先日弊社オフィスでTOEICの神様、松岡浩史先生のセミナーを開催いたしました。
松岡氏はTOIECをロジカルに分析し、ロジカルに教えることを徹底されています。英語圏の国の文化や歴史の違いなども深く理解されているため、それ故に翻訳がいかに難しく、また奥深いものなのか、ということについても、セミナー後の対談で伺うことができました。
TOEICは英語を話せるようになる、第一歩であり、その先に真のコミュニケーションが存在するというお話で盛り上がった中、松岡先生のお話で一番印象に残ったお話のご紹介です。
明治の文学者で二葉亭四迷という人がいます。
明治時代の文学の新潮に、文語に口語を取り入れ始めた方です。
彼は、当時父親に文学道を反対され、「文学者など浮ついた仕事を選ぶとは何事だ!お前なんかくたばってしまえ!」と叱責を受け、「それでは父上のおっしゃるとおり、くたばってしまえを名乗りましょう」と「くたばってしまえ」を「二葉亭四迷」にしてペンネームとしたくらいですから相当なユニークさが伺われます。
彼はまたロシア文学研究者であり、ツルゲーネフの本を世に広めた翻訳者でもあります。
その中で彼が翻訳に非常に悩んだ言葉がありました。
それはI Love You…の翻訳について。
I love you を直訳すると、「あなたを愛しています」ですよね。
しかし、「あなたを愛しています」では本当にそのI love youの意味にはならないと、彼は非常にその翻訳に悩んだそうです。そして、彼はこのように訳したそうです。
「(あなたの為なら)死んでもいい」
時代は違えど、身を粉にして働く日本人、もてなしの心溢れる日本人にとっては、「愛してます」より、「死んでもいい」のほうが重みがあり、納得感があるということかもしれません。
また、明治時代に「我、汝を愛す」と訳した青年に対し、当時英語教師をしていた夏目漱石が「それはおかしい」と言ったそうです。「月が綺麗ですね、と言えばまともな女性になら伝わるはずだ」といったそうです。
うーん、私は夏目漱石の言う「まともな女性」でありたいですが、いろいろな捉え方があると思いますが、とにかく深いなぁと感じました。
当時、「愛する」という表現はなく、「慕う」とか「焦がれる」という表現が主流だったようです。
つまり「love」にあたる日本語は、そうそう簡単に見つかるものではなかったということです。
このように、翻訳は言葉の持つバックグラウンドと切っても切れない繋がりがあるものです。
私自身、19歳で渡米し、その後、10年以上、グローバルコミュニケーションを必要とする仕事に携わらせていただいておりますが、完璧な翻訳を追及すればするほど、文化、恋人、友人、家族など、言葉の裏側にある感情、それぞれの感性一つ一つで、翻訳の方法は変わるのだと実感しています。
自動翻訳や翻訳ソフトの進化などデジタル化が進み、「表現」や「コミュニケーション」が、どんどん簡素化しているような気がしてなりません。
映画を観ていても、いまこの感動がこの翻訳で本当に英語のわからない方に対してはたしてちゃんと伝わっているのだろうか、と思うことも良くあります。
言葉の発信側と、それを受け取る側との、心と心の通じ合いが、言語の壁で本当の意味で通じ合えていないことが多いのです。心と心が通じ合ったとき、まさにそれが「真のコミュニケーション」なのだと思います。
真に何かを理解する、また、本当の意味で人とコミュニケーションをとっていくということは、「感性」が、非常に重要な意味をもつようになると思うのです。
私は、弊社の仕事を共にする、仲間(翻訳者)に対し、この「感性」をとことん追求し、皆様に発信することを徹底していきます。
We tell your story to the world!!
Mia Omatsuzawa 大松澤実絵
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