しています。

AIおよび機械翻訳を使用する際の留意点

AI翻訳システムは、大量の対訳データを学習しているため、日本語の原文構造をそのまま反映する傾向があります。その結果、英語として自然な構造に再構成されるのではなく、日本語の書き方を引きずった英文になりがちです。長い文はそのまま長く、結論より前に背景説明が置かれ、主旨が文末に配置されるといった特徴が見られます。

日本語の報告書をAIで英訳する場合、生成された英文が自然な英語のライティングに沿っているかを必ず確認する必要があります。本記事で取り上げた手法を活用し、文を短くする、要点を前に出す、説明を簡潔にするなどの調整を行うことで、海外の読み手にも理解しやすい文章にすることが重要です。


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Mia Omatsuzawa 大松澤実絵

Chief Executive Officer (CEO)One World Link Inc.
英語のコミュニケーションにお悩みの方、私にご相談ください。真のコミュニケーションを、心と心のコミュニケーションの実現をご提供いたします。 担当記事:主に英語のコミュニケーション、ライティングについての記事を担当。また、価値あるグローバルな情報をいち早く日本語で皆様にお届けいたします。      mia@oneworldlink.jp  Facebook(Mia Omatsuzawa) 

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