生成AI翻訳の品質は今どうなっているか?

多くの企業でDX推進の一環として、コスト削減や業務効率化を目的に生成AIを導入されているかと思います。DeepL、ChatGPT、Geminiなどを使って、日本語から英語への翻訳に生成AIを活用されている企業も多いことと思います。

では、2025年夏時点における生成AIによる日英翻訳の現状はどうなっているのでしょうか?

我々OWLの翻訳チームは、生成AIや機械翻訳の活用にかなり精通しております。最近、翻訳品質において、見逃せない特徴や傾向がいくつか見られるようになってきました。本ブログでは、実際に私たちが遭遇した生成AI・機械翻訳による翻訳の不自然な例や問題点をいくつかご紹介していきたいと思います。すべての例は、実際のスクリーンショットに基づいており、特にIRやコーポレートコミュニケーションで生成AIを使用する際に注意すべきポイントを明らかにします。

ポイント1:シンプルな部分こそ見逃さない

図1〜図3は、「ESG」という略語がレイアウトの都合で3行に分かれていたため、機械翻訳ツールがそれぞれを「E」「sadist」「g」と訳した例です。「S」が「sadist(サディスト)」を意味するとは、当然どの翻訳者も思わないでしょうが、それでもこの結果は見過ごせません。 大文字・小文字の不統一や、単なるアルファベットが突然単語として訳されてしまう現象は、ちょっとしたフォーマットの違いで生成AIの出力が大きく崩れることを示しています。短い語句やシンプルな内容ほど安心しがちですが、AIが正しく処理できるとは限りません。こうした箇所こそ、一貫性を持って丁寧にチェックすることが重要です。

図4〜図6は、機械翻訳でよく見られる別の問題、「辞書的な出力」の例です。
これらの翻訳は、技術的に「誤訳」ではないものの、過剰な説明、かっこ書き、冗長な定義が含まれており、ビジネス文書としては不適切な表現になっています。さらに、今回のケースでは、そもそも翻訳された意味が文脈と合っていませんでした。正しい訳語は以下の通りです。

  • 支える → Support
  • なし → N/a
  • ときめっく → TTOKIMEKKU

補足:元の日本語では「ときめっく」は施設名として使用されていた固有名詞でした。
生成AIは、固有名詞、定訳、業界特有の用語を正しく処理するのが苦手な傾向があります。特に公式文書においては、こうした用語がどのように扱われているかを必ず確認することが重要です。

図7では、「URL」が「uniform resource locator」と訳されていますが、これは英語ではほとんど使われない表記です。
「URL」という表現が一般的であり、わざわざ正式名称を綴る必要はありません。

図8については、残念ながら説明の必要すらありません。「Polisy」は、「policy」の完全な綴りミスであります。

ポイント2:数値は必ず二重・三重に確認する

生成AIが数値を完全に誤ることもあります。さらなる事例については、こちらのブログをご覧ください。(日本語:こちら 英語:こちら)

図9および図10では、数値そのものは正しいにもかかわらず、翻訳ツールが同じ数値を4〜8回繰り返して出力している例が確認できます。数値が正確でも、このような繰り返しは誤りであり、文書全体の信頼性に影響を与える可能性があります。数値の出力は、必ず細かく確認するようにしましょう

図11および図12では、さらに重大な誤訳が見られます。「¥」が「$20」と訳されていたり、「万人」が「million people(100万人)」と誤って訳出されています。

これらの誤りは、単体で見ればすぐに気づくレベルですが、長文の財務資料の中に埋もれていると見落とされる可能性があります。特に、英語部分だけを文法や表現の自然さの観点からチェックしている場合は、数値や単位の誤りに気づきにくくなります。

図13は、単純な日付に対する不可解な翻訳の例です。
「20239Month」という表記からは、翻訳ツールが日本語の日付を構成要素ごとに個別に処理し、それをスペースなしで結合してしまったことがうかがえます。

この翻訳は、「month」の使い方も不自然であるうえ、英語として必要なスペースが完全に欠落しており、通常の英文書式とは大きく異なる非標準的な出力となっています。

ポイント3:明らかに不適切な単語の誤訳に注意する

図14および図15では、「お得(otoku)」が「オタク(otaku)」に、そして「共食」が「cannibalism(カニバリズム)」に誤訳されています。
この2つの例については、あえて説明するまでもなく、完全に誤っており、場合によっては非常に不適切な表現となり得ます。こうした誤訳が含まれてしまうと、文書全体の信頼性に関わる問題となる可能性があります。

これらの誤訳は、生成AIが不正確、または確認不足の公開翻訳データを学習してしまった結果である可能性があります。質の低い出力がそのまま再利用され、AIの訓練データに取り込まれていくことで、こうした誤りが以前よりも頻繁に見られるようになってきています。

図16では、多くのIR資料に共通して登場する用語「中期経営計画」が、「Midterm Corporate Strategy」と訳されています。
「中期経営計画」の標準的な英訳は 「medium-term management plan」 です。

まず第一に、「midterm」は複合形容詞として使う場合、ハイフンを入れて“mid-term”と表記すべきです。

そして、より重要なのは、この“Midterm Corporate Strategy”という表現が、特定企業が独自に使用している公式名称である可能性が高いという点です。
つまり、翻訳ツールがこの訳語を過去の公開情報から“学習”した可能性があるということになります。

OWLがこれまでに生成AIや機械翻訳を使用してきた中で、「中期経営計画」がデフォルトで“Midterm Corporate Strategy”と訳されたケースはこれまで一度もありません。
これは、生成AIが般的な定訳ではなく、企業固有の表現や公開資料上の訳語を取り込んで出力に反映させていることを示す例かもしれません。

このように、非標準の訳語が公開されたまま訂正されない場合、それがAIの学習データに取り込まれ、“正しい訳”として出力されてしまう可能性があります。
これはいわゆる「Garbage in, garbage out(質の低い入力からは質の低い出力しか得られない)」という典型的な問題であり、AIが不適切な入力を学習すればするほど、今後さらに誤訳が増えていくリスクがあることを意味しています。

→「中期」を“mid-term”と訳すのが不適切な理由は、当社ブログでご紹介しています。(こちら)

ポイント4:スペースの抜け漏れに注意する

図13では、日付の中でスペースが抜け落ちる例をご紹介しましたが、図17および図18では、文全体におけるスペースの抜けが見られます。
図17の例では、「price」と「and」の間にスペースがなく、図18では、数値(86)と単位(billion)の間のスペースが欠落しています。

一見すると小さなミスに見えるかもしれませんが、読みやすさに影響を与えるだけでなく、正式な文書としての印象を損ねる可能性があります。

また補足として、使用するスタイルガイドや文脈によって異なる場合はありますが、英語では10未満の数字は本文中ではスペルアウト(単語で表記)されるのが一般的です。
さらに、「3-year total」のようなハイフンでつながれた形容詞句は、通常「three-year」のようにスペルアウトして表記するのが適切とされています。

なぜこうした問題が起きるのか?

こうした翻訳品質のばらつきには、2つの要因があると私たちは考えています。
第一に、生成AIが過去に自ら出力した質の低い翻訳結果を、ユーザーが確認せずにそのまま受け入れたことにより、それを「正しい」と学習してしまっている可能性があります。
第二に、生成AIが公開されている翻訳例、いわゆる「野良翻訳」から学習すればするほど、質の低い翻訳(いわゆる“ガベージ”)が、正しい用例として取り込まれてしまうリスクが高まると考えられます。

このような傾向は、データ品質の専門家が警鐘を鳴らしている現象とも一致しています。Melissa社のスペシャルプロジェクト担当シニアディレクター、Robert Stanley氏は、2025年6月2日付のSD Timesの記事の中で次のように述べています。

「AIモデルを質の低いデータで訓練すれば、当然のように悪い結果を得ることになります。」


また、Stanley氏は、「データが正確で、完全で、補足情報がきちんと付加されていなければ、AIの出力結果は信頼できないものになる」とも強調しています。

つまり、「Garbage in, garbage out(質の低い入力からは質の低い出力しか得られない)」という原則は、いまだに強く当てはまるのです。

さらにStanley氏は、LLM(大規模言語モデル)はユーザーを満足させようとする性質があるため、「見た目には正しそうに見えるが、実際には誤りである回答を返すことがある」と警告しています。

[出典:SD Times, “Garbage in, garbage out: The importance of data quality when training AI models”(2025年6月2日)https://sdtimes.com/data/garbage-in-garbage-out-the-importance-of-data-quality-when-training-ai-models]

生成AIや機械翻訳ツールの翻訳品質に関する問題の背景には、学習データの質と出所が関係している可能性もあります。
Nature誌に掲載され、Financial Timesが報じた最近の研究では、過去のAIが生成したコンテンツ(=合成データ)を学習データとして使用した場合、AIモデルが「モデル崩壊(model collapse)」を起こすリスクがあると指摘されています。

こうしたモデルは、訓練を重ねるごとに自分自身の過去の誤りを強化してしまい、ゆがんだ出力や意味不明な出力につながる可能性があります。
翻訳の分野では、これにより不自然、誤訳、あるいは直訳的すぎる表現があたかも標準的な英語のように学習・出力されてしまうことが懸念されます。

[出典:Financial Times “Model collapse: how AI models trained on synthetic data can quickly degrade.”(2024年7月25日) ※Nature誌に掲載された研究に基づく報道 https://www.ft.com/content/ae507468-7f5b-440b-8512-aea81c6bf4a5]

まとめ

翻訳ツールは年々進化していますが、信頼性の面では依然として課題が多く残っています。特に、公開された不正確または一貫性に欠ける翻訳データから“学習”している場合には、そのリスクがさらに高まります。
こうした自己強化的な誤りが蓄積されることで、非標準的、または誤解を招くような訳語が“正しい表現”として定着してしまう恐れがあります。

一見些細な不一致であっても、数値の誤訳や不適切な単語の使用が含まれていれば、それだけで翻訳全体の品質や信頼性が損なわれる可能性があります。
このような時代だからこそ、翻訳結果のリスクを見逃さず、自然で明確かつプロフェッショナルな英語で伝えるための対策がこれまで以上に重要です。

翻訳の品質に不安がある場合や、第三者によるチェックが必要な場合は、OWLのネイティブ翻訳チームがサポートいたします。貴社の英語資料が正確で、投資家に伝わる内容になっているかどうか、ぜひお気軽にご相談ください。

あなたの英訳文と段落は長すぎませんか?

日本語のビジネス文書を英語に翻訳する際、最もよくある課題の一つが、文や段落の長さの調整です。日本語では、一つの文の中に複数の情報や条件、結論を含めることが一般的であり、文構造も複雑になりがちです。こうしたスタイルは日本語では自然ですが、そのまま英語に直訳してしまうと、読みづらく冗長な印象を与えてしまうことがあります。

特に、投資家向け広報(IR)において効果的な英語を用いるには、簡潔さが重要です。各国の政府が発行する可読性やアクセシビリティに関するガイドラインでも、文の長さやプレーン・イングリッシュ(わかりやすい英語)の使用が推奨されています。短く整理された文や段落は、読み手の関心を引き、理解を助けます。日本語から英語への翻訳では、文と段落の構成を見直すことが、グローバルなステークホルダーにメッセージを正しく届けるうえで不可欠です。

とはいえ、文や段落が短すぎると、内容が浅く感じられる可能性もあります。では、どのようにバランスを取ればよいのでしょうか。まずは、英文ビジネス文書における基本を押さえることから始めましょう。

OWLでは、英語への翻訳時には、1段落あたり34文、1文あたり平均20を目安とした構成を推奨しています。これは、投資家向けおよび企業向けの英文コミュニケーションにおいて、プレーン・イングリッシュ(わかりやすい英語)を採用することに基づいたものです。プレーン・イングリッシュとは、不必要な複雑さを避けた、明確で簡潔な表現のことを指します。読み手が内容を一度で理解できることを目的としており、特に開示資料や報告書など、海外のステークホルダー向けの資料では重要な書き方です。

このような基準は、米国証券取引委員会(SEC)によっても推奨されています。SECは、投資家保護と企業情報開示の透明性確保を目的とする機関であり、難解な金融文書に対する懸念を受けて、1998年に「Plain English Handbook(プレーン・イングリッシュ・ハンドブック)」を発行しました。このハンドブックでは、「可能な限り短い文を使うこと」が推奨されており、簡潔な文章は理解を助け、特に法務・財務文書における誤解のリスクを軽減するとしています。

出典:米国証券取引委員会(SEC『A Plain English Handbook: How to Create Clear SEC Disclosure Documents』(1998年)https://www.sec.gov/pdf/handbook.pdf

文の長さに変化をつけることも忘れずに。
短い文は重要なポイントを端的に伝え、長めの文は背景やニュアンスを補足する役割を果たします。これらをバランスよく組み合わせることで、読みやすくリズムのある文章になります。文章の流れに変化が生まれ、読み手の関心を引きつけると同時に、理解の助けにもなります。

例)

日本語 (一文)

長年にわたり蓄積してきた高度な技術と専門知識を活用するとともに、気候変動や資源不足、人口動態の変化といった社会課題に取り組みながら、イノベーションの促進、グローバルなパートナーシップの拡大、そして急速に変化する市場環境においてレジリエンスを確保するための堅実なガバナンス体制の維持を優先する長期経営ビジョンに沿った取り組みを実施することで、持続可能な成長を達成し、企業価値を向上させることを目指します。

英訳 (一文)

By leveraging our strengths in advanced technology and expertise accumulated over decades, while simultaneously addressing societal challenges such as climate change, resource scarcity, and demographic shifts, we aim to achieve sustainable growth and enhance corporate value by implementing initiatives aligned with our long-term management vision, which prioritizes fostering innovation, expanding global partnerships, and maintaining robust governance structures to ensure resilience in a rapidly evolving market environment. 

調整した英訳 (複数の文)

We leverage decades of expertise and advanced technology while addressing societal challenges including climate change, resource scarcity, and demographic shifts. Guided by our long-term management vision, we prioritize fostering innovation, expanding global partnerships, and maintaining robust governance. These initiatives aim to ensure resilience in a rapidly evolving market while achieving sustainable growth and enhancing corporate value.

Flesch-Kincaid(フレッシュ・キンケイド)可読性スコアとは?なぜ重要なのか?

Flesch-Kincaid Reading Ease スコアは、文章の読みやすさを評価するための強力なツールです。このスコアは、文の長さと語の長さを分析し、どれだけ簡単に内容が理解されるかを判断します。スコアが高いほど、読みやすさが高いことを意味します。

Microsoft WordFlesch-Kincaidスコアを確認する方法

  1. Wordファイルを開きます。
  2. ファイル」タブをクリックし、「オプション」を選択します。
  3. 言語」の項目で、英語の言語パックがインストールされており、校正ツールが有効になっていることを確認します。
  4. 文章校正」タブに移動し、「文書の読みやすさを評価する」にチェックを入れます。
  5. 校閲」タブから「スペルチェック」を実行すると、Flesch-Kincaidスコアが表示されます。

※ご使用のMicrosoft Wordのバージョンによっては、スペルチェックを完了した後に「インサイト(Insights)」を選択して、読みやすさスコアを確認する必要がある場合があります。

Flesch-Kincaidスコアが60〜70の文章は、会話調で読みやすいとされています。しかし、OWLでは、IRコミュニケーションにふさわしい専門性と読みやすさのバランスを保つために、日本語から英語への翻訳においては、Flesch-Kincaidスコア35〜40を推奨しています。このスコア帯であれば、文体に一定の洗練さを保ちながら、読み手にとって親しみやすい英語に仕上げることができます。

なお、英語で一から書く場合には、Flesch-Kincaidスコア50〜60が適しているとされています。

要点まとめ

  • Flesch-Kincaid可読性スコア:IR翻訳におけるプロフェッショナルな読みやすさを確保するには、3540を推奨
  • 平均文長1文あたり20を目安に、読みやすさと情報量のバランスを確保
  • 段落の長さ1段落につき34で、読み手にとって負担の少ない構成に

こうしたガイドラインを取り入れることで、英語開示文書が本来のニュアンスを損なうことなく、海外の投資家にも伝わる内容になります。

実践ガイド:まずはここから始めましょう

IRコミュニケーションの質を高める準備はできていますか?以下のステップから始めてみましょう。

  1. 自分の文章を分析する
     Microsoft WordのFlesch-Kincaidツールを使って、読みやすさスコアを確認しましょう。
  2. バランスを意識して編集する
     長すぎる文は短く分け、逆に短すぎる文はつなげて、読みやすく自然な流れに整えます。
  3. フィードバックを受ける
     英語に詳しい同僚に見てもらう、または英文校正ツールを活用して客観的なチェックを行いましょう。
  4. 改善の記録を取る
     可読性スコアを定期的に記録し、自身の改善状況を数値で把握しましょう。

一緒に、あなたのストーリーを世界へ

OWLは、IR担当チームの皆さまがタイムリーで伝わる英語開示を作成できるようサポートしています。私たちの専門知識により、貴社のストーリーを、正確かつ明確に世界の投資家へ届けることが可能になります。
IRコミュニケーションを次のレベルへと引き上げたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
私たちと一緒に、あなたのストーリーを世界へ伝えましょう。

貴社の英語の報告書は「読み込む人」と「流し読みする人」両方に伝わる内容になっていますか?

英語圏の読者は、一般的に「詳細に読み込む人」と「流し読みする人」の2つのタイプに分けられます。読み込むタイプの読者は、文書全体を丁寧に読み進め、背景や文脈を重視します。一方で、流し読みタイプの読者は、見出しや小見出し、キャプションに目を通しながら、主要なポイントをすばやく把握しようとします。効果的な英文のビジネス文書を作成するためには、どちらの読者にも伝わるように工夫することが重要です。情報がすばやく得られるようにしつつ、内容の深さや説得力を損なわない構成が求められます。

あなたは、読み込むタイプですか?それとも流し読みするタイプですか?

それより重要なのは、自分が作成する文書がこの両方の読者を意識しているかどうかです。

変化の激しい今日の金融市場において、ステークホルダーは限られた時間の中で意思決定を行っています。株主やアナリストは、重要な数値やトレンド、業績のポイントが一目で把握できる報告書を求めています。投資家や機関投資家も、企業の戦略に対する信頼感を左右する情報を、財務資料の中から素早く見つけ出そうとしています。

明確で的確な見出しやキャプションは、読み込む読者にも、流し読みする読者にも効果的です。文書全体の理解を促進し、情報の伝わり方と説得力を大きく向上させます。

なぜ「伝わる」見出しとキャプションが重要なのか

これまでに、決算短信や投資家向けプレゼン資料、統合報告書を流し読みしながら、重要な財務データや経営戦略の要点を探した経験はありませんか?あなたの読み手も、まさに同じように情報を探しています。

次のような見出しを見たとき、どれだけの情報が伝わるでしょうか?

  • グループの取り組み
  • 2024年度の業績
  • 当社のビジョン

おそらく、ほとんど何も伝わらないのではないでしょうか。
こうした見出しでは、読み手の期待に応えることができず、興味を失わせてしまいます。

では、次のような見出しではどうでしょうか?

  • グループの重点施策
  • 2024年の収益成長
  • 持続可能な成長に向けた当社のビジョン

若干の情報が加わっていますが、それでもまだ抽象的です。
次の例をご覧ください。

  • カーボン排出削減に向けたグループの重点施策
  • 2024年の収益が20%成長
  • 再生可能エネルギー投資による持続的成長の実現

これらの見出しは、読み手の関心を引き、どのような内容が続くのかを明確に伝えています。

この後、さらに分かりやすい例をいくつか紹介します。

あいまいな見出しの例
 - 主要業績
 - 未来への取り組み
 - サステナビリティ活動

伝わる見出しの例
 - 2024年第4四半期の主要業績:純利益5億ドル、前年比12%増を記録
 - 2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
 - カーボン排出削減を目的とした太陽光発電設備の導入

見出しに具体的な情報を盛り込むだけで、読者の理解度と関心度が大きく変わります。

これはキャプションにも同じことが言えます。
キャプションは、図表やビジュアルの補足情報としてだけでなく、重要なメッセージを強調し、文脈を与える「速読ポイント」として機能します。


よく練られたキャプションは、投資家やアナリストが重要なポイントをすぐに把握する助けとなり、報告書やプレゼン資料全体の効果を高めます。

以下のキャプション例を見比べてみてください。どちらがより伝わると感じますか?

読みやすさと読者の関心を高めるためには、情報量のある見出しやキャプションを取り入れることが欠かせません。以下に、効果的な見出しとキャプションを作成するための基本的なポイントをご紹介します。

1. 内容を具体的に伝える
見出しは、そのセクションで何が述べられているかを読者に伝える役割を果たします。該当箇所の具体的な内容や数値などを含めることで、読者は必要な情報を素早く見つけやすくなります。
キャプションも同様に、読者の注意を引きつけ、資料への理解度を高める効果があります(出典:savvy-writer.com)。また、検索エンジンにも有効で、SEOとユーザビリティの両面でメリットがあります(出典:Seowind)。

2. キーワードを適切に使用する
見出しにキーワードを自然に組み込むことで、検索エンジンによるインデックスや順位付けに有利になります(savvy-writer.com)。SEO対策の観点からも、戦略的なキーワードの活用は不可欠です(Seowind)。

3. 明確かつ簡潔に表現する
専門用語や複雑な表現は避けましょう(出典:scribbr)。読み手が内容を瞬時に理解できるよう、明快で簡潔な言葉を使うことが大切です。

4. 目的や読者に合わせて構成する
報告書や提案資料など、文書の目的や読み手の立場に応じて、見出しの構成や表現を調整しましょう。たとえば、審査基準に沿った提案書であれば、それに対応した見出しを用いることで、読み手の理解と評価を助けます。

見出しやキャプションを確定する前に、次の点を確認してみてください:

  • この見出し(キャプション)は、内容を明確に伝えているか?
  • 流し読みする読者でも、要点を把握できるか?
  • この見出し(キャプション)は、全体のメッセージに価値を加えているか?

クイズに挑戦!

次のうち、最も情報量のある見出しはどれでしょう?理由も考えてみてください。

A)サステナビリティへの取り組み
B)FY2025 年度のカーボン排出量を33%削減する目標
C)サステナビリティへの取り組みの詳細
D)FY2025 年度の排出削減目標

次に、もっとも情報が伝わるキャプションはどれでしょう?その理由も考えてみてください。

A)拡張された工場の空撮
B)大阪の新製造拠点での開所初日の様子
C)4月の施設案内
D)エンジニアの会議風景

両方の設問で「B」を選んだ方、正解です!

「FY2025 年度のカーボン排出量を33%削減する目標」は、具体的な数値と年度を明記しており、内容が一目で伝わる見出しになっています。

「大阪の新製造拠点での開所初日の様子」は、写真の内容を明確かつ魅力的に伝えるキャプションであり、読み手に文脈を提供します。

最後に

明確で情報量のある見出しやキャプションは、単なるデザインの要素ではありません。効果的なコミュニケーションを実現するための基本要素です。データを提示する時も、ビジョンを伝える時も、報告書を作成する時も、見出しがストーリーを導き、読み手を引き込む力となります。

今知っておくべきESGキープレーヤー10選

ESG(環境・社会・ガバナンス)をめぐる状況は急速に変化しており、日本企業もこの流れに乗り遅れるわけにはいきません。グローバル投資家による透明性の要求が高まる中、2025年4月から施行される「英文開示の同時提出義務化」も控え、主要なESGフレームワークを正しく理解することは、信頼性と競争力を維持する上で不可欠な要素となっています。

なぜ重要なのか

IR担当者には、自社の財務・非財務情報の開示が国際基準に適合していることを担保する責任があります。海外投資家は、ISSB、TCFD、GRIといった主要フレームワークに準拠した、明確で質の高いESG開示を期待しています。

開示内容に一貫性がなかったり、期待を下回る内容であったりすると、投資家の信頼を損ね、企業価値にも影響を及ぼしかねません。ESGに関する基準や動向を正しく理解することで、変化する規制に的確に対応し、投資家との信頼関係を強化し、持続可能な経営をリードする企業としてのポジションを確立することができます。

以下は、世界の上場企業に対するESG開示のルール策定に関与している主要な国際組織の一部です。

1. 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)
https://www.ifrs.org/groups/international-sustainability-standards-board/

  • 役割:サステナビリティ報告の国際的な共通基盤を策定
  • 主な基準:ISSBは「IFRSサステナビリティ開示基準(S1およびS2)」を発行。2024年から適用が開始され、気候関連およびサステナビリティ関連の開示内容の一貫性確保を目的としています。

2. グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI
https://www.globalreporting.org/

  • 役割:世界で最も広く使用されているサステナビリティ報告フレームワークを提供
  • 主な基準:GRIスタンダードは、経済・環境・社会の影響に関する開示を網羅しており、企業がESG全体のパフォーマンスを包括的に報告することを支援します。

3. サステナビリティ会計基準審議会(SASB
https://sasb.ifrs.org/

  • 役割:業種別のサステナビリティ開示基準を策定
  • 主な基準:SASBスタンダードは、各業界における財務的に重要なESG課題を特定しています。
  • 統合状況:SASBはバリュー・レポーティング財団(VRF)の一部として、2022年にISSBへ統合されました。

4. 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD
https://www.fsb-tcfd.org/
(※2023年10月12日をもって解散。現在はIFRS財団のISSBが監督を継承)

  • 役割:気候変動に関連する財務情報開示のフレームワークを提供
  • 主な基準:TCFD提言は、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標の4つの柱を中心に、気候リスクに関する情報開示を求めています。
  • 規制対応状況:英国、EU、日本、カナダなどがTCFDに準拠した開示を義務化しています。
  • ISSBとの関係:ISSBが発行するIFRS S1およびS2にはTCFDの提言が完全に統合されており、サステナビリティおよび気候関連開示の包括的な基準として位置づけられています。

5. 欧州財務報告諮問グループ(EFRAG
https://www.efrag.org/en

  • 役割:企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の下で、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を策定
  • 影響:2024年より、EU域内の大企業および上場企業に対してESGパフォーマンスの開示が義務付けられます。

6. 国連責任投資原則(UN PRI
https://www.unpri.org/

  • 役割:投資家向けにESG開示に関する自主的な原則を策定
  • 主な基準:企業や機関投資家に対し、投資判断プロセスにESG要素を組み込むことを推奨しています。

7. CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)
https://www.cdp.net/en

  • 役割:環境影響に関する情報開示のための国際的なプラットフォームを運営
  • 主な基準:気候変動、水資源の保全、森林破壊に関する情報開示に重点を置いています。

8. 米国証券取引委員会(SEC
https://www.sec.gov/

  • 役割:米国の上場企業に対するESG情報開示を規制
  • 主なルール:TCFDの提言に沿った気候リスク開示に関する規則案を提示しています。

9. 証券監督者国際機構(IOSCO
https://www.iosco.org/

  • 役割:世界各国の証券規制当局によるESG報告フレームワークの整合性確保を支援
  • 主な活動:ISSB基準を支持し、国際的な普及を促進しています。

10. 各国の証券取引所および金融監督当局

  • 日本:
     金融庁(FSA)
    https://www.fsa.go.jp/en/
     東京証券取引所(TSE)
    https://www.jpx.co.jp/english/
  • 目的:日本の上場企業に対するESG情報開示の規制・指導を担う
  • 主なルール:金融庁はTCFDに準拠した開示を義務化。東京証券取引所は、上場企業に対しコーポレートガバナンス報告書におけるESGの透明性向上を推奨しています。
  • 影響:企業は、財務報告にESG要素を統合し、新たな規制に対応するとともに、海外投資家の関心を惹きつける必要があります。

ESG開示基準の統合に向けた動き

ESG報告の領域では、複数の開示フレームワークを統合する動きが本格化しています。現在、その中心的な役割を担っているのがISSBであり、国際的に統一された開示基準の策定を主導しています。

TCFDによる気候関連開示の原則は、ISSBが発行したIFRSサステナビリティ開示基準(S1およびS2)に直接反映されています。また、SASBとバリュー・レポーティング財団(VRF)はISSBに統合されました。一方で、GRIは引き続き補完的なフレームワークとして位置づけられています

典:ESG Professionals Network「ESG報告の全体像」インフォグラフィック

本図は、現在のESG報告を形成する主要な関係機関を視覚的に示しており、ISSBが主導する新たな国際基準に整合することの重要性をあらためて浮き彫りにしています。

今後の対応ポイント

こうした動向を踏まえ、日本のIR担当者に求められる対応は次のとおりです。

  • 最新情報の把握:グローバルなESG開示基準の動向を継続的に把握し、規制への適合性を保つとともに、投資家の期待に応える体制を整えること。
  • 基準の整合性を意識した対応:国際基準と国内規制(特にTCFDに準拠した日本の開示要件)の整合性を理解し、整合的な開示方針を構築すること。
  • 報告内容の高度化:統合された基準群を活用し、透明性が高く網羅的なESG情報を発信することで、投資家からの信頼を高め、グローバルなベストプラクティスに合致した報告を実現すること。

HTMLで統合報告書を発信する7つのメリット

統合報告書をPDF形式で公開していませんか?印刷を前提としていないのであれば、HTML形式で発信することで、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションの機会を広げられるかもしれません。

PDFは長年にわたって情報発信・印刷に活用され、多くのメリットがあります。しかし、企業コミュニケーションの在り方は変化しています。ペーパーレス化が進む中、PDFは最適な手段ではなくなりつつあります。

自社の報告書が本当に読まれているか、把握できていますか?PDFのダウンロード数を追跡していますか?閲覧データを可視化することは、ステークホルダーの関心や重視しているテーマを理解する上で欠かせません。

Microsoft、Philips、BASF、Bayerといったグローバル企業は、ハイパーリンクを活用して情報同士のつながりやナビゲーション性を高めた包括的なオンラインレポートをHTML形式で公開しています。 HTMLでの発信は、閲覧者の利便性を高めるだけでなく、分析データを通じて読者理解を深めることにもつながります。

HTMLとPDFの違い

コーポレート・バリュー・レポーティング・ラボ(Corporate Value Reporting Lab)によると、統合報告書を発行する日本企業の数は年々増加しています。2015年には200社強だった発行企業数が、2023年には1,000社を超え、今後さらに増加が見込まれています(詳細はフルレポートをご参照ください)。

PDFとHTMLのどちらの形式で発行している企業が多いのか、明確な統計はありませんが、デジタルレポートへの移行が進んでいる傾向は明らかです。

NexxarのCEOであるエロイ・バランテス(Dr. Eloy Barrantes)氏は、2018年にIFRS財団の統合報告に関するニュース記事で次のように述べています。

「統合オンラインレポートは多くの企業で定着していますが、企画やデザイン面では十分に配慮されていないことが多いのが現状です。良質なHTMLレポートは、Webという媒体の特性を理解し、それに即した発信方法を考慮しています。」

さらに次のように述べています。

「現在、オンラインレポートの優良事例は、長年HTMLレポートを発行してきた企業が中心です。そうした企業は、発行とコミュニケーションの両戦略においてHTMLレポートを重要視しています。」

IR業務においてHTML形式で報告書を発行することは、読みやすさやアクセシビリティの向上につながり、海外ステークホルダーにも情報が伝わりやすくなります。また、検索エンジンでの可視性も高まり、より多くの投資家に報告書を届けることができます。

「PDFとHTMLは具体的にどう違うのか?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。以下の表で、一般的な違いを確認してみましょう。

図の和訳

項目PDFHTML
アクセス解析が可能(アクセス数がアナリティクスで確認できる)いいえはい
共有しやすい(共有ボタンの設置が可能)いいえはい
CMSと連携し、簡単に更新可能いいえはい
アクセシビリティ対応(障がいのある方にも配慮)基本的に対応していない対応している
操作性・インタラクティブ性フォーム機能のみ高い
検索エンジンに表示されやすい(SEO対策)あまり対応していない対応している
書式の完全な制御(印刷に最適)可能不可
簡単にダウンロード・オフライン閲覧が可能はいいいえ

出典:Content Marketing Institute

ご覧のとおり、HTMLは「印刷時の正確な書式設定」と「オフライン閲覧用のダウンロード」を除くすべての項目で優れています。PDFの利点は、主に印刷を前提とした資料発行にあります。

HTML形式で発信する主な7つのメリットを詳しく見てみましょう

1. アクセシビリティの向上
HTMLは、障がいのあるユーザーにとっても利用しやすい形式です。スクリーンリーダーなどの支援技術がHTML構造を正確に読み取ることができ、誰にとっても情報へアクセスしやすくなります。

2. モバイル対応の閲覧体験
スマートフォンでPDFを読む際に、拡大・縮小を繰り返した経験はありませんか?HTMLならその必要はありません。レスポンシブデザインにより、画面サイズに応じて自動調整され、スムーズな閲覧が可能です。

3. SEO(検索エンジン最適化)への効果
HTMLコンテンツは検索エンジンによってインデックスされやすく、情報の発見性が高まります。一方、PDFはSEO対策がしづらく、検索結果に表示されにくい傾向があります。

4. インタラクティブ機能
HTMLでは、ハイパーリンク、動画、アニメーション、インタラクティブなデータビジュアルなどが利用可能です。閲覧者の関心を引きつけ、より動きのある表現が可能です。

5. 高速な表示・パフォーマンス
容量の大きいPDFが読み込まれるのを待つのはストレスです。HTMLは軽量で、特に大規模なドキュメントでも素早く表示されます。

6. リアルタイムでの更新
誤りの修正や最新情報の追加も、HTMLなら即座に対応可能です。ユーザー側で再ダウンロードする必要はありません。

7. アクセス解析とユーザー行動の把握
読者がどのセクションに興味を持っているのかを知りたい場合、HTMLなら行動データの取得が可能です。PDFでは得られないインサイトを得ることができます。

HTML形式への移行は、読みやすさを向上させるだけではありません。情報の即時更新が可能となり、再ダウンロードの手間がなくなります。これにより、修正ミスの削減、迅速な改訂対応、そしてタイトなスケジュール下での業務負担の軽減が期待できます。

なぜ今もPDFにこだわるのでしょうか?

配信方法がデジタル限定であれば、従来型のPDFに固執する必要はありません。印刷物として残したい場合はPDFが有効ですが、ユーザーフレンドリーで現代的なアプローチを目指すなら、HTML形式を選ぶべきです。

まだ全面的な移行に不安がある場合は、まずは主要な数値情報だけでもHTML化して、読者のエンゲージメント指標を比較してみてください。多くの企業は、HTMLとPDFを併用したハイブリッド型のレポートも採用しています。たとえば、2023年版のBayer統合報告書ではその具体例が確認できます。

まとめ

デジタル環境は急速に進化しています。古いフォーマットにとらわれていては、変化のスピードに対応できません。HTMLを活用することは、世界のベストプラクティスに則ることであり、「革新性」と「アクセシビリティ」を重視する企業姿勢を海外投資家に示すことにもつながります。

HTML形式で統合報告書を発信することは、単なる技術面のアップグレードではありません。企業のストーリーを、デジタルリテラシーの高いステークホルダーに向けて効果的に伝えるための重要な機会です。

HTMLレポートやハイブリッド型の具体例はこちらからご覧いただけます:

小さなカンマが大きな議論に!オックスフォード・カンマは必要?

「オックスフォード・カンマ」をご存知ですか?英語の文章を書くときに、ちょっとした「,」を入れるかどうかで、英語圏では大きな議論を巻き起こしています。

オックスフォード・カンマとは?

シリアル・カンマとも呼ばれるオックスフォード・カンマは、英語の句読点の中でも最も議論される記号の一つです。3つ以上のものを列挙する際に、最後の項目の前に置かれる「and」または「or」の前に打つカンマのことです。

例えば、

「I bought apples, oranges, and bananas.」
(私はリンゴとオレンジ、そしてバナナを買いました。)

この「oranges」の後にあるカンマがオックスフォード・カンマです。

「わざわざカンマを入れなくても意味は伝わるのでは?」という意見もあるのですが、実はこのカンマがあるかないかで、文章の意味がガラッと変わることもあるのです。

使う・使わないで意味が変わる!?

オックスフォード・カンマの重要性

この小さなカンマは些細なものに見えますが、あるかないかで文章の意味が大きく変わることがあります。特に、列挙する項目が複雑な場合や、グループとして解釈される可能性がある場合、カンマの有無によって、思わぬ誤解を招くことがあるのです。

いくつか例を見てみましょう。

【例1】

オックスフォード・カンマなし

My favorite foods are pizza, macaroni and cheese and crackers.

オックスフォード・カンマがない文章では、私の好きな食べ物は、
「ピザ、マカロニ、そしてチーズ・アンド・クラッカー」
であるのか、それとも
「ピザ、マカロニ・アンド・チーズ、そしてクラッカー」

オックスフォード・カンマあり

My favorite foods are pizza, macaroni and cheese, and crackers.

オックスフォード・カンマを使うと、私の好きな食べ物は、
「ピザ、マカロニ・アンド・チーズ、そしてクラッカー」
であることが、はっきりとわかります。

【例2】

オックスフォード・カンマあり

We invited the rhinoceri, Washington, and Lincoln.

オックスフォード・カンマを使った文章では、
「私たちはサイ、ワシントン、そしてリンカーンを招待しました。」
と読めるので、ワシントンとリンカーンはサイとは別のゲストであることが、はっきりとわかります。

オックスフォード・カンマなし

We invited the rhinoceri, Washington and Lincoln.

しかし、オックスフォード・カンマを使わないと、ワシントンとリンカーンがサイの名前であるようにも読めるため、
「私たちはサイのワシントンとリンカーンを招待しました。」
と解釈することもできます。
「ワシントンとリンカーン」がサイなのか、人間なのか、この文章だけでは判断することができません。

【例3】

オックスフォード・カンマなし

The report was prepared by the marketing department, John and Sarah.

オックスフォード・カンマのない文章では、「ジョンとサラ」がマーケティング部門の一員とも読めるため、「そのレポートはマーケティング部門のジョンとサラによって作成されました。」と解釈することもできます。「ジョンとサラ」がマーケティング部門に所属しているのかどうか、この文章だけでは判断することはできません。

オックスフォード・カンマあり

The report was prepared by the marketing department, John, and Sarah.

オックスフォード・カンマを使った文章では、
「そのレポートはマーケティング部門とジョン、そしてサラによって作成されました。」
という意味となり、カンマを一つ追加するだけで、「ジョンとサラ」がマーケティング部門とは別の人たちであることが明確になります。

一貫性が重要!!

オックスフォード・カンマを使うか使わないかは、文章スタイルの問題といえます。 また、アメリカ英語とイギリス英語で、次のような違いがあります。

  • アメリカ英語:一般的に使われ、特にフォーマルな文章では、曖昧さを避けるために推奨されることが多い。
  • イギリス英語:あまり使われず、明確さが求められる場合にのみ入れることが多い。

オックスフォード・カンマを使うか使わないかは自由ですが、大切なのは 「一貫性」です!文章全体でルールを統一することが重要になります。

OWLではオックスフォード・カンマを推奨しています

オックスフォード・カンマを使うべきかどうか迷った場合は、次のポイントを考えてみてください。

明確さ:カンマがないと意味が曖昧になったり、誤解を招く可能性があったりしないか?

タイルガイド:使用するスタイルガイドで、オックスフォード・カンマが推奨されているか?

(例えば、シカゴ・マニュアル・オブ・スタイルでは推奨されていますが、APスタイルでは推奨されていません)

OWLは、さまざまなステークホルダーに向けて、明確かつ簡潔にメッセージを伝えることを大切にしています。そのため、APスタイルに従いつつも、オックスフォード・カンマを使用しています。

ESG開示の国際ルールが変わる!2025年改訂の全体像と実務対応ポイント

ESG(環境・社会・ガバナンス)開示をめぐる動きは、近年ますます加速しています。IR担当者として、自社がこうした動向に遅れず対応し、適切な情報開示を行うための体制を整えることは、ますます重要になっています。2025年には、ESG開示に関する主要なフレームワークの大幅な改訂が予定されており、今のうちから準備を進めておくことが、投資家からの信頼を維持し、企業としての透明性への姿勢を示すうえで不可欠です。

本記事では、2025年に変更が予定されている4つの主要なESGフレームワークを取り上げます。

Key ESG Framework Overhauls in 2025

1. B Lab Global(Bコーポレーション認証)

Bコーポレーション認証制度の改訂

Bコーポレーション認証制度は、現在第7回目となる基準改訂が進められています。今回の改訂では、企業規模に応じたESGパフォーマンスの**最低基準値(minimum performance thresholds)**が導入される予定です。

これまでの認証制度では、全体スコアが一定以上であれば認証を取得でき、項目ごとの強弱を相殺することが可能でしたが、今後は各項目で一定の水準を満たすことが求められる方向です。
(出典:Heather Clancy, Trellis, 2025年1月7日)

B Labは、新しい認証基準の詳細を2025年初頭に公表する予定です。

▼制度変更に関する詳細はこちら(いずれも英語サイト):
B Corporation公式サイト:新しいパフォーマンス要件
https://www.bcorporation.net/en-us/standards/performance-requirements/

Trellis記事:「新しいB Corp基準について知っておくべきこと」https://trellis.net/article/heres-what-know-about-new-b-corp-standards/

2. 世界資源研究所(WRI)および持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)

温室効果ガスプロトコルGreenhouse Gas Protocol  

世界的に広く利用されているカーボンアカウンティングの枠組みである温室効果ガスプロトコルは、10年以上ぶりとなる大規模な改訂を進めています。
2024年にはガバナンス体制が大幅に見直され、新たに運営委員会(Steering Committee)、独立基準委員会(Independent Standards Board)、および**4つの技術作業部会(Technical Working Groups)**が設立されました。

(出典:Greenhouse Gas Protocol公式サイト)

今回の見直しでは、以下のような内容が改訂案として検討されています:

  • スコープ3排出量に関する報告要件の強化
  • 企業向け排出量会計ルールの更新
  • 再生可能エネルギークレジットの新たな取り扱い手順

S&P500企業のほぼすべてがこのプロトコルを利用していることから、今回の見直しはグローバルな排出量報告に大きな影響を及ぼすと見られています。改訂案(パブリックコンサルテーションドラフト)は2025年中に公開され、最終的な基準の確定は2026年末を予定しています。

(出典:Heather Clancy, Trellis, 2025年1月7日)

▼詳細はこちら(いずれも英語サイト):
運営委員長および副委員長からの2025年1月メッセージ
https://ghgprotocol.org/blog/2024-reflections-and-looking-ahead-letter-ghg-protocol-steering-committee-chair-and-vice-chair

企業向け基準およびガイダンス改訂プロセス
https://ghgprotocol.org/ghg-protocol-corporate-suite-standards-and-guidance-update-process

3. 国際標準化機構(ISO)

ISOネットゼロ・スタンダード

ISO(国際標準化機構)は、2022年のCOP27においてネットゼロ・ガイドライン(IWA 42:2022)を発表しました。現在、このガイドラインを基にした正式な国際標準の策定が進められており、2025年11月に開催されるCOP30での公表が見込まれています。ただし、それに先立ち、2025年中にパブリックコンサルテーション(意見募集期間)が設けられる予定です(出典:ISO公式サイト、2024年6月/Net Zero Now)。

今回の改訂では、カーボンオフセットに依存するのではなく、あらゆる温室効果ガスの削減を重視すること、ならびに継続的な検証の実施が求められる見通しです。

▼詳細はこちら(いずれも英語サイト):
ISO:現行ネットゼロ・ガイドライン(IWA 42:2022)https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:iwa:42:ed-1:v1:en

ISO公式:新スタンダード策定に関する発表(20246月)https://www.iso.org/contents/news/2024/06/netzero-standard-underway.html

Net Zero Now:ISOネットゼロ標準に関する最新情報
https://netzeronow.org/post/new-iso-net-zero-standard-announcement

Trellis:ISOのネットゼロ標準で知っておくべきこと
https://trellis.net/article/what-you-should-know-about-isos-forthcoming-first-net-zero-standard

4. Science Based Targets initiative (SBTi)

企業向けネットゼロ・スタンダード
(Corporate Net-Zero Standard)

SBTi(Science Based Targets initiative)は、最新の気候科学に基づき、企業向けネットゼロ・スタンダードの見直しを進めています。 改訂後のスタンダードでは、企業に対して2030年までに温室効果ガス排出量を半減し、2050年までに90%削減することが求められる見通しで、カーボンオフセットの使用は最小限に制限される予定です。ただし、オフセット利用の容認範囲をめぐる議論が続いているため、次期バージョンの発表は延期となっています。

(出典:Heather Clancy, Trellis, 2025年1月7日)

SBTiの公式サイトによると、改訂版スタンダードは2回にわたりパブリックコンサルテーションが実施される予定で、第1回目は2025年3月以降に開始される見込みです。また、企業が改訂案を試験的に導入するための「テストドライブ」制度への応募も受け付けられる予定です。

2025年2月時点では、SBTiがステークホルダーからの追加フィードバックを募集しています。

(出典:Science Based Targets公式サイト)

▼詳細情報(いずれも英語サイト):
SBTi:2025年2月アップデート|ステークホルダー向け意見募集https://sciencebasedtargets.org/news/corporate-net-zero-standard-revision-sbti-releases-new-opportunities-for-stakeholders-to-input

ESG Today:SBTi、改訂スケジュールを延期
https://www.esgtoday.com/sbti-pushes-back-timeline-for-new-corporate-net-zero-standard/

日本企業への示唆

ESG開示を担当するIR部門にとって、今回紹介した各種フレームワークの改訂は、以下の対応の必要性を強く示しています。

  • グローバル基準との整合性強化
    ESGに関する報告基準の国際的な整備が進む中、自社の情報開示をこうした基準と整合させることが、報告内容の一貫性やステークホルダーからの信頼性向上につながります。
  • カーボン排出・ネットゼロ開示の高度化

気候関連リスクへの注目が高まる中、排出量やネットゼロに関する指標・開示内容を財務情報にどう統合するかが、今後の開示の質を左右する重要な要素になります

  • データの正確性と比較可能性の確保
    規制当局の監視が厳格化する中で、ESGデータの信頼性・検証可能性を高め、グローバルなベストプラクティスに沿った運用体制の整備が求められます。

IR担当者が今すぐ取り組むべきアクション

急速に進化するESGの潮流の中、IR担当者には企業の透明性とコンプライアンスを確保する最前線の役割が求められています。特に、2025年に予定されている各種フレームワークの大幅な改訂は、投資家との信頼関係を維持し、各国の規制要件を満たすうえでも極めて重要です。


以下のステップを実践することで、変化への対応力を高め、サステナビリティ報告の質と戦略性を強化することができます。.

  1. 現行のESG開示体制の評価
    現在のESG報告書と各フレームワークの改訂内容を照らし合わせ、ギャップ(不足点)を洗い出す内部レビューを実施しましょう。
  2. 外部専門家との連携強化
    ESG開示の国際的な期待に応えるために、コンサルタントや翻訳パートナーとの連携を活用することが効果的です。
  3. テクノロジーの活用による一貫性確保
    ESGレポート作成において、専用の報告支援ソフトウェアや翻訳メモリツールを用いることで、言語・指標の一貫性を維持できます。
  4. 国際的な規制動向のモニタリング
    主要なESGフレームワークや監督当局からの最新情報を継続的にフォローアップし、対応漏れを防ぎましょう。
  5. フレームワーク別の最新情報を定期的に確認
    以下の公式情報源を定期的にチェックし、最新の動向を把握しておくことが不可欠です:

(ア)B Lab Global – Bコーポレーション認証基準
 公式サイト:B Corporation Standards

(イ)Greenhouse Gas Protocol – GHGプロトコル更新情報
 公式サイト:GHG Protocol Updates

(ウ)ISO – ネットゼロ・スタンダード
 公式サイト:ISO Net-Zero Guidelines

(エ)Science Based Targets initiativeSBTi企業向けネットゼロ基準
 公式サイト:SBTi Updates

留意点

ESGを取り巻く環境は常に進化を続けており、本記事で紹介したアップデート内容の一部についても、今後さらに変更が加えられる可能性があります。
スケジュールが変更されることもあれば、業界からのフィードバックを受けて内容そのものが見直されることも想定されます。

そのため、規制当局からの発表、業界ニュース、専門家による議論などに継続的に目を向けることが、想定外の変更に柔軟に対応し、自社が常に一歩先を行くための鍵となります。

フォント次第で印象が変わる?知られざるその重要性とデザインの影響力

フォント選びの重要性をご存じですか? その影響は、想像以上に大きいかもしれません。

フォントは、可読性や余白の使い方、さらには企業の印象にまで影響を与える重要なツールです。米国の専門ガイド「American Profession Guide」では、次のように述べられています。

「フォントが持つ力は、想像以上に大きいものです。感情や印象を、微妙でありながらも深く左右します。この感覚的な影響を理解することにより、デザイナーやマーケティング担当者、広報担当者は、より効果的にメッセージを伝えることができるようになります。」

本日のブログでは、「スペース」と「印象」という2つの観点からフォントを見ていきます。

たとえばスペースは、文章作成において非常に重要な要素です。特に日本語と英語のように構造が大きく異なる言語間の翻訳では、スペースの使い方が非常に重要になります。
実は、フォントの選び方によって、縦方向・横方向の両方でスペースを無駄にしている可能性があるのをご存じでしょうか?

日本語資料を英語に翻訳する際、英語の文章量は日本語の2倍程度に膨らむことが多く、図表、見出し、レイアウトの設計で課題が生じやすくなります。

フォントによっては、こうした課題をさらに悪化させてしまう場合もあるのです。

現在お使いのフォントは、英語向けに最適化されていますか?

フォントには、それぞれ用途に適した設計があります。

MS明朝、游ゴシック、メイリオといったフォントは、日本語表示には最適ですが、英語では文字間のバランスや可読性に課題が出やすくなります。

以下では、日本でよく使われるフォントが英語の資料に向かない理由をいくつかご紹介します。

英文レポートに不向きなフォントの例(その理由)

  1. MS明朝
    日本語の漢字・仮名に最適化されたセリフ体フォント。英語では線が細すぎて、ブロック全体が不均一に見え、長文になると読みづらくなります。
    問題: 線が細く、ローマ字のバランスが不十分。
  2. MSゴシック
    日本語資料で広く使われていますが、英語の文字は角ばっており、古くさい印象を与えます。
    問題: プロポーショナルでないため、不自然で堅い見た目になる。
  3. 游明朝
    日本語では上品な印象を与えますが、英字の文字幅が**不均一(狭すぎる/広すぎる)**で、全体がアンバランスになります。
    問題: スペース効率が悪く、文字間(カーニング)が不安定。

では、どのようなフォントが英語に適しているのでしょうか?

英語のフォントは、セリフ(Serif)体とサンセリフ(Sans-Serif)体という2つの大きなカテゴリに分けられます。以下は、アメリカの印刷会社 Carter Printing による説明です。

セリフ体(Serif Fonts)
伝統的な本文用フォントです。Times New Roman や Garamond などが代表例です。文字の先端に 「ひげ(セリフ)」 と呼ばれる小さな線があり、文字サイズが8〜9ポイントでも可読性が高いのが特長です。書籍や小説などの印刷物によく使われています。

サンセリフ体(Sans-Serif Fonts)
“sans”は「〜なし」の意味で、セリフのないフォントを指します。Google Docsの標準フォント Arial や、Microsoft Wordの自動設定フォント Calibri もこのカテゴリに含まれます。セリフがないことで、すっきりとした現代的な印象を与えるため、デジタル資料に適しています。

(出典:Carter Printing

代表的なサンセリフ体・セリフ体フォント

サンセリフ体: Arial、Helvetica、Roboto、Calibri
セリフ体: Times New Roman、Georgia、Garamond

セリフ体・サンセリフ体のいずれも、英語の資料におけるプロフェッショナリズム、明確さ、標準的な見た目を実現するうえで有効です。

では、読み手に与える印象(トーン)にはどのような違いがあるのでしょうか?

American Profession Guide」によると、Times New Roman のようなセリフ体フォントは、新聞や書籍、その他のフォーマルな印刷物との関連性が高く、格式や信頼感を連想させる傾向があります。

一方で、サンセリフ体は、デジタルコンテンツによく使用され、モダンで、すっきりとした印象を与えるとされています。

  1. Arial
    よく使用されているサンセリフ体フォントで、すっきりとした現代的な印象が特長です。画面上でも印刷物でも読みやすく、プロフェッショナルなレポートに適した信頼性の高い選択肢です。
  1. Times New Roman
    クラシックなセリフ体フォントで、フォーマルさと読みやすさのバランスが取れています。学術資料やビジネス文書でも広く使用されており、大量のテキストを読者がスムーズに処理できる構造を持っています。
  2. Helvetica
    明瞭さと中立性が評価されている、汎用性の高いサンセリフ体フォントです。文字のバランスや曲線が整っており、企業レポートやブランド用途にも適しています

フォントにそんなに違いがあるのでしょうか?

日本語向けフォントと英語向けフォントを実際に並べて比較してみましょう

以下の図では、Yu Mincho(游明朝)と Times New Roman を同じサイズで使用し、「English」という単語を入力しています。

図1

Times New Roman(セリフ体)と同様に、Yu Mincho(游明朝)にも文字の下部に“ひげ”があります。一見すると似たようなフォントに見えますが、Times New Roman(英語向け)とYu Mincho(日本語向け)では設計が異なります。

ここでは、フォントサイズを120に拡大し、ハイライト表示でその違いを確認してみましょう。

図2

灰色のボックスの高さと幅の違いにご注目ください。

Times New Roman は英語に最適化されたフォントで、文字ごとの間隔(カーニング)や文字の上下の余白がよりコンパクトに設計されています。単語1つでは大きな差に見えないかもしれませんが、100ページに及ぶレポート全体で考えると、かなりのスペース差になります。また、Times New Roman の文字はやや丸みを帯びているのに対し、Yu Mincho の文字はやや角ばっている点にもご注目ください。

次に、フォントサイズを小さくして別の例を見てみましょう。

図3

この図では、左側に日本語向けの一般的なフォント3種、右側に英語に最適化されたフォント3種を使用しています。すべてのテキストはフォントサイズ10.5で統一しており、異なるのはフォントの種類のみです。

左側の日本語フォントは、文字間や行間に余白が多く必要であることが分かります。
中でも MSゴシックと Times New Roman の差が特に顕著で、MSゴシックでは1行分余計にスペースを消費しているのが見て取れます。

また、Times New Roman(セリフ体フォント)は、Arial や Helvetica(サンセリフ体)と比べて、より伝統的で信頼感のある印象を与える点にもご注目ください。

まとめ

フォント選びは重要です。見た目の問題だけではなく、伝えたい内容を明確かつプロフェッショナルに、そして読者に最適な形で届けるための鍵となります。

フォントの使い方についてご不明な点があれば、ぜひ One World Link までお問い合わせください

次回、英語版レポートのフォーマットを検討する際は、「フォントは言葉以上に多くを語る」ということを思い出してください。

初期のデザイン段階から、英語版におけるフォント、文字方向、レイアウトの調整を考慮するよう、制作担当者へ依頼しましょう。

参考リンク

タイポグラフィの入門記事(英語)
https://www.toptal.com/designers/typography/typeface-classification

英語フォントを2つ並べて比較できるユニークなサイト(英語)
http://www.identifont.com/differences.html

Why Relying on Generative AI for Translation May Ruin Your Relationship With Overseas Investors

As an IR or ESG professional in Japan, you already know how demanding your job is. Between preparing disclosures, responding to investors, and managing internal reports, translation often feels like just one more burden—one you barely have time for. AI tools like ChatGPT promise to make the process faster and easier, but can they really deliver the accuracy and nuance your communications require?

AI translation has come a long way, offering instant results that seem like a perfect solution for time-strapped professionals. But as useful as these tools can be, they also have limitations—especially when it comes to financial, regulatory, and investor-facing content. Knowing when to rely on AI and when to steer clear can make the difference between clear, effective messaging and costly miscommunication.

That said, while AI translation can be a helpful tool, it’s not a one-size-fits-all solution. These tools are evolving rapidly, but they still struggle with nuance, cultural context, and the complex language structures often found in financial and investor communications. Precision and clarity are critical for IR and ESG professionals. Knowing when to use AI and when to rely on human expertise can make all the difference in your global communications.

Below, we break down five scenarios where AI translation can be useful and five where it’s best to leverage professional human translators.

Five Ways to Use Generative AI for Japanese-to-English Translation and Maintain Good Relationships With Stakeholders

Generative AI is transforming how businesses handle translation, offering speed and efficiency that can be valuable in the right situations. However, like any tool, its effectiveness depends on how and when it’s used. For Japanese-to-English translation, AI can support internal workflows, assist professionals, and improve efficiency—but only if applied thoughtfully. Here are five ways AI can enhance translation while maintaining strong stakeholder relationships.

1. Internal Drafts and Quick Reference

AI can help draft internal emails, memos, or reports, where the main goal is quick understanding rather than polished communication. When speed is a priority, AI-generated translations can provide a foundation that employees can refine before finalizing the content.

2. Structured and Repetitive Content

For standardized texts such as FAQs, technical manuals, and product descriptions, AI translation can be an efficient solution. These types of content often follow predictable structures with consistent terminology, making them easier for AI to process accurately.

3. Large Volumes of Low-Risk Content

When companies need to translate a large number of internal reports or informal communications, AI can save time by providing an initial translation. This is especially useful when the primary goal is to grasp the meaning rather than produce a fully polished final document.

4. Ensuring Consistency in Terminology and Style

Maintaining consistent terminology and writing style is essential for corporate communications, especially in industries with specialized language. Generative AI can assist you in reinforcing your company’s brand voice across all materials by referencing predefined glossaries, past translations, and style guidelines to ensure that your communications remain uniform in tone and word choice.

5. Assisting Human Translators

Translation tools have evolved over the years to support human translators, starting with paper dictionaries, electronic devices like the “Word Tank,” and later, online dictionaries and databases. Generative AI is the latest addition to this toolkit, helping professionals work more efficiently by generating initial drafts, suggesting terminology, and identifying common patterns in language. Generative AI can help refine tone, nuance, and clarity, ensuring your final translation is natural, precise, and suited to the end user. Using these tools to streamline repetitive tasks enables you to concentrate on what matters most—delivering high-quality, audience-focused communication.

Five Times Generative AI Can Hurt Your Japanese-to-English Translation—and Your Stakeholder Relationships

For high-stakes content like financial disclosures, investor communications, and culturally sensitive messaging, accuracy and nuance are critical—areas where AI still struggles. Misuse of AI in these situations can lead to miscommunication, reputational damage, and even compliance risks. Here are five scenarios where AI translation falls short and why human oversight is essential.

1. Financial Disclosure

Financial reports and earnings releases demand precision and adherence to specific terminology and formatting standards. Recent studies highlight both the progress and limitations of AI translation in finance. Researchers from Grenoble Alpes University and Lingua Custodia introduced the DOLFIN test set to evaluate AI performance in financial content. While AI models continue to improve, they still struggle with context-sensitive financial terminology and formatting accuracy. While larger AI models performed better by using more context to produce accurate and consistent translations, smaller models often struggled. In longer passages, these models tended to lose coherence, with each new word making the translation less accurate. (Slator)

2. Investor Relations and Corporate Communications

A survey by the Tokyo Stock Exchange found that global investors are dissatisfied with the current state of English disclosures in Japan. A number of respondents commented that they were dissatisfied with the machine translation of earnings reports, IR presentations, and timely disclosures, adding that such translations are particularly difficult to understand. Read more in our previous blogs [Why Are Investors Undervaluing Your Stock? Investors Say, “Much Harder to Evaluate the Risks of an Investment in Japan…”]
[10 Quotes From Global Investors That Will Make You Rethink Your English Communications]

Investor presentations, shareholder letters, and public disclosures shape corporate reputation. These materials must be clear, concise, and aligned with company messaging. However, AI-generated English translations of Japanese often introduce passive voice, awkward phrasing, and inconsistencies. This not only disrupts readability but also weakens the impact of the message. Passive voice can make statements feel less direct and engaged, while awkward phrasing and inconsistencies can distract stakeholders or create an unpolished impression—ultimately undermining the company’s credibility and professional image.

3. Cultural and Nuanced Messaging

Language is more than just words—it conveys culture, intent, and emotion. AI tools may generate grammatically correct translations that include all elements of the original Japanese text but fail to capture how the same ideas would naturally be expressed in English. The way we structure sentences, organize paragraphs, and present information varies across languages. Writing styles, tone, and the pragmatic use of language often require careful adaptation rather than direct translation. Without human intervention, AI-generated translations can feel rigid, overly literal, or even confusing to the target audience.
Japanese business communication, for example, often removes subjects and includes passive language, indirect phrasing, and cultural subtleties that AI cannot always interpret correctly. What sounds normal in Japanese may come off as vague or unnatural in English, even if it’s a “correct” translation.

4. Copywriting and Branding

Marketing materials, websites, and press releases must engage the target audience while maintaining brand voice and credibility. As noted by Metaphrasis Language & Cultural Solutions, AI might not comprehend the cultural quirks and emotional appeal required for persuasive marketing content, resulting in translations that are ineffective or even offensive to potential customers.

5. Confidential or Sensitive Information

AI translation tools can pose significant security risks. Sensitive business information input into AI platforms may be stored, reused, or leaked, creating potential data breaches. For instance, Samsung employees inadvertently leaked confidential company data in 2023 by inputting sensitive information into ChatGPT, leading the company to ban the use of such AI tools to protect its intellectual property (TechCrunch, 2023). Similarly, major banks and technology companies have imposed restrictions on their employees’ use of ChatGPT over concerns about confidential data leaks (Semafor, 2023). Human translators provide confidentiality and accountability that AI cannot ensure.

The Bottom Line

Generative AI translation can be a valuable tool in many situations, but it’s not a one-size-fits-all solution. While it offers speed and convenience, especially for routine or high-volume content, there are times when human expertise is essential—such as in financial reporting, investor relations, and culturally nuanced messaging.

Keep in mind that the effectiveness of AI translation also depends on how it’s used. Clear, well-structured input and carefully crafted prompts can improve results, but AI still has limitations in capturing nuance and context. The key is understanding when AI can enhance efficiency and when human oversight is necessary to ensure accuracy, clarity, and credibility in your global communications.

生成AIを使い英文IRディスクロージャー業務を行う際のAIとの正しい付き合い方とは?

IRやESGの情報開示において、英文開示のニーズはますます高まる傾向の中、情報開示の準備や投資家からの質問に対する回答、社内向け報告書の管理において、翻訳はプラスアルファの業務であり、英訳業務に割く時間確保や英語化に対する予算なども厳しい状況の企業様は多くいらっしゃると思います。

弊社の多くのクライアント様も自社内にChatGPTのようなAIを導入し、社内イントラとして英訳を行い、翻訳にかけていた時間やコスト削減に取り組んでいる企業様も多くいらっしゃいます。しかし会社が伝えたい日本語の原文にある大切なニュアンスを本当に正確に表現できているのか、その英訳に一切問題がないのか、、、認識されておりますでしょうか?

AI翻訳は大きな進歩を遂げ、時間に追われるIR担当者のみなさまに対して、完璧に近いと思われるレベルのソリューションを一瞬にして提供してくれるようになりました。しかし、便利にはなりましたが、財務状況や金融規制情報など投資家の方々が日々触れている情報に対して、翻訳品質のレベルはまだ完璧とは言えません。

どのような場合にAIを活用し、どのような場合に使用を避けるべきかを把握しているかどうかで、簡潔、明白で効果的なメッセージとして発信していけるか、あるいは、大幅に誤ったコミュニケーションとなるかの違いが生じてきます。

AI翻訳が有用なツールであることは確かですが、現時点においては、完全なるソリューションではないということを今日はお伝えしていきたいと思います。これらAIツールは急速に進化しているにも関わらず、財務情報や投資家の方々のやり取りによく見られる繊細なニュアンスの違いや文化的な内容、日本語特有とも言える複雑な言語構造に対して、未だにAIは間違えることがあります。

IRやESGの情報開示において、情報の正確さや明白さは英文コミュニケーションにおいて非常に重要です。どのような場合にAIを使用し、どのような場合に人間の見解、判断を優先すべきなのかを明確に把握することで、これからの海外向けコミュニケーションに対して大きな違いを生むことができるでしょう。

AI翻訳が役に立つケースと翻訳者に依頼すべきケースを、それぞれ5つずつ紹介させていただきます。

生成AIによる和文英訳で、投資家の方々と良好な関係を保つことができる5つのケース

生成AIは、様々な状況に応じて適切な速度や性能を提供することで、翻訳業務のあり方を変えつつあります。しかし、他のツールと同様に、いつどのように使用されるかによって、その効果は変わります。

AIで和文英訳を行うことで、社内向け文書の作成など、IR担当者の皆さんの業務支援や効率性の向上につながりますが、その使い方は慎重に検討する必要があります。

投資家の方々とのやり取りをスムーズに進めるために、AI翻訳を活用できる5つのケースを紹介します。

1. 社内向け原稿およびクイックリファレンス

AIにより、社内向けのメールやメモ、報告書の作成が効率的に進められます。これらの文書は、洗練された表現よりも簡単に理解できる内容であることが重要となるためです。
AI翻訳で作成した下書きを手直しするだけで完成させることができるため、期限が迫っている場合などに役立ちます。

2. 構造化された定型的な内容

FAQや技術マニュアル、製品説明のような標準化された文章は、AI翻訳が効果を発揮する場面です。これらは、統一された用語による予測可能な構造になっていることが多く、AIが正確に処理しやすい内容になっています。

3. 大量の低リスクな内容

大量の社内向け報告書や非公式文書の翻訳を行う際、AIに翻訳のたたき台を作成させることで、時間の節約が可能です。これは完璧な最終文書を作成することよりも、概要を把握することが最優先の場合に特に有用です。

4. 用語およびスタイルの一貫性を保証

用語やスタイルを統一することは、企業間コミュニケーション、特に専門用語を用いる業界では必須です。
生成AIは、あらかじめ定義された用語集や過去の翻訳、スタイルガイドを参照することで、企業ブランドのメッセージを全ての媒体に反映するためのサポートが可能です。これにより、一貫した論調や用語によるコミュニケーションが保証されます。

5. 翻訳者の支援

翻訳ツールは、紙の辞書から始まり、”Word Tank”のような電子辞書に続いて、オンライン辞書やデータベースの登場といったように、翻訳者をサポートするために長年進化してきました。
生成AIは翻訳ツールの最新版であり、たたき台の作成や用語の提案、言語の共通パターンの特定を通して、より効率的な働き方を支援しています。
生成AIの活用により、論調やニュアンス、明瞭さの改善が可能です。また、最終的な翻訳が自然かつ正確で、エンドユーザーに合致する内容であることが保証されます。
これらのツールを使用することで、定型作業を効率化し、最も重要な業務である「高品質で読者にフォーカスしたコミュニケーションの提供」に集中できます。

生成AIによる和英翻訳で、出資者との関係が損なわれる5つのケース

財務情報の開示や投資家とのコミュニケーション、文化的背景から用いられる繊細なメッセージなどの影響力が強い内容は、正確さとニュアンスが重要になります。これはAIが未だに苦手としている領域です。

これらの状況でAIを誤った方法で用いると、コミュニケーションの行き違いや風評被害、ひいてはコンプライアンスのリスクにつながる可能性があります。

AI翻訳では目的を達成できないために、人間によるチェックが必要となる5つのケースを紹介します。

1. 財務情報の開示

財務報告書や決算発表は、特定の用語や標準書式への正確な順守が求められます。近年の研究では、財務情報におけるAI翻訳の進歩と制約の両方に着目しています。
グルノーブル・アルプ大学とLingua Custodia社の研究者は、財務情報におけるAI性能を評価する「DOLFINテスト」を導入しました。AIモデルは日々進化を続けていますが、状況に応じた財務用語の使い分けや書式の正確性には未だに苦労しています。
大規模AIモデルが様々な文脈を学習して正確で一貫した翻訳を生成することで、より良い性能を発揮する一方で、小規模モデルは苦戦することが多いです。長文では、これらのモデルは一貫性に欠ける傾向があり、新たな語句が出てくると翻訳の正確性が下がります。(Slator

2. IRおよび企業広報

東京証券取引所の調査によると、海外投資家は日本での英語による情報開示に満足していないという結果が出ています。多くの回答者が、決算発表やIR資料、即時開示資料に満足できなかった、翻訳された文章が特に分かりづらかったと答えています。
詳しくは、前回のブログをご覧ください:
日本株の評価が難しい理由とは?投資家が語る評価の壁とは・・・
英語開示の重要性を考え直す海外投資家からの声

投資家向け資料や株主向け文書、公開情報は、企業の評判を形成します。これらの情報は明快かつ簡潔で、企業メッセージに沿ったものでなければなりません。しかし、AIによって生成された和文英訳は、受動態や不自然な言い回し、矛盾のある文章になることが多いです。これにより、読みやすさが損なわれるだけでなく、メッセージの効果が下がってしまいます。
受動態を使うと、間接的で読者の関心を引きづらい文章になります。不自然な言い回しや矛盾のある文章によって、株主を混乱させたり、洗練されていない印象を与えることになります。最終的には企業の信頼性やイメージを低下させてしまいます。

3. 文化的背景やニュアンスを含むメッセージ

言語とは単に言葉をつなげただけのものではありません。文化や意図、感情を伝えるためのものです。AIツールは、原文の日本語にある全要素を含んだ文法的に正しい翻訳を生成しますが、原文の意図を自然な英語表現でどのように伝えるかまでは把握できません。
文章や段落を構成したり、情報を伝達する方法は言語によって変わります。記載スタイルや論調、言語を実際に翻訳する際は、直訳ではなくより慎重に表現する必要があります。人の手による介入がなければ、AIが生成した翻訳は堅苦しい直訳になり、ターゲットの読み手にとって分かりづらい内容になってしまう可能性があります。
例えば、日本人のビジネスコミュニケーションでは、しばしば主語を省略し、受動態や間接的なフレーズ、文化的背景から繊細な表現が多く用いられます。AIがこれらの表現を常に正しく読み取ることができるとは限りません。
日本語では自然に聞こえる表現でも、英語では曖昧で不自然な印象を与える可能性があります。たとえそれが「正しい」翻訳だったとしても。

4. コピーライティングやブランディング

マーケティング媒体やウェブサイト、プレスリリースは、ブランドのメッセージや信頼性を保ちつつ、同時にターゲットである読み手の関心を引くものでなくてはなりません。
Metaphrasis Language & Cultural Solutionsに示されているように、マーケティングコンテンツに説得力を持たせるための文化的で曖昧な表現や情緒的な訴えを、AIは理解できない可能性があります。その結果、潜在的な顧客に対して効果がなく、場合によっては不快に感じられる内容につながってしまいます。

5. 機密情報

AI翻訳ツールは、重大なセキュリティリスクを引き起こす可能性があります。AIプラットフォームに入力された機密性の高い業務情報は、保存や再利用、漏洩される恐れがあり、情報漏洩のリスクが発生します。
例えば、2023年にサムスン社の従業員が不注意からChatGPTに機密情報を入力し、会社の機密データを漏洩してしまいました。その結果、同社は知的財産の保護を目的としてAIツールの使用を禁じました(TechCrunch, 2023)。
また、主要銀行およびテクノロジー企業は、機密情報漏洩の懸念があるとして、自社の従業員にChatGPTの使用制限を課しました(Semafor, 2023)。
翻訳者はAIが担保できない守秘義務と責任を提供できます。

最後に

生成AIによる翻訳は様々なシチュエーションで役に立つツールです。しかし、万能のソリューションではありません。

特に定型業務や大量のデータに対してスピードと利便性を発揮する一方で、財務報告書やIR、文化的背景やニュアンスを含むメッセージなど、人間の見解が必要となるケースもあります。

使い方次第でAI翻訳の有効性が変わることを覚えておいてください。

明快でしっかりした構成の入力や、念入りに作り込まれたプロンプトによって結果は改善しますが、それでもAIのニュアンスや文脈を読み取る力には限界があります。

AIの有効性を高めることができるケースと、海外とのコミュニケーションにおいて正確さや明瞭さ、信頼性を保つために人間によるチェックが必要となるケースを理解することが重要です。