日本語の文章を直訳の英語で表現するのが容易ではない最大の理由

重要なポイントを説明するために、日本語では昔から「起承転結」のストーリーによる文章構造が用いられています。一方、英語では読者がまず初めに本題を期待していて、特にグローバルなIRコミュニケーションではこの傾向が顕著になります。プレスリリースや事業レポート、ブログ記事など、どのような媒体であっても、逆ピラミッド(逆三角形▽)の構造を活用することで伝えたい内容を効果的に表現し、読者の興味を素早く惹きつけることができます。

逆ピラミッド構造とは?

逆ピラミッドの法則では、重要度の高い情報から順に表していきます。こちらのサイト(Purdue Online Writing Lab)では、逆ピラミッド構造は「マスメディアで長期に渡り最も広く用いられている手法の一つ」で、電報で送信エラーが発生して途中までしか送れなくても、重要な情報だけは伝えられるように生み出された手法と紹介されています。 以下のイメージ図のように、最も重要な情報を初めに持ってきて、次に補完的な内容を詳しく記載し、最後に参考情報で締めるという構造になっています。

もう少し細かく見ていきましょう。

  • 最も重要な情報を初めに
    要点または重要なメッセージで始めます。これはいわゆる「5W1H」(Who、What、When、Where、Why、How)です。
  • 次に補完的な内容を詳しく
    具体的な例や説明、二次的情報などの内容を補完します。
  • 最後に参考情報で締める
    さらに詳しく知りたい読者に向けて、重要度の低い内容や背景情報を記載します。

逆ピラミッド構造の活用によるメリット

最大のメリットは、本題や重要な情報を読者に素早く伝えられることです。

業務やワークフローを管理するためのソリューションを提供しているProcess Street社が投稿したブログ記事(https://www.process.st/inverted-pyramid/)では、情報の流れが速い現代においてユーザーの集中力が低下していることに触れています。この問題に対して、逆ピラミッド構造を用いることにより、グローバルな読者が「本当に知りたい」情報を素早く提供できると紹介しています。

逆ピラミッド構造を日本語の文章と比較したらどうなるか?

ビジネス英語の文章では逆ピラミッド構造は有効で、読者(多忙な投資家やステークホルダー)にまず本題を伝えます。

では反対に、「起承転結」の例を見てみましょう。各社がそれぞれの基準を元に異なる方針に従って記載していますが、日本語の文章には「起承転結」のコンセプトが共通のテーマとして存在しています。この記載スタイルは、起(導入)、承(発展)、転(変化)、結(終結)の4つの部分で構成されています。

例えば、日本語の決算報告書や決算短信に共通して見られる次のような構文があります:

原文の日本語の構造を維持したまま英訳すると、本題(売上が過去最高を記録したこと)は最後に記載されてしまいます。また、日本語の原文は非常に複雑で分かりづらい構造のため、本題から注意が反れてしまいます。

では、先ほどの日本語を逆ピラミッド構造で英訳したらどうなるか見てみましょう。

違いに気付きましたか?
簡潔で明快な文章になっているため、多忙な読者でもざっと目を通すだけで本題を把握できます。

構造構成適した媒体メリットデメリット
逆ピラミッド・最も重要な情報を初めに
・次に補完的な内容や参考情報
ニュース記事、プレスリリース、ビジネス最新情報・素早く注意を惹くことができる
・目を通すだけで本題を把握できる
・後半を削って編集しやすい
突然に締め括る印象を与えたり、内容が浅くなる可能性がある
起承転結4つの部分:起(導入)、承(発展)、転(変化)、結(終結)
導入、本文および補完的な内容、結論
ビジネス提案、方針説明、日本語での公式文書、学術論文、 意見記事、徹底分析・長年に渡り培われてきた表現やテーマなど、日本人に文化的に共感を得やすい論理フローにより、説得力を高めることができる
・徹底した調査結果を記載することにより、説得力を与えられる
・西洋の文体に慣れた読者には、間接的な印象を与える可能性がある
・長文になりやすいため、熟読しないと重要な情報をすぐに見つけられない

Process Street社は、読みやすさの向上やSEO、アクセシビリティなど、ビジネス文書で逆ピラミッド構造を活用することによる、さらなるメリットについても紹介しています。

最後に

逆ピラミッド構造は、明快で影響力のあるビジネスコミュニケーションにとっての鍵となります。
今日から活用を始めることで読者にアピールし、あなたの伝えたいメッセージを見落とされないようにしましょう!



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Mia Omatsuzawa 大松澤実絵

Chief Executive Officer (CEO)One World Link Inc.
英語のコミュニケーションにお悩みの方、私にご相談ください。真のコミュニケーションを、心と心のコミュニケーションの実現をご提供いたします。 担当記事:主に英語のコミュニケーション、ライティングについての記事を担当。また、価値あるグローバルな情報をいち早く日本語で皆様にお届けいたします。      mia@oneworldlink.jp  Facebook(Mia Omatsuzawa) 

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