(English blog: Writing For a Global Audience | One World Link)
英語で決算資料や開示資料、その他の投資家向けコミュニケーション資料を作成する際、グローバルな読者を意識したことはあるでしょうか。異なる国や文化的背景を持つステークホルダーが、その内容や論理展開を明確に理解できるかを意識したことはあるでしょうか。
皆さまの読者には、英語力、文化的背景、コミュニケーションスタイルが異なる人々が含まれている可能性があります。グローバルな読者を意識した書き方を理解することで、投資家向けコミュニケーションを、より明確で分かりやすく、市場を越えて伝わりやすいものにすることができます。
企業がグローバルな読者とより効果的にコミュニケーションを取るための考え方の一つが、Plain Englishです。
今回のブログでは、Plain Englishという考え方について、より詳しくご紹介します。また、このライティング手法がもともとどのような背景から生まれたのかを解説するとともに、実際のリライト例を通じて、表現を少し工夫するだけでも、グローバルな読者にとってより分かりやすいコミュニケーションにつながることをご紹介します。
Plain Englishの考え方
One World Linkでは、翻訳においてPlain Englishを重視しており、海外投資家やステークホルダーに向けた情報発信でも、同じ考え方を取り入れることを推奨しています。では、Plain Englishとはどのような考え方なのでしょうか。
以前、効果的なIRコミュニケーションが競争優位性につながる理由についてご紹介したブログでは、Plain Englishについて、「明確さ」と「分かりやすさ」を重視したライティング手法として簡単にご紹介しました。この考え方は、もともと政府文書や法律文書を一般の人々にとって理解しやすくするために生まれたものです。
この考え方は、グローバルな読者に向けて情報を発信する際に特に重要になります。読者によって英語力、文化的背景、コミュニケーションスタイルは大きく異なるため、「明確さ」と「分かりやすさ」は、効果的なグローバルコミュニケーションにおいて重要な要素となります。
また、Plain Englishの考え方には、以前のBusiness Englishに関するブログでご紹介した内容と重なる部分も多くあります。
- 短く直接的な文章を書く
- シンプルな表現を使い、イディオムやスラングを避ける
- 正しい文法や句読点を意識する
- メッセージを明確に伝える
- 適切な語彙を使う
- 業界特有の表現や社内用語の使い方に注意する
以下では、これらのBusiness Englishライティングのポイントをもとに、Plain Englishを意識したリライト例をご紹介します。少し表現を工夫するだけでも、企業コミュニケーションは、グローバルな読者にとってより分かりやすく、伝わりやすいものになります。
短く、直接的な文章で書く
日本語の文は、複数の節や背景説明を含むことが多く、そのまま直訳すると長く読みにくい英文になりがちです。
例
English: In order to further strengthen our management foundation and realize sustainable growth over the medium to long term, we will continue to implement initiatives aimed at improving operational efficiency throughout the Group.
Rewrite: We will continue to improve operational efficiency across the Group to strengthen our management foundation and support medium- to long-term growth.
Why rewrite?
・「In order to」や「further」は語数を増やすだけで、意味の追加にはつながらない
・元の文は、主旨に至るまでに長い前置きと複数の説明が重なっている
・「implement initiatives aimed at improving」は表現が弱く、「improve」とすることでより直接的かつ簡潔になる
シンプルな表現を使い、イディオムやスラングを避ける
イディオムは文化的な背景知識に依存するため、英語を第二言語とする読み手にはすぐに意味が伝わらない場合があります。
例
English: Our new strategy is a game-changer for the company.
Rewrite: Our new strategy will completely transform our [XYZ].
Why rewrite?
・「game changer」はイディオムであり、一部の海外投資家には理解されにくい可能性がある
・同じインパクトを維持しつつ、よりシンプルな表現にすることで、すべての読み手にとって理解しやすくなる
文法と句読点を正しく使う
基本的な点ですが、日本語の構造に合わせて英語のルールを崩すのではなく、文法と句読点の正確さを優先する必要があります。
例えば、英語における引用符の使用は限定的であり、日本語の「」をそのまま置き換えるものではありません。
例
English: The company implements initiatives under the concept of “value creation.”
Rewrite: The company implements initiatives focused on value creation.
Why rewrite?
英語では、引用符は直接引用、タイトル、特殊な用語、皮肉表現などに限定して使用します。単語やフレーズを強調する目的で引用符を使うことはありません。
明確さを確保する
特に日本語の文章では、主語の省略や受動的な表現が多く見られます。これらは日本語の読み手には問題がない場合もありますが、英語では可読性や明確さを損なう要因となります。
例
English: The results of deliberations are reported to the Executive Committee and incorporated into the company strategy.
Rewrite: The Board of Directors reports deliberation results to the Executive Committee, which translates results into the company strategy.
Why rewrite?
元の文は受動態を使用しており、誰が何を行っているのかが不明確です。ガバナンスに関する報告では、明確さが極めて重要です。主語を明示し、文をシンプルに保つことで、内容を正確に伝えることができます。
強い語彙を使う
日本語の文章は、動詞と名詞を組み合わせた表現に依存する傾向がありますが、AIや機械翻訳ではこれが英語において間接的で冗長な表現として訳されることが多くあります。
特に多く見られるのが「する」動詞の表現で、英語では conduct、implement、develop などの弱い動詞として表現されがちです。例えば、「conduct a share repurchase」や「implement a merger」といった表現は、多くの場合「repurchase shares」や「merge」とする方が、より簡潔で自然です。
もう一つの代表的なパターンが名詞化表現です。名詞化とは、動詞を名詞として表現することを指しますが、これにより文章が長くなり、分かりにくくなる傾向があります。例えば、「contribute to the enhancement of corporate value」は「(help) enhance corporate value」に、「conduct an evaluation of risks」は「evaluate risks」とすることで、より明確で簡潔な表現になります。
また、realize、promote、strengthenといった動詞の直訳も、英語の一般的な用法とは異なり、曖昧または不自然に響く場合があります。
Plain Englishの考え方では、単一で強い動詞を用いることで、文章を明確かつ簡潔に保つことが重視されます。
例
English: The company will contribute to the realization of a sustainable society.
Rewrite: The company will help build a sustainable society.
Why rewrite?
・「contribute to」は動作が不明確な弱い動詞である
・「realization of」には複数の問題がある
- 名詞化表現であり、可能な限り避けるべき
- この文脈では語の選択として不自然である
OWLでは、副詞や弱い動詞の代わりに、より強い動詞を使うことも推奨しています。日本語のビジネス文書では副詞が多用されますが、これらは削除し、より強い動詞に置き換えることが可能です。
例
English: We will further strengthen efforts to expand overseas operations.
Rewrite: We will strengthen efforts to expand overseas operations.
Why rewrite?
expand、strengthen、improve、increase、enhance、developといった動詞には、すでに進展や変化のニュアンスが含まれています。「further」を加えても意味の重複となる場合が多く、情報としての価値はほとんどありません。
まとめ
海外IRでは、「英語で開示すること」だけではなく、「世界の読み手に伝わること」が重要です。
シンプルで分かりやすい英語は、企業価値を正しく届けるための大きな武器になります。
One World Linkでは、海外投資家やグローバルステークホルダーに伝わる英文開示・IRコミュニケーションをサポートしています。
世界に向けて、自社のストーリーをより効果的に発信したい方は、ぜひご相談ください。
Mia Omatsuzawa 大松澤実絵
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