日本語レポートの英語表記、本当に正しいですか?

(English blog: Are You Using Incorrect English in Japanese Design? | One World Link)

日本語の報告書デザインの中で英語を使用していますか。

ブランディングやグローバル対応、または開示資料全体での一貫性を目的として英語を取り入れるケースが増えています。しかし、最終的なレイアウトを確定する前に、必ずネイティブの英語話者による確認を行うことが重要です。

この確認がないままデザインを進めてしまうと、レイアウトに組み込まれた英語表記に問題が潜んでいることが多く、翻訳段階になって初めて課題が表面化することがあります。その時点でデザインを修正しようとすると、大幅な変更が必要になる場合があり、日本語版と英語版のどちらにも影響が及ぶ可能性があります。

課題が発生するポイントはさまざまで、カタカナ英語、短い英語ラベル、英語ベースの見出し、タグライン、その他のコピー表現など、多岐にわたります。以下では、IR・ESG関連の日本語報告書で特によく見られる代表的な例をいくつか紹介します。

カタカナ英語

日本語の報告書で使用される英語表現の多くは、カタカナ語や日本語の文脈では自然に機能する略語が元になっています。しかし、これらの表現は英語として見ると明確さを欠くことがあり、誤解を生む場合もあります。よく見られる例として、次のようなものがあります。

  • テーマ

Theme と訳されることが多い言葉ですが、文脈によっては適切ではありません。topics、discussion points、focus areas など、内容に合わせた訳語を検討する必要があります。

  • インプット・アウトプット(または類似の見出し)

Input や Output が適切な場面もありますが、文脈によっては複数形が求められます。日本語のカタカナ語はそもそも単複の概念を持たないため、そのまま訳すと意図が伝わりにくくなる可能性があります。場面に応じて、singular と plural のどちらが必要なのか判断しながら翻訳することが重要です。

  • トップメッセージ

日本語レポートで頻繁に見かける見出しですが、Top Message は米国のコーポレートコミュニケーションでは一般的ではありません。Message From the CEO や CEO Message など、より自然な選択肢があります。

これらの訳語は必ずしも誤訳というわけではありませんが、英語として見ると幼稚、直訳的、あるいは「日本語の構造をそのまま英語に置き換えた表現」に見えることがあります。さらに、こうした英語が背景デザインやグラフィックの中に組み込まれている場合、翻訳段階で問題が見つかっても簡単に修正できません。

デザイン段階の早いタイミングで、ネイティブの英語話者や信頼できる翻訳会社に確認することが非常に重要です。

タイポグラフィ

日本語レポートの中で英語を使用する際は、タイポグラフィにも注意が必要です。日本語用に最適化されたフォントは、英語の文字間隔(kerning)や文字の形状に必ずしも対応していません。英語に適したフォントを選ぶことで、英語表記が日本語版・英語版のどちらでも整った印象になり、文字間隔の不自然さやレイアウト上の不一致を防ぐことができます。

下の例では、同じフレーズを4種類のフォントで表示しています。右側には Georgia と Arial(英語向けフォント)、左側には 游ゴシック と メイリオ(日本語向けフォント)を使用しています。

日本語向けフォントでは、文字一つひとつの間隔がわずかに広くなっていることが分かります。この文字間隔が kerning(カーニング) です。英語では、この間隔が引き締まりバランスよく整っているほど、洗練された印象になります。

また、日本語フォントは漢字や仮名の縦方向の特徴に対応するため、英語フォントよりも広めの leading(行間) が設定されています。そのため、日本語フォントで英語の段落を組むと、行間が広くなりすぎて間延びしたレイアウトになってしまうことがあります。

英語向けフォントについて詳しく知りたい方は、こちらのブログをご覧ください
日本語向けフォントについては、こちらをご参照ください。

まとめ

日本語の報告書の中で英語を使用することは、グローバルな印象を高めるうえで効果的です。ただし、その英語が正確で自然であり、タイポグラフィの観点からも適切に整えられていることが前提となります。直訳的な英語やフォーマットが不適切な英語は、翻訳段階で修正が必要になることが多く、日本語版のレイアウトが英語の仕様を考慮していない場合、対応が難しくなることがあります。

英語を使う前提でレイアウトや構成を検討すると、日本語版・英語版の双方の完成度が高まります。明確で一貫した英語は、投資家の理解を促し、IRコミュニケーションに求められるプロフェッショナリズムを示すことにつながります。

One World Link では、日本語レイアウトに組み込まれた英語のチェックから翻訳前の事前確認まで幅広くサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。

英語をより自然に見せるための簡単な方法の一つ

(English blog: One Easy Way to Make Your English Writing Appear More Natural | One World Link)

日本語のリストや同じ階層に並ぶ項目をそのまま英訳すると、英語で重要な要素である「パラレル構造(parallel structure)」が抜け落ちてしまうことがあります。

パラレル構造とは、リストや同じグループ内の項目を、文法や表現の形式をそろえて示すことを指します。直訳では日本語の構造をそのまま反映してしまいがちですが、英語でパラレル構造が欠けると、読みにくさや違和感につながります。

質の高い英語は、正確さだけでなく構造の分かりやすさにも支えられています。構成が明確で一貫していると、読み手は重要なポイントをスムーズに理解でき、海外の読者にも迷いなく情報が伝わります。

非パラレル構造

OWLでは、日本語の報告書でパラレル構造になっていないリストや語句の並びをよく目にします。動詞、名詞、動名詞(ing形)、その他さまざまな品詞が一つのリストに混在するケースが多く、日本語では文脈から意味を推測できるため問題になりにくい表現です。しかし、英語では同じ読み方ができません。

構造に統一性がないまま提示すると、英語では不均一に見え、読みづらさが生まれます。特に、明確さと一貫性が求められるIR文書においては、読者の理解を妨げ、コミュニケーション上の問題につながる可能性があります。

以下の日本語の例をご覧ください。

このリストをどのように訳しますか。直訳すると、パラレル構造ではない次のような英語になるかもしれません。

項目③をご覧ください。最初の二つの項目とは異なり、environmentally friendly activities には動詞が含まれていません。この動詞の欠落は、英語の読者にとって違和感があり、企業がこれらの活動に対して「どのような行動を取るつもりなのか」が読み取れなくなってしまいます。

環境に配慮した活動に「取り組む」予定なのか。
それとも活動への参加を「増やす」予定なのか。
新たに活動を「開始」するのか。
現在の取り組みを「継続」するのか。

読み手は目的を推測しなければならなくなり、意図が正確に伝わりません。

パラレル構造を整えることで、読み手は内容をスムーズに追うことができ、誤解を防ぎ、重点項目が明確になります。また、文章全体に一貫性と洗練さが生まれ、信頼性の高いコミュニケーションにつながります。

同じ階層に並ぶ項目

同じ階層に並ぶ表現は、必ずしもリストとしてまとめられているとは限りません。
その一例が「マテリアリティ」です。マテリアリティは、サステナビリティレポート、ESG開示、IR資料など、さまざまな報告書で広く用いられる要素となっています。

各マテリアリティをレイアウトする際は、リスト形式でなくても、同じ階層に並ぶ項目は同じ時制・同じ文法構造で統一することが重要です。報告書内の複数のセクションで登場する場合でも、一貫した形式を保つことで読者にとって理解しやすい表現になります。

次のマテリアリティを見てみましょう。

パラレル構造になっているでしょうか。
それとも、動詞、名詞句、動名詞が混在している箇所を確認できますか。
もし混在が見られる場合、どのように修正できるでしょうか。

このマテリアリティの並びがパラレル構造になっていないと感じたのであれば、正解です。

では、どのように修正するのが最も効果的でしょうか。

対応方法として、次の三つが挙げられます。

  1. 動詞や動名詞(“-ing” で終わる形)をすべて名詞句に統一する
  2. 名詞句や動名詞をすべて動詞フレーズに統一する
  3. 名詞句と動詞フレーズをすべて動名詞に統一する

次に、編集後のマテリアリティ内容を見てみましょう。

このグループの各項目はパラレル構造になっているでしょうか。
正解は「はい」です。

今回の修正では、すべての表現を “–ing” で終わる形(動名詞)に統一しました。
ただし、どの形式にそろえるべきかは一概に決まっているわけではありません。plain verb(動詞の原形)、“-ing” verbs(動名詞)、あるいは名詞句のいずれを選ぶかは、文書全体のスタイルや文脈、そして読みやすさとのバランス によって変わります。

まとめ

直訳では、英語で重要となる構造上のサインを見落としてしまうことがあります。英訳時にパラレル構造を意識することで、誤解を防ぎ、日本語の意図をより正確に伝えることができます。

同じ階層に並ぶ表現や複数の要素を示す際にパラレル構造を整えることで、文章に一貫性と洗練された印象が生まれます。明確な構成は海外投資家の理解を助け、信頼性や透明性の向上にもつながります。

英文の一貫性づくりでお困りの場合は、ぜひ One World Link にご相談ください。

なぜ統一したテーマ設定が統合報告書のメッセージ性を高めるのか

(English blog: Why Using a Consistent Theme for Integrated Reports Strengthens Your Global Message | One World Link)

統合報告書やサステナビリティレポートは、企業のストーリーをグローバルな読者に伝える重要な役割を担います。これらの文書は、戦略、目的、進捗を国内外のステークホルダーに示すものであり、各セクションが企業が伝えたい全体像を形作る一部となります。読者がどのようなストーリーを受け取るかを決める鍵となるのが、報告書全体を導く「テーマ(全体メッセージ)」です。

テーマは、表紙に載せるキャッチコピーではありません。企業の価値観やフィロソフィー、そして報告書全体で伝えたいメッセージを支える役割を持つ必要があります。

もしセクションごとにテーマが変わってしまうと、読者は企業が示す方向性を理解しづらくなります。統一したテーマを設定することにより、報告書全体の一貫性が保たれ、読み手は冒頭から最後まで明確なメッセージを追いやすくなります。

統一したテーマは読みやすさを高めるだけでなく、企業の信頼性向上にもつながります。投資家は企業から明確なメッセージを求めており、強いテーマ設定は、組織としての意図や方向性が確立されていることを示すことができます。

セクション全体でテーマを統一する重要性

統合報告書に掲載される見出しを例に見てみましょう。

表紙
Innovation for Growth

CEOメッセージ
Creating Stakeholder Value

ESGセクション
Building a Sustainable Future

これらの見出しを見ると、読者は各セクションがまったく異なる概念を扱っているように感じる可能性があります。いずれも重要なポイントを示していますが、焦点がばらつくことで読者の注意が分散し、報告書全体が断片的に見えてしまいます。

次に、「Innovative Growth(革新的な成長)」という一つのテーマで統一した例を示します。

表紙
Innovation for Growth

CEOメッセージ
Innovative Growth Builds Shareholder Value

ESGセクション
Innovative Growth Leads to a Sustainable Future

このように見出しを修正すると、各メッセージが一つのテーマにつながり、セクション間で一貫性が生まれます。また、企業が革新的な成長に真剣に取り組んでいるという印象を強めることができます。

各セクションが同じ核となる考え方を展開していると、報告書全体に意図性が生まれます。テーマが戦略ストーリーを支え、リーダーシップメッセージ、ESG施策、長期的な価値創造がどのようにつながっているのかが、読者にとってより明確になります。

テーマ設定が統合報告書に不可欠である理由

Storyraise Technology Inc. が運営する Storyraise の記事では、統合報告書にテーマを設定する重要性について、多くの理由が紹介されています。特に、テーマを設定することで得られる主なメリットとして、以下の点が挙げられています。

テーマは…

  • ストーリー性のある報告を可能にする
  • 企業のブランドをより人間的に見せる
  • インパクトのあるメッセージを届けやすくする
  • 書き手と読み手の両方が内容の軸を見失わずに済む
  • ブランドの方向性を再確認する機会を生む
  • 過年度の報告書との差別化につながる

記事の中では、テーマがない場合の問題点についても触れられており、
「テーマがなければ、読者はストーリーを読んでいる感覚を持てません。まるで教科書や退屈な財務報告書を読んでいると感じてしまいます。」
と指摘されています。

まとめ

強いIR・ESGレポートには、明確なテーマ設定が欠かせません。各セクションが一つの考え方に基づいて構成されていると、文章全体のメッセージがより深く読者に伝わり、企業のグローバルメッセージもより一貫したものになります。

One World Link では、テーマ構成の整理、日本語と英語のメッセージの整合性確保、読みやすさの向上など、統合報告書およびESG関連資料の質を高めるお手伝いをしています。
無料の英語翻訳品質診断レポートもご利用いただけます。
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縦組みデザインは英語レポートの読みやすさを損なう理由

(English blog: Why Vertical Japanese Text Design Ruins English Reports | One World Link)

日本語と英語が、まったく異なる言語だということに異論を挟む人はいません。「語順が逆に見える」「読み進める方向が違う」など、両者は正反対と言ってもいいほどです。

英語は、日本語よりも文章量が約2倍になることをご存じでしょうか。グラフのラベル、見出し、デザイン要素など、限られたスペースに英語を押し込むのは至難の業で、翻訳者が工夫を凝らす場面も多くあります。

しかし今回取り上げたいのは、その中でも特に大きな問題を引き起こす「縦組み」の英語表記です。

縦組みは英語読者にとって悪夢

縦組みは日本語のデザインでは日常的に使われますが、英語では全く別の話になります。混乱のもとになり、読者に強いストレスを与えます。理由は次のとおりです。

• 読みの流れを妨げる:
英語の読者は、左から右、上から下へと情報を処理します。縦組みはその流れを強制的に止め、首を傾けたり、読み方を考えたりする必要が出てきます。慣れていない読者は、その箇所を読み飛ばすことさえあります。

• 誤読のリスクが高い:
財務情報、マニュアル、技術文書など、複雑な文書では特に問題になります。英語読者は左から右への流れを前提に情報を解釈するため、縦組みのラベルや配置によって「どのデータを指すのか」「これは見出しなのか、補足情報なのか」がわかりにくくなります。

仮の統合報告書をもとに作成した例をご覧ください。
図1

このように縦組みを多用すると、英語読者はレポートを読むために、ほとんど首をひねらざるを得ません。

(実話ですが、私は以前、縦組みの見出しだらけの80ページの統合報告書を編集したことがあります。80ページすべてがこの形式だったことを想像してみてください。)

Journal of Vision に掲載された研究では、縦組みのテキストを読む速度が横書きと比べて大幅に低下することが示されています。(Journal of Vision)

数カ所の縦組みであれば、読者は多少無理をして読もうとするかもしれません。しかし、80ページ丸ごと縦組みとなると話は別です。読者は「ここまで読みにくい資料なら読む価値はない」と判断する可能性があります。

海外投資家を含む読者は、スムーズに読み進められる資料を求めています。縦組みの英語表記は理解の速度を落とし、資料への信頼感を損ねる要因になります。

縦組みを避けられない場合

もちろん、縦組みを完全に避けられない場面もあります。

多くの場合、英語版の作成段階に入る頃には、デザインがすでに確定しており、大幅なレイアウト変更が難しいケースもあります。

では、どうすればよいのでしょうか。
図2 をご覧ください。

図を見ると、Our Purpose がページの外側を向いています。
英語は上から下へ読むため、「英語の縦組みはこの向きが正しい」と感じる方もいるかもしれません。

しかしご存じのとおり、英語には「例外」がつきものです。

もし Our Purpose に下線を引いた場合、その線は空白部分の方向へ向いてしまい、本来見出しが指し示すべき本文とは逆側に傾きます。これでは、見出しの下に内容が続くようには見えず、読者は関連する文章が存在しないと誤解する可能性があります。

このような場合、見出しが必ず本文側を向くように、テキストを時計回りまたは反時計回りに回転させるのが最適です。すべての見出しが同じ方向を向かなくても構いません。読者が自然に内容へと視線を誘導できることが最も重要です。

では、図1 をもう一度見てみましょう。

図1(修正版)

修正版の見出しは下から上へ読む形式となり、他の見出しとは向きが異なりますが、見出しが正しい情報に向かっているという点が最も重要です。

Adobe InDesign や Microsoft Word などのツールには、縦書きテキストをより適切に配置するための機能があります。レイアウト全体を作り直さなくても、こうした機能を使うことで調整が可能です。

また、場合によってはスペースを少し広げて横書きに変更する方法もありますが、これは使用できるスペースに大きく左右されます。

図2(修正版)

この方法を選ぶ場合は、単語が複数行にまたがらない形で配置できるときに限り検討してください。

図3

まとめ

避けられるデザイン上の問題で読者を失わないようにしましょう。
英語版のレポートは、グローバル投資家にとって御社との最初の接点になることがあります。ラベルや見出しが読みにくい、不要に感じる、または不自然だと、読者は読み続ける意欲を失い、企業理解が進まなくなる可能性があります。

縦組みを避ける、または配置を工夫することは、単なるデザイン判断ではありません。信頼を築くための重要な要素です。
IR担当者にとって、資料が海外読者にとって読みやすい仕様になっているかどうかは欠かせないポイントです。縦組みの英語表記がある場合は、可能な範囲で見直し、適切な調整を行うことが大切です。

レポートを提出する前に、次の点を確認してください。

• 読みの流れを妨げる縦組みがないか
• 縦組みの見出しが適切に配置されているか
• 見出しを本文側に向けるなど、回転して改善できる箇所がないか

また可能であれば、早い段階からデザイン担当者と連携し、日本語と英語の双方に配慮したレイアウトを検討しましょう。早めのすり合わせが、大きな修正や後々の負担を減らします。

何を書くかだけでは伝わらない:「どう書くか」が重要

(English blog: Writing Is More Than ‘What’ You Say | One World Link)

投資家向け広報やグローバルコミュニケーションの現場では、「何を伝えるか」ばかりに意識が向き、情報を「どのように伝えるか」を見落としがちです。明確でプロフェッショナルな英語を書くためには、内容そのものだけでなく、情報の示し方が重要です。英語テキストの構成やレイアウトは、読者がメッセージを理解しやすいかどうかに大きく影響します。

プロのビジネスライティングでは、情報を整理し、わかりやすいセクションに分けて提示する手法をよく用います。海外の読者にとって、長い文章の塊は負担が大きく、内容を追いにくくなります。投資家向けプレゼンテーション、株主向けメッセージ、統合報告書など、どのような文書でも、段落が密集していると読み手の集中力が途切れ、重要な点が伝わりにくくなります。

読みやすく、理解しやすい文書にするために、箇条書きや番号付きリストを活用することをお勧めします。これらのツールは、要点を簡潔に示し、読み手が内容を整理しながら読み進められるように導きます。グローバル向けの企業コミュニケーションを担う方にとって、欠かせないスキルです。

箇条書きが有効な理由

海外読者は、簡潔で整理された情報を好みます。

英語圏のビジネス読者は、限られた時間の中で効率よく情報を把握するため、文章を流し読みする傾向があります。読み手は、重要な情報を素早く、明確に確認したいと考えています。

箇条書きや番号付きリストを使うと、情報量が多い内容でも、構造化され読みやすい形に変わります。読みやすさが向上するだけでなく、文章全体がよりプロフェッショナルに見え、海外のステークホルダーに複雑な内容をわかりやすく伝えられます。

主なメリットは次のとおりです。

• 視認性の向上:文章を箇条書きで区切ると余白が生まれ、読みやすさが高まります。
• 情報を素早く把握:段落を読まなくても要点をすぐに確認できます。
• 理解しやすい構成:複雑な内容でも、整理された形で簡単に追えるようになります。

非ネイティブにとっても、箇条書きは書き手の負担を軽減し、誤解を防ぎながら明確なメッセージを伝えるのに役立ちます。

次の例をご覧ください。

Our company adheres to multiple standards and recommendations, including the Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD) guidelines, the Global Reporting Initiative (GRI) standards, the United Nations Sustainable Development Goals (SDGs), the International Integrated Reporting Framework (IIRF), and the recommendations of the Sustainability Accounting Standards Board (SASB).

VS

Our company adheres to the following standards and recommendations:
• Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD)
• Global Reporting Initiative (GRI)
• United Nations Sustainable Development Goals (SDGs)
• International Integrated Reporting Framework (IIRF)
• Sustainability Accounting Standards Board (SASB)

このように、箇条書きを使うだけで、情報の理解が大幅に容易になります。

箇条書きと番号付きリストの使い分け

箇条書きは、項目の順序が重要でない場合に適しています。Ho(2023)の研究では、箇条書きが読み手の負担を軽減し、情報を素早く吸収できるようにする効果が示されています。例えば次の場面で有効です。

• 長いリストを細分化して示したいとき
• 主なポイントをまとめたいとき
• 重要な情報を強調したいとき

一方、番号付きリストは、順序や優先度が重要な場合に向いています。次のような内容で効果を発揮します。

• ステップ形式の説明
• 優先順位のあるタスク
• 時系列で示すイベントやプロセス


注意点

Clearly Scientific Ltd. の記事では、箇条書きを使う際のポイントが整理されています。特に押さえておきたい点は次のとおりです。

• 箇条書きの項目数を7つ以内にする
• テキストをできるだけ短く保つ
• 文章構造を統一する

長くて読みにくい文章をそのまま箇条書きに移しても、読みやすさは向上しません。箇条書きや番号付きリストの目的は、情報を「短く、わかりやすい単位」に分解することです。項目が多すぎると、読み手にとって逆に負担になります。

一貫性も重要です。英語では、動詞で始まる項目と名詞で始まる項目が混在すると不自然に見えます。多くの項目が動詞で始まるなら、他の項目も同じ形式に揃える必要があります。また、リスト内の項目の長さが大きく異なると読みづらく、記事でも次のように指摘されています。

「短い文章と長い文章が混在すると読み手の注意がそれやすく、各項目の重要度について誤った印象を与える可能性があります。」

英語文書をもっと伝わる形にするために

次に英語のコーポレートコミュニケーション文書を作成するときは、海外の読者が重視する「明確さ」と「構造」を意識してください。長い段落を区切り、必要に応じて箇条書きや番号付きリストを使い、読み手が要点を素早く確認できる形に整えましょう。

これらの手法は、日本語では同じように適用できない場合もありますが、英語のビジネスコミュニケーションでは非常に効果的です。次回のIR文書やステークホルダー向けメッセージで、ぜひ取り入れてみてください。

読み手に、よりわかりやすく整理された情報を届けられるようになります。

生成AI翻訳の品質は今どうなっているか?

(English blog: August 2025 Update on Generative AI Translation Quality | One World Link)

多くの企業でDX推進の一環として、コスト削減や業務効率化を目的に生成AIを導入されているかと思います。DeepL、ChatGPT、Geminiなどを使って、日本語から英語への翻訳に生成AIを活用されている企業も多いことと思います。

では、2025年夏時点における生成AIによる日英翻訳の現状はどうなっているのでしょうか?

我々OWLの翻訳チームは、生成AIや機械翻訳の活用にかなり精通しております。最近、翻訳品質において、見逃せない特徴や傾向がいくつか見られるようになってきました。本ブログでは、実際に私たちが遭遇した生成AI・機械翻訳による翻訳の不自然な例や問題点をいくつかご紹介していきたいと思います。すべての例は、実際のスクリーンショットに基づいており、特にIRやコーポレートコミュニケーションで生成AIを使用する際に注意すべきポイントを明らかにします。

ポイント1:シンプルな部分こそ見逃さない

図1〜図3は、「ESG」という略語がレイアウトの都合で3行に分かれていたため、機械翻訳ツールがそれぞれを「E」「sadist」「g」と訳した例です。「S」が「sadist(サディスト)」を意味するとは、当然どの翻訳者も思わないでしょうが、それでもこの結果は見過ごせません。 大文字・小文字の不統一や、単なるアルファベットが突然単語として訳されてしまう現象は、ちょっとしたフォーマットの違いで生成AIの出力が大きく崩れることを示しています。短い語句やシンプルな内容ほど安心しがちですが、AIが正しく処理できるとは限りません。こうした箇所こそ、一貫性を持って丁寧にチェックすることが重要です。

図4〜図6は、機械翻訳でよく見られる別の問題、「辞書的な出力」の例です。
これらの翻訳は、技術的に「誤訳」ではないものの、過剰な説明、かっこ書き、冗長な定義が含まれており、ビジネス文書としては不適切な表現になっています。さらに、今回のケースでは、そもそも翻訳された意味が文脈と合っていませんでした。正しい訳語は以下の通りです。

  • 支える → Support
  • なし → N/a
  • ときめっく → TTOKIMEKKU

補足:元の日本語では「ときめっく」は施設名として使用されていた固有名詞でした。
生成AIは、固有名詞、定訳、業界特有の用語を正しく処理するのが苦手な傾向があります。特に公式文書においては、こうした用語がどのように扱われているかを必ず確認することが重要です。

図7では、「URL」が「uniform resource locator」と訳されていますが、これは英語ではほとんど使われない表記です。
「URL」という表現が一般的であり、わざわざ正式名称を綴る必要はありません。

図8については、残念ながら説明の必要すらありません。「Polisy」は、「policy」の完全な綴りミスであります。

ポイント2:数値は必ず二重・三重に確認する

生成AIが数値を完全に誤ることもあります。さらなる事例については、こちらのブログをご覧ください。(日本語:こちら 英語:こちら)

図9および図10では、数値そのものは正しいにもかかわらず、翻訳ツールが同じ数値を4〜8回繰り返して出力している例が確認できます。数値が正確でも、このような繰り返しは誤りであり、文書全体の信頼性に影響を与える可能性があります。数値の出力は、必ず細かく確認するようにしましょう

図11および図12では、さらに重大な誤訳が見られます。「¥」が「$20」と訳されていたり、「万人」が「million people(100万人)」と誤って訳出されています。

これらの誤りは、単体で見ればすぐに気づくレベルですが、長文の財務資料の中に埋もれていると見落とされる可能性があります。特に、英語部分だけを文法や表現の自然さの観点からチェックしている場合は、数値や単位の誤りに気づきにくくなります。

図13は、単純な日付に対する不可解な翻訳の例です。
「20239Month」という表記からは、翻訳ツールが日本語の日付を構成要素ごとに個別に処理し、それをスペースなしで結合してしまったことがうかがえます。

この翻訳は、「month」の使い方も不自然であるうえ、英語として必要なスペースが完全に欠落しており、通常の英文書式とは大きく異なる非標準的な出力となっています。

ポイント3:明らかに不適切な単語の誤訳に注意する

図14および図15では、「お得(otoku)」が「オタク(otaku)」に、そして「共食」が「cannibalism(カニバリズム)」に誤訳されています。
この2つの例については、あえて説明するまでもなく、完全に誤っており、場合によっては非常に不適切な表現となり得ます。こうした誤訳が含まれてしまうと、文書全体の信頼性に関わる問題となる可能性があります。

これらの誤訳は、生成AIが不正確、または確認不足の公開翻訳データを学習してしまった結果である可能性があります。質の低い出力がそのまま再利用され、AIの訓練データに取り込まれていくことで、こうした誤りが以前よりも頻繁に見られるようになってきています。

図16では、多くのIR資料に共通して登場する用語「中期経営計画」が、「Midterm Corporate Strategy」と訳されています。
「中期経営計画」の標準的な英訳は 「medium-term management plan」 です。

まず第一に、「midterm」は複合形容詞として使う場合、ハイフンを入れて“mid-term”と表記すべきです。

そして、より重要なのは、この“Midterm Corporate Strategy”という表現が、特定企業が独自に使用している公式名称である可能性が高いという点です。
つまり、翻訳ツールがこの訳語を過去の公開情報から“学習”した可能性があるということになります。

OWLがこれまでに生成AIや機械翻訳を使用してきた中で、「中期経営計画」がデフォルトで“Midterm Corporate Strategy”と訳されたケースはこれまで一度もありません。
これは、生成AIが般的な定訳ではなく、企業固有の表現や公開資料上の訳語を取り込んで出力に反映させていることを示す例かもしれません。

このように、非標準の訳語が公開されたまま訂正されない場合、それがAIの学習データに取り込まれ、“正しい訳”として出力されてしまう可能性があります。
これはいわゆる「Garbage in, garbage out(質の低い入力からは質の低い出力しか得られない)」という典型的な問題であり、AIが不適切な入力を学習すればするほど、今後さらに誤訳が増えていくリスクがあることを意味しています。

→「中期」を“mid-term”と訳すのが不適切な理由は、当社ブログでご紹介しています。(こちら)

ポイント4:スペースの抜け漏れに注意する

図13では、日付の中でスペースが抜け落ちる例をご紹介しましたが、図17および図18では、文全体におけるスペースの抜けが見られます。
図17の例では、「price」と「and」の間にスペースがなく、図18では、数値(86)と単位(billion)の間のスペースが欠落しています。

一見すると小さなミスに見えるかもしれませんが、読みやすさに影響を与えるだけでなく、正式な文書としての印象を損ねる可能性があります。

また補足として、使用するスタイルガイドや文脈によって異なる場合はありますが、英語では10未満の数字は本文中ではスペルアウト(単語で表記)されるのが一般的です。
さらに、「3-year total」のようなハイフンでつながれた形容詞句は、通常「three-year」のようにスペルアウトして表記するのが適切とされています。

なぜこうした問題が起きるのか?

こうした翻訳品質のばらつきには、2つの要因があると私たちは考えています。
第一に、生成AIが過去に自ら出力した質の低い翻訳結果を、ユーザーが確認せずにそのまま受け入れたことにより、それを「正しい」と学習してしまっている可能性があります。
第二に、生成AIが公開されている翻訳例、いわゆる「野良翻訳」から学習すればするほど、質の低い翻訳(いわゆる“ガベージ”)が、正しい用例として取り込まれてしまうリスクが高まると考えられます。

このような傾向は、データ品質の専門家が警鐘を鳴らしている現象とも一致しています。Melissa社のスペシャルプロジェクト担当シニアディレクター、Robert Stanley氏は、2025年6月2日付のSD Timesの記事の中で次のように述べています。

「AIモデルを質の低いデータで訓練すれば、当然のように悪い結果を得ることになります。」


また、Stanley氏は、「データが正確で、完全で、補足情報がきちんと付加されていなければ、AIの出力結果は信頼できないものになる」とも強調しています。

つまり、「Garbage in, garbage out(質の低い入力からは質の低い出力しか得られない)」という原則は、いまだに強く当てはまるのです。

さらにStanley氏は、LLM(大規模言語モデル)はユーザーを満足させようとする性質があるため、「見た目には正しそうに見えるが、実際には誤りである回答を返すことがある」と警告しています。

[出典:SD Times, “Garbage in, garbage out: The importance of data quality when training AI models”(2025年6月2日)https://sdtimes.com/data/garbage-in-garbage-out-the-importance-of-data-quality-when-training-ai-models]

生成AIや機械翻訳ツールの翻訳品質に関する問題の背景には、学習データの質と出所が関係している可能性もあります。
Nature誌に掲載され、Financial Timesが報じた最近の研究では、過去のAIが生成したコンテンツ(=合成データ)を学習データとして使用した場合、AIモデルが「モデル崩壊(model collapse)」を起こすリスクがあると指摘されています。

こうしたモデルは、訓練を重ねるごとに自分自身の過去の誤りを強化してしまい、ゆがんだ出力や意味不明な出力につながる可能性があります。
翻訳の分野では、これにより不自然、誤訳、あるいは直訳的すぎる表現があたかも標準的な英語のように学習・出力されてしまうことが懸念されます。

[出典:Financial Times “Model collapse: how AI models trained on synthetic data can quickly degrade.”(2024年7月25日) ※Nature誌に掲載された研究に基づく報道 https://www.ft.com/content/ae507468-7f5b-440b-8512-aea81c6bf4a5]

まとめ

翻訳ツールは年々進化していますが、信頼性の面では依然として課題が多く残っています。特に、公開された不正確または一貫性に欠ける翻訳データから“学習”している場合には、そのリスクがさらに高まります。
こうした自己強化的な誤りが蓄積されることで、非標準的、または誤解を招くような訳語が“正しい表現”として定着してしまう恐れがあります。

一見些細な不一致であっても、数値の誤訳や不適切な単語の使用が含まれていれば、それだけで翻訳全体の品質や信頼性が損なわれる可能性があります。
このような時代だからこそ、翻訳結果のリスクを見逃さず、自然で明確かつプロフェッショナルな英語で伝えるための対策がこれまで以上に重要です。

翻訳の品質に不安がある場合や、第三者によるチェックが必要な場合は、OWLのネイティブ翻訳チームがサポートいたします。貴社の英語資料が正確で、投資家に伝わる内容になっているかどうか、ぜひお気軽にご相談ください。

あなたの英訳文と段落は長すぎませんか?

(English blog: Mastering Sentence and Paragraph Length | One World Link)

日本語のビジネス文書を英語に翻訳する際、最もよくある課題の一つが、文や段落の長さの調整です。日本語では、一つの文の中に複数の情報や条件、結論を含めることが一般的であり、文構造も複雑になりがちです。こうしたスタイルは日本語では自然ですが、そのまま英語に直訳してしまうと、読みづらく冗長な印象を与えてしまうことがあります。

特に、投資家向け広報(IR)において効果的な英語を用いるには、簡潔さが重要です。各国の政府が発行する可読性やアクセシビリティに関するガイドラインでも、文の長さやプレーン・イングリッシュ(わかりやすい英語)の使用が推奨されています。短く整理された文や段落は、読み手の関心を引き、理解を助けます。日本語から英語への翻訳では、文と段落の構成を見直すことが、グローバルなステークホルダーにメッセージを正しく届けるうえで不可欠です。

とはいえ、文や段落が短すぎると、内容が浅く感じられる可能性もあります。では、どのようにバランスを取ればよいのでしょうか。まずは、英文ビジネス文書における基本を押さえることから始めましょう。

OWLでは、英語への翻訳時には、1段落あたり34文、1文あたり平均20を目安とした構成を推奨しています。これは、投資家向けおよび企業向けの英文コミュニケーションにおいて、プレーン・イングリッシュ(わかりやすい英語)を採用することに基づいたものです。プレーン・イングリッシュとは、不必要な複雑さを避けた、明確で簡潔な表現のことを指します。読み手が内容を一度で理解できることを目的としており、特に開示資料や報告書など、海外のステークホルダー向けの資料では重要な書き方です。

このような基準は、米国証券取引委員会(SEC)によっても推奨されています。SECは、投資家保護と企業情報開示の透明性確保を目的とする機関であり、難解な金融文書に対する懸念を受けて、1998年に「Plain English Handbook(プレーン・イングリッシュ・ハンドブック)」を発行しました。このハンドブックでは、「可能な限り短い文を使うこと」が推奨されており、簡潔な文章は理解を助け、特に法務・財務文書における誤解のリスクを軽減するとしています。

出典:米国証券取引委員会(SEC『A Plain English Handbook: How to Create Clear SEC Disclosure Documents』(1998年)https://www.sec.gov/pdf/handbook.pdf

文の長さに変化をつけることも忘れずに。
短い文は重要なポイントを端的に伝え、長めの文は背景やニュアンスを補足する役割を果たします。これらをバランスよく組み合わせることで、読みやすくリズムのある文章になります。文章の流れに変化が生まれ、読み手の関心を引きつけると同時に、理解の助けにもなります。

例)

日本語 (一文)

長年にわたり蓄積してきた高度な技術と専門知識を活用するとともに、気候変動や資源不足、人口動態の変化といった社会課題に取り組みながら、イノベーションの促進、グローバルなパートナーシップの拡大、そして急速に変化する市場環境においてレジリエンスを確保するための堅実なガバナンス体制の維持を優先する長期経営ビジョンに沿った取り組みを実施することで、持続可能な成長を達成し、企業価値を向上させることを目指します。

英訳 (一文)

By leveraging our strengths in advanced technology and expertise accumulated over decades, while simultaneously addressing societal challenges such as climate change, resource scarcity, and demographic shifts, we aim to achieve sustainable growth and enhance corporate value by implementing initiatives aligned with our long-term management vision, which prioritizes fostering innovation, expanding global partnerships, and maintaining robust governance structures to ensure resilience in a rapidly evolving market environment. 

調整した英訳 (複数の文)

We leverage decades of expertise and advanced technology while addressing societal challenges including climate change, resource scarcity, and demographic shifts. Guided by our long-term management vision, we prioritize fostering innovation, expanding global partnerships, and maintaining robust governance. These initiatives aim to ensure resilience in a rapidly evolving market while achieving sustainable growth and enhancing corporate value.

Flesch-Kincaid(フレッシュ・キンケイド)可読性スコアとは?なぜ重要なのか?

Flesch-Kincaid Reading Ease スコアは、文章の読みやすさを評価するための強力なツールです。このスコアは、文の長さと語の長さを分析し、どれだけ簡単に内容が理解されるかを判断します。スコアが高いほど、読みやすさが高いことを意味します。

Microsoft WordFlesch-Kincaidスコアを確認する方法

  1. Wordファイルを開きます。
  2. ファイル」タブをクリックし、「オプション」を選択します。
  3. 言語」の項目で、英語の言語パックがインストールされており、校正ツールが有効になっていることを確認します。
  4. 文章校正」タブに移動し、「文書の読みやすさを評価する」にチェックを入れます。
  5. 校閲」タブから「スペルチェック」を実行すると、Flesch-Kincaidスコアが表示されます。

※ご使用のMicrosoft Wordのバージョンによっては、スペルチェックを完了した後に「インサイト(Insights)」を選択して、読みやすさスコアを確認する必要がある場合があります。

Flesch-Kincaidスコアが60〜70の文章は、会話調で読みやすいとされています。しかし、OWLでは、IRコミュニケーションにふさわしい専門性と読みやすさのバランスを保つために、日本語から英語への翻訳においては、Flesch-Kincaidスコア35〜40を推奨しています。このスコア帯であれば、文体に一定の洗練さを保ちながら、読み手にとって親しみやすい英語に仕上げることができます。

なお、英語で一から書く場合には、Flesch-Kincaidスコア50〜60が適しているとされています。

要点まとめ

  • Flesch-Kincaid可読性スコア:IR翻訳におけるプロフェッショナルな読みやすさを確保するには、3540を推奨
  • 平均文長1文あたり20を目安に、読みやすさと情報量のバランスを確保
  • 段落の長さ1段落につき34で、読み手にとって負担の少ない構成に

こうしたガイドラインを取り入れることで、英語開示文書が本来のニュアンスを損なうことなく、海外の投資家にも伝わる内容になります。

実践ガイド:まずはここから始めましょう

IRコミュニケーションの質を高める準備はできていますか?以下のステップから始めてみましょう。

  1. 自分の文章を分析する
     Microsoft WordのFlesch-Kincaidツールを使って、読みやすさスコアを確認しましょう。
  2. バランスを意識して編集する
     長すぎる文は短く分け、逆に短すぎる文はつなげて、読みやすく自然な流れに整えます。
  3. フィードバックを受ける
     英語に詳しい同僚に見てもらう、または英文校正ツールを活用して客観的なチェックを行いましょう。
  4. 改善の記録を取る
     可読性スコアを定期的に記録し、自身の改善状況を数値で把握しましょう。

一緒に、あなたのストーリーを世界へ

OWLは、IR担当チームの皆さまがタイムリーで伝わる英語開示を作成できるようサポートしています。私たちの専門知識により、貴社のストーリーを、正確かつ明確に世界の投資家へ届けることが可能になります。
IRコミュニケーションを次のレベルへと引き上げたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
私たちと一緒に、あなたのストーリーを世界へ伝えましょう。

貴社の英語の報告書は「読み込む人」と「流し読みする人」両方に伝わる内容になっていますか?

(English blog: Do You Create Reports for Both Types of Readers in the West? | One World Link)

英語圏の読者は、一般的に「詳細に読み込む人」と「流し読みする人」の2つのタイプに分けられます。読み込むタイプの読者は、文書全体を丁寧に読み進め、背景や文脈を重視します。一方で、流し読みタイプの読者は、見出しや小見出し、キャプションに目を通しながら、主要なポイントをすばやく把握しようとします。効果的な英文のビジネス文書を作成するためには、どちらの読者にも伝わるように工夫することが重要です。情報がすばやく得られるようにしつつ、内容の深さや説得力を損なわない構成が求められます。

あなたは、読み込むタイプですか?それとも流し読みするタイプですか?

それより重要なのは、自分が作成する文書がこの両方の読者を意識しているかどうかです。

変化の激しい今日の金融市場において、ステークホルダーは限られた時間の中で意思決定を行っています。株主やアナリストは、重要な数値やトレンド、業績のポイントが一目で把握できる報告書を求めています。投資家や機関投資家も、企業の戦略に対する信頼感を左右する情報を、財務資料の中から素早く見つけ出そうとしています。

明確で的確な見出しやキャプションは、読み込む読者にも、流し読みする読者にも効果的です。文書全体の理解を促進し、情報の伝わり方と説得力を大きく向上させます。

なぜ「伝わる」見出しとキャプションが重要なのか

これまでに、決算短信や投資家向けプレゼン資料、統合報告書を流し読みしながら、重要な財務データや経営戦略の要点を探した経験はありませんか?あなたの読み手も、まさに同じように情報を探しています。

次のような見出しを見たとき、どれだけの情報が伝わるでしょうか?

  • グループの取り組み
  • 2024年度の業績
  • 当社のビジョン

おそらく、ほとんど何も伝わらないのではないでしょうか。
こうした見出しでは、読み手の期待に応えることができず、興味を失わせてしまいます。

では、次のような見出しではどうでしょうか?

  • グループの重点施策
  • 2024年の収益成長
  • 持続可能な成長に向けた当社のビジョン

若干の情報が加わっていますが、それでもまだ抽象的です。
次の例をご覧ください。

  • カーボン排出削減に向けたグループの重点施策
  • 2024年の収益が20%成長
  • 再生可能エネルギー投資による持続的成長の実現

これらの見出しは、読み手の関心を引き、どのような内容が続くのかを明確に伝えています。

この後、さらに分かりやすい例をいくつか紹介します。

あいまいな見出しの例
 - 主要業績
 - 未来への取り組み
 - サステナビリティ活動

伝わる見出しの例
 - 2024年第4四半期の主要業績:純利益5億ドル、前年比12%増を記録
 - 2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
 - カーボン排出削減を目的とした太陽光発電設備の導入

見出しに具体的な情報を盛り込むだけで、読者の理解度と関心度が大きく変わります。

これはキャプションにも同じことが言えます。
キャプションは、図表やビジュアルの補足情報としてだけでなく、重要なメッセージを強調し、文脈を与える「速読ポイント」として機能します。


よく練られたキャプションは、投資家やアナリストが重要なポイントをすぐに把握する助けとなり、報告書やプレゼン資料全体の効果を高めます。

以下のキャプション例を見比べてみてください。どちらがより伝わると感じますか?

読みやすさと読者の関心を高めるためには、情報量のある見出しやキャプションを取り入れることが欠かせません。以下に、効果的な見出しとキャプションを作成するための基本的なポイントをご紹介します。

1. 内容を具体的に伝える
見出しは、そのセクションで何が述べられているかを読者に伝える役割を果たします。該当箇所の具体的な内容や数値などを含めることで、読者は必要な情報を素早く見つけやすくなります。
キャプションも同様に、読者の注意を引きつけ、資料への理解度を高める効果があります(出典:savvy-writer.com)。また、検索エンジンにも有効で、SEOとユーザビリティの両面でメリットがあります(出典:Seowind)。

2. キーワードを適切に使用する
見出しにキーワードを自然に組み込むことで、検索エンジンによるインデックスや順位付けに有利になります(savvy-writer.com)。SEO対策の観点からも、戦略的なキーワードの活用は不可欠です(Seowind)。

3. 明確かつ簡潔に表現する
専門用語や複雑な表現は避けましょう(出典:scribbr)。読み手が内容を瞬時に理解できるよう、明快で簡潔な言葉を使うことが大切です。

4. 目的や読者に合わせて構成する
報告書や提案資料など、文書の目的や読み手の立場に応じて、見出しの構成や表現を調整しましょう。たとえば、審査基準に沿った提案書であれば、それに対応した見出しを用いることで、読み手の理解と評価を助けます。

見出しやキャプションを確定する前に、次の点を確認してみてください:

  • この見出し(キャプション)は、内容を明確に伝えているか?
  • 流し読みする読者でも、要点を把握できるか?
  • この見出し(キャプション)は、全体のメッセージに価値を加えているか?

クイズに挑戦!

次のうち、最も情報量のある見出しはどれでしょう?理由も考えてみてください。

A)サステナビリティへの取り組み
B)FY2025 年度のカーボン排出量を33%削減する目標
C)サステナビリティへの取り組みの詳細
D)FY2025 年度の排出削減目標

次に、もっとも情報が伝わるキャプションはどれでしょう?その理由も考えてみてください。

A)拡張された工場の空撮
B)大阪の新製造拠点での開所初日の様子
C)4月の施設案内
D)エンジニアの会議風景

両方の設問で「B」を選んだ方、正解です!

「FY2025 年度のカーボン排出量を33%削減する目標」は、具体的な数値と年度を明記しており、内容が一目で伝わる見出しになっています。

「大阪の新製造拠点での開所初日の様子」は、写真の内容を明確かつ魅力的に伝えるキャプションであり、読み手に文脈を提供します。

最後に

明確で情報量のある見出しやキャプションは、単なるデザインの要素ではありません。効果的なコミュニケーションを実現するための基本要素です。データを提示する時も、ビジョンを伝える時も、報告書を作成する時も、見出しがストーリーを導き、読み手を引き込む力となります。

今知っておくべきESGキープレーヤー10選

(English blog: Meet 10 ESG Players You Need to Know | One World Link)

ESG(環境・社会・ガバナンス)をめぐる状況は急速に変化しており、日本企業もこの流れに乗り遅れるわけにはいきません。グローバル投資家による透明性の要求が高まる中、2025年4月から施行される「英文開示の同時提出義務化」も控え、主要なESGフレームワークを正しく理解することは、信頼性と競争力を維持する上で不可欠な要素となっています。

なぜ重要なのか

IR担当者には、自社の財務・非財務情報の開示が国際基準に適合していることを担保する責任があります。海外投資家は、ISSB、TCFD、GRIといった主要フレームワークに準拠した、明確で質の高いESG開示を期待しています。

開示内容に一貫性がなかったり、期待を下回る内容であったりすると、投資家の信頼を損ね、企業価値にも影響を及ぼしかねません。ESGに関する基準や動向を正しく理解することで、変化する規制に的確に対応し、投資家との信頼関係を強化し、持続可能な経営をリードする企業としてのポジションを確立することができます。

以下は、世界の上場企業に対するESG開示のルール策定に関与している主要な国際組織の一部です。

1. 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)
https://www.ifrs.org/groups/international-sustainability-standards-board/

  • 役割:サステナビリティ報告の国際的な共通基盤を策定
  • 主な基準:ISSBは「IFRSサステナビリティ開示基準(S1およびS2)」を発行。2024年から適用が開始され、気候関連およびサステナビリティ関連の開示内容の一貫性確保を目的としています。

2. グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI
https://www.globalreporting.org/

  • 役割:世界で最も広く使用されているサステナビリティ報告フレームワークを提供
  • 主な基準:GRIスタンダードは、経済・環境・社会の影響に関する開示を網羅しており、企業がESG全体のパフォーマンスを包括的に報告することを支援します。

3. サステナビリティ会計基準審議会(SASB
https://sasb.ifrs.org/

  • 役割:業種別のサステナビリティ開示基準を策定
  • 主な基準:SASBスタンダードは、各業界における財務的に重要なESG課題を特定しています。
  • 統合状況:SASBはバリュー・レポーティング財団(VRF)の一部として、2022年にISSBへ統合されました。

4. 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD
https://www.fsb-tcfd.org/
(※2023年10月12日をもって解散。現在はIFRS財団のISSBが監督を継承)

  • 役割:気候変動に関連する財務情報開示のフレームワークを提供
  • 主な基準:TCFD提言は、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標の4つの柱を中心に、気候リスクに関する情報開示を求めています。
  • 規制対応状況:英国、EU、日本、カナダなどがTCFDに準拠した開示を義務化しています。
  • ISSBとの関係:ISSBが発行するIFRS S1およびS2にはTCFDの提言が完全に統合されており、サステナビリティおよび気候関連開示の包括的な基準として位置づけられています。

5. 欧州財務報告諮問グループ(EFRAG
https://www.efrag.org/en

  • 役割:企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の下で、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を策定
  • 影響:2024年より、EU域内の大企業および上場企業に対してESGパフォーマンスの開示が義務付けられます。

6. 国連責任投資原則(UN PRI
https://www.unpri.org/

  • 役割:投資家向けにESG開示に関する自主的な原則を策定
  • 主な基準:企業や機関投資家に対し、投資判断プロセスにESG要素を組み込むことを推奨しています。

7. CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)
https://www.cdp.net/en

  • 役割:環境影響に関する情報開示のための国際的なプラットフォームを運営
  • 主な基準:気候変動、水資源の保全、森林破壊に関する情報開示に重点を置いています。

8. 米国証券取引委員会(SEC
https://www.sec.gov/

  • 役割:米国の上場企業に対するESG情報開示を規制
  • 主なルール:TCFDの提言に沿った気候リスク開示に関する規則案を提示しています。

9. 証券監督者国際機構(IOSCO
https://www.iosco.org/

  • 役割:世界各国の証券規制当局によるESG報告フレームワークの整合性確保を支援
  • 主な活動:ISSB基準を支持し、国際的な普及を促進しています。

10. 各国の証券取引所および金融監督当局

  • 日本:
     金融庁(FSA)
    https://www.fsa.go.jp/en/
     東京証券取引所(TSE)
    https://www.jpx.co.jp/english/
  • 目的:日本の上場企業に対するESG情報開示の規制・指導を担う
  • 主なルール:金融庁はTCFDに準拠した開示を義務化。東京証券取引所は、上場企業に対しコーポレートガバナンス報告書におけるESGの透明性向上を推奨しています。
  • 影響:企業は、財務報告にESG要素を統合し、新たな規制に対応するとともに、海外投資家の関心を惹きつける必要があります。

ESG開示基準の統合に向けた動き

ESG報告の領域では、複数の開示フレームワークを統合する動きが本格化しています。現在、その中心的な役割を担っているのがISSBであり、国際的に統一された開示基準の策定を主導しています。

TCFDによる気候関連開示の原則は、ISSBが発行したIFRSサステナビリティ開示基準(S1およびS2)に直接反映されています。また、SASBとバリュー・レポーティング財団(VRF)はISSBに統合されました。一方で、GRIは引き続き補完的なフレームワークとして位置づけられています

典:ESG Professionals Network「ESG報告の全体像」インフォグラフィック

本図は、現在のESG報告を形成する主要な関係機関を視覚的に示しており、ISSBが主導する新たな国際基準に整合することの重要性をあらためて浮き彫りにしています。

今後の対応ポイント

こうした動向を踏まえ、日本のIR担当者に求められる対応は次のとおりです。

  • 最新情報の把握:グローバルなESG開示基準の動向を継続的に把握し、規制への適合性を保つとともに、投資家の期待に応える体制を整えること。
  • 基準の整合性を意識した対応:国際基準と国内規制(特にTCFDに準拠した日本の開示要件)の整合性を理解し、整合的な開示方針を構築すること。
  • 報告内容の高度化:統合された基準群を活用し、透明性が高く網羅的なESG情報を発信することで、投資家からの信頼を高め、グローバルなベストプラクティスに合致した報告を実現すること。

HTMLで統合報告書を発信する7つのメリット

(English blog: 7 Benefits of Publishing in HTML | One World Link)

統合報告書をPDF形式で公開していませんか?印刷を前提としていないのであれば、HTML形式で発信することで、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションの機会を広げられるかもしれません。

PDFは長年にわたって情報発信・印刷に活用され、多くのメリットがあります。しかし、企業コミュニケーションの在り方は変化しています。ペーパーレス化が進む中、PDFは最適な手段ではなくなりつつあります。

自社の報告書が本当に読まれているか、把握できていますか?PDFのダウンロード数を追跡していますか?閲覧データを可視化することは、ステークホルダーの関心や重視しているテーマを理解する上で欠かせません。

Microsoft、Philips、BASF、Bayerといったグローバル企業は、ハイパーリンクを活用して情報同士のつながりやナビゲーション性を高めた包括的なオンラインレポートをHTML形式で公開しています。 HTMLでの発信は、閲覧者の利便性を高めるだけでなく、分析データを通じて読者理解を深めることにもつながります。

HTMLとPDFの違い

コーポレート・バリュー・レポーティング・ラボ(Corporate Value Reporting Lab)によると、統合報告書を発行する日本企業の数は年々増加しています。2015年には200社強だった発行企業数が、2023年には1,000社を超え、今後さらに増加が見込まれています(詳細はフルレポートをご参照ください)。

PDFとHTMLのどちらの形式で発行している企業が多いのか、明確な統計はありませんが、デジタルレポートへの移行が進んでいる傾向は明らかです。

NexxarのCEOであるエロイ・バランテス(Dr. Eloy Barrantes)氏は、2018年にIFRS財団の統合報告に関するニュース記事で次のように述べています。

「統合オンラインレポートは多くの企業で定着していますが、企画やデザイン面では十分に配慮されていないことが多いのが現状です。良質なHTMLレポートは、Webという媒体の特性を理解し、それに即した発信方法を考慮しています。」

さらに次のように述べています。

「現在、オンラインレポートの優良事例は、長年HTMLレポートを発行してきた企業が中心です。そうした企業は、発行とコミュニケーションの両戦略においてHTMLレポートを重要視しています。」

IR業務においてHTML形式で報告書を発行することは、読みやすさやアクセシビリティの向上につながり、海外ステークホルダーにも情報が伝わりやすくなります。また、検索エンジンでの可視性も高まり、より多くの投資家に報告書を届けることができます。

「PDFとHTMLは具体的にどう違うのか?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。以下の表で、一般的な違いを確認してみましょう。

図の和訳

項目PDFHTML
アクセス解析が可能(アクセス数がアナリティクスで確認できる)いいえはい
共有しやすい(共有ボタンの設置が可能)いいえはい
CMSと連携し、簡単に更新可能いいえはい
アクセシビリティ対応(障がいのある方にも配慮)基本的に対応していない対応している
操作性・インタラクティブ性フォーム機能のみ高い
検索エンジンに表示されやすい(SEO対策)あまり対応していない対応している
書式の完全な制御(印刷に最適)可能不可
簡単にダウンロード・オフライン閲覧が可能はいいいえ

出典:Content Marketing Institute

ご覧のとおり、HTMLは「印刷時の正確な書式設定」と「オフライン閲覧用のダウンロード」を除くすべての項目で優れています。PDFの利点は、主に印刷を前提とした資料発行にあります。

HTML形式で発信する主な7つのメリットを詳しく見てみましょう

1. アクセシビリティの向上
HTMLは、障がいのあるユーザーにとっても利用しやすい形式です。スクリーンリーダーなどの支援技術がHTML構造を正確に読み取ることができ、誰にとっても情報へアクセスしやすくなります。

2. モバイル対応の閲覧体験
スマートフォンでPDFを読む際に、拡大・縮小を繰り返した経験はありませんか?HTMLならその必要はありません。レスポンシブデザインにより、画面サイズに応じて自動調整され、スムーズな閲覧が可能です。

3. SEO(検索エンジン最適化)への効果
HTMLコンテンツは検索エンジンによってインデックスされやすく、情報の発見性が高まります。一方、PDFはSEO対策がしづらく、検索結果に表示されにくい傾向があります。

4. インタラクティブ機能
HTMLでは、ハイパーリンク、動画、アニメーション、インタラクティブなデータビジュアルなどが利用可能です。閲覧者の関心を引きつけ、より動きのある表現が可能です。

5. 高速な表示・パフォーマンス
容量の大きいPDFが読み込まれるのを待つのはストレスです。HTMLは軽量で、特に大規模なドキュメントでも素早く表示されます。

6. リアルタイムでの更新
誤りの修正や最新情報の追加も、HTMLなら即座に対応可能です。ユーザー側で再ダウンロードする必要はありません。

7. アクセス解析とユーザー行動の把握
読者がどのセクションに興味を持っているのかを知りたい場合、HTMLなら行動データの取得が可能です。PDFでは得られないインサイトを得ることができます。

HTML形式への移行は、読みやすさを向上させるだけではありません。情報の即時更新が可能となり、再ダウンロードの手間がなくなります。これにより、修正ミスの削減、迅速な改訂対応、そしてタイトなスケジュール下での業務負担の軽減が期待できます。

なぜ今もPDFにこだわるのでしょうか?

配信方法がデジタル限定であれば、従来型のPDFに固執する必要はありません。印刷物として残したい場合はPDFが有効ですが、ユーザーフレンドリーで現代的なアプローチを目指すなら、HTML形式を選ぶべきです。

まだ全面的な移行に不安がある場合は、まずは主要な数値情報だけでもHTML化して、読者のエンゲージメント指標を比較してみてください。多くの企業は、HTMLとPDFを併用したハイブリッド型のレポートも採用しています。たとえば、2023年版のBayer統合報告書ではその具体例が確認できます。

まとめ

デジタル環境は急速に進化しています。古いフォーマットにとらわれていては、変化のスピードに対応できません。HTMLを活用することは、世界のベストプラクティスに則ることであり、「革新性」と「アクセシビリティ」を重視する企業姿勢を海外投資家に示すことにもつながります。

HTML形式で統合報告書を発信することは、単なる技術面のアップグレードではありません。企業のストーリーを、デジタルリテラシーの高いステークホルダーに向けて効果的に伝えるための重要な機会です。

HTMLレポートやハイブリッド型の具体例はこちらからご覧いただけます: