小さなカンマが大きな議論に!オックスフォード・カンマは必要?

(English blog: The Tiny Mark That Sparks Big Debates | One World Link)

「オックスフォード・カンマ」をご存知ですか?英語の文章を書くときに、ちょっとした「,」を入れるかどうかで、英語圏では大きな議論を巻き起こしています。

オックスフォード・カンマとは?

シリアル・カンマとも呼ばれるオックスフォード・カンマは、英語の句読点の中でも最も議論される記号の一つです。3つ以上のものを列挙する際に、最後の項目の前に置かれる「and」または「or」の前に打つカンマのことです。

例えば、

「I bought apples, oranges, and bananas.」
(私はリンゴとオレンジ、そしてバナナを買いました。)

この「oranges」の後にあるカンマがオックスフォード・カンマです。

「わざわざカンマを入れなくても意味は伝わるのでは?」という意見もあるのですが、実はこのカンマがあるかないかで、文章の意味がガラッと変わることもあるのです。

使う・使わないで意味が変わる!?

オックスフォード・カンマの重要性

この小さなカンマは些細なものに見えますが、あるかないかで文章の意味が大きく変わることがあります。特に、列挙する項目が複雑な場合や、グループとして解釈される可能性がある場合、カンマの有無によって、思わぬ誤解を招くことがあるのです。

いくつか例を見てみましょう。

【例1】

オックスフォード・カンマなし

My favorite foods are pizza, macaroni and cheese and crackers.

オックスフォード・カンマがない文章では、私の好きな食べ物は、
「ピザ、マカロニ、そしてチーズ・アンド・クラッカー」
であるのか、それとも
「ピザ、マカロニ・アンド・チーズ、そしてクラッカー」

オックスフォード・カンマあり

My favorite foods are pizza, macaroni and cheese, and crackers.

オックスフォード・カンマを使うと、私の好きな食べ物は、
「ピザ、マカロニ・アンド・チーズ、そしてクラッカー」
であることが、はっきりとわかります。

【例2】

オックスフォード・カンマあり

We invited the rhinoceri, Washington, and Lincoln.

オックスフォード・カンマを使った文章では、
「私たちはサイ、ワシントン、そしてリンカーンを招待しました。」
と読めるので、ワシントンとリンカーンはサイとは別のゲストであることが、はっきりとわかります。

オックスフォード・カンマなし

We invited the rhinoceri, Washington and Lincoln.

しかし、オックスフォード・カンマを使わないと、ワシントンとリンカーンがサイの名前であるようにも読めるため、
「私たちはサイのワシントンとリンカーンを招待しました。」
と解釈することもできます。
「ワシントンとリンカーン」がサイなのか、人間なのか、この文章だけでは判断することができません。

【例3】

オックスフォード・カンマなし

The report was prepared by the marketing department, John and Sarah.

オックスフォード・カンマのない文章では、「ジョンとサラ」がマーケティング部門の一員とも読めるため、「そのレポートはマーケティング部門のジョンとサラによって作成されました。」と解釈することもできます。「ジョンとサラ」がマーケティング部門に所属しているのかどうか、この文章だけでは判断することはできません。

オックスフォード・カンマあり

The report was prepared by the marketing department, John, and Sarah.

オックスフォード・カンマを使った文章では、
「そのレポートはマーケティング部門とジョン、そしてサラによって作成されました。」
という意味となり、カンマを一つ追加するだけで、「ジョンとサラ」がマーケティング部門とは別の人たちであることが明確になります。

一貫性が重要!!

オックスフォード・カンマを使うか使わないかは、文章スタイルの問題といえます。 また、アメリカ英語とイギリス英語で、次のような違いがあります。

  • アメリカ英語:一般的に使われ、特にフォーマルな文章では、曖昧さを避けるために推奨されることが多い。
  • イギリス英語:あまり使われず、明確さが求められる場合にのみ入れることが多い。

オックスフォード・カンマを使うか使わないかは自由ですが、大切なのは 「一貫性」です!文章全体でルールを統一することが重要になります。

OWLではオックスフォード・カンマを推奨しています

オックスフォード・カンマを使うべきかどうか迷った場合は、次のポイントを考えてみてください。

明確さ:カンマがないと意味が曖昧になったり、誤解を招く可能性があったりしないか?

タイルガイド:使用するスタイルガイドで、オックスフォード・カンマが推奨されているか?

(例えば、シカゴ・マニュアル・オブ・スタイルでは推奨されていますが、APスタイルでは推奨されていません)

OWLは、さまざまなステークホルダーに向けて、明確かつ簡潔にメッセージを伝えることを大切にしています。そのため、APスタイルに従いつつも、オックスフォード・カンマを使用しています。

ESG開示の国際ルールが変わる!2025年改訂の全体像と実務対応ポイント

(English blog: 4 ESG Framework Changes You Should Know About | One World Link)

ESG(環境・社会・ガバナンス)開示をめぐる動きは、近年ますます加速しています。IR担当者として、自社がこうした動向に遅れず対応し、適切な情報開示を行うための体制を整えることは、ますます重要になっています。2025年には、ESG開示に関する主要なフレームワークの大幅な改訂が予定されており、今のうちから準備を進めておくことが、投資家からの信頼を維持し、企業としての透明性への姿勢を示すうえで不可欠です。

本記事では、2025年に変更が予定されている4つの主要なESGフレームワークを取り上げます。

Key ESG Framework Overhauls in 2025

1. B Lab Global(Bコーポレーション認証)

Bコーポレーション認証制度の改訂

Bコーポレーション認証制度は、現在第7回目となる基準改訂が進められています。今回の改訂では、企業規模に応じたESGパフォーマンスの**最低基準値(minimum performance thresholds)**が導入される予定です。

これまでの認証制度では、全体スコアが一定以上であれば認証を取得でき、項目ごとの強弱を相殺することが可能でしたが、今後は各項目で一定の水準を満たすことが求められる方向です。
(出典:Heather Clancy, Trellis, 2025年1月7日)

B Labは、新しい認証基準の詳細を2025年初頭に公表する予定です。

▼制度変更に関する詳細はこちら(いずれも英語サイト):
B Corporation公式サイト:新しいパフォーマンス要件
https://www.bcorporation.net/en-us/standards/performance-requirements/

Trellis記事:「新しいB Corp基準について知っておくべきこと」https://trellis.net/article/heres-what-know-about-new-b-corp-standards/

2. 世界資源研究所(WRI)および持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)

温室効果ガスプロトコルGreenhouse Gas Protocol  

世界的に広く利用されているカーボンアカウンティングの枠組みである温室効果ガスプロトコルは、10年以上ぶりとなる大規模な改訂を進めています。
2024年にはガバナンス体制が大幅に見直され、新たに運営委員会(Steering Committee)、独立基準委員会(Independent Standards Board)、および**4つの技術作業部会(Technical Working Groups)**が設立されました。

(出典:Greenhouse Gas Protocol公式サイト)

今回の見直しでは、以下のような内容が改訂案として検討されています:

  • スコープ3排出量に関する報告要件の強化
  • 企業向け排出量会計ルールの更新
  • 再生可能エネルギークレジットの新たな取り扱い手順

S&P500企業のほぼすべてがこのプロトコルを利用していることから、今回の見直しはグローバルな排出量報告に大きな影響を及ぼすと見られています。改訂案(パブリックコンサルテーションドラフト)は2025年中に公開され、最終的な基準の確定は2026年末を予定しています。

(出典:Heather Clancy, Trellis, 2025年1月7日)

▼詳細はこちら(いずれも英語サイト):
運営委員長および副委員長からの2025年1月メッセージ
https://ghgprotocol.org/blog/2024-reflections-and-looking-ahead-letter-ghg-protocol-steering-committee-chair-and-vice-chair

企業向け基準およびガイダンス改訂プロセス
https://ghgprotocol.org/ghg-protocol-corporate-suite-standards-and-guidance-update-process

3. 国際標準化機構(ISO)

ISOネットゼロ・スタンダード

ISO(国際標準化機構)は、2022年のCOP27においてネットゼロ・ガイドライン(IWA 42:2022)を発表しました。現在、このガイドラインを基にした正式な国際標準の策定が進められており、2025年11月に開催されるCOP30での公表が見込まれています。ただし、それに先立ち、2025年中にパブリックコンサルテーション(意見募集期間)が設けられる予定です(出典:ISO公式サイト、2024年6月/Net Zero Now)。

今回の改訂では、カーボンオフセットに依存するのではなく、あらゆる温室効果ガスの削減を重視すること、ならびに継続的な検証の実施が求められる見通しです。

▼詳細はこちら(いずれも英語サイト):
ISO:現行ネットゼロ・ガイドライン(IWA 42:2022)https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:iwa:42:ed-1:v1:en

ISO公式:新スタンダード策定に関する発表(20246月)https://www.iso.org/contents/news/2024/06/netzero-standard-underway.html

Net Zero Now:ISOネットゼロ標準に関する最新情報
https://netzeronow.org/post/new-iso-net-zero-standard-announcement

Trellis:ISOのネットゼロ標準で知っておくべきこと
https://trellis.net/article/what-you-should-know-about-isos-forthcoming-first-net-zero-standard

4. Science Based Targets initiative (SBTi)

企業向けネットゼロ・スタンダード
(Corporate Net-Zero Standard)

SBTi(Science Based Targets initiative)は、最新の気候科学に基づき、企業向けネットゼロ・スタンダードの見直しを進めています。 改訂後のスタンダードでは、企業に対して2030年までに温室効果ガス排出量を半減し、2050年までに90%削減することが求められる見通しで、カーボンオフセットの使用は最小限に制限される予定です。ただし、オフセット利用の容認範囲をめぐる議論が続いているため、次期バージョンの発表は延期となっています。

(出典:Heather Clancy, Trellis, 2025年1月7日)

SBTiの公式サイトによると、改訂版スタンダードは2回にわたりパブリックコンサルテーションが実施される予定で、第1回目は2025年3月以降に開始される見込みです。また、企業が改訂案を試験的に導入するための「テストドライブ」制度への応募も受け付けられる予定です。

2025年2月時点では、SBTiがステークホルダーからの追加フィードバックを募集しています。

(出典:Science Based Targets公式サイト)

▼詳細情報(いずれも英語サイト):
SBTi:2025年2月アップデート|ステークホルダー向け意見募集https://sciencebasedtargets.org/news/corporate-net-zero-standard-revision-sbti-releases-new-opportunities-for-stakeholders-to-input

ESG Today:SBTi、改訂スケジュールを延期
https://www.esgtoday.com/sbti-pushes-back-timeline-for-new-corporate-net-zero-standard/

日本企業への示唆

ESG開示を担当するIR部門にとって、今回紹介した各種フレームワークの改訂は、以下の対応の必要性を強く示しています。

  • グローバル基準との整合性強化
    ESGに関する報告基準の国際的な整備が進む中、自社の情報開示をこうした基準と整合させることが、報告内容の一貫性やステークホルダーからの信頼性向上につながります。
  • カーボン排出・ネットゼロ開示の高度化

気候関連リスクへの注目が高まる中、排出量やネットゼロに関する指標・開示内容を財務情報にどう統合するかが、今後の開示の質を左右する重要な要素になります

  • データの正確性と比較可能性の確保
    規制当局の監視が厳格化する中で、ESGデータの信頼性・検証可能性を高め、グローバルなベストプラクティスに沿った運用体制の整備が求められます。

IR担当者が今すぐ取り組むべきアクション

急速に進化するESGの潮流の中、IR担当者には企業の透明性とコンプライアンスを確保する最前線の役割が求められています。特に、2025年に予定されている各種フレームワークの大幅な改訂は、投資家との信頼関係を維持し、各国の規制要件を満たすうえでも極めて重要です。


以下のステップを実践することで、変化への対応力を高め、サステナビリティ報告の質と戦略性を強化することができます。.

  1. 現行のESG開示体制の評価
    現在のESG報告書と各フレームワークの改訂内容を照らし合わせ、ギャップ(不足点)を洗い出す内部レビューを実施しましょう。
  2. 外部専門家との連携強化
    ESG開示の国際的な期待に応えるために、コンサルタントや翻訳パートナーとの連携を活用することが効果的です。
  3. テクノロジーの活用による一貫性確保
    ESGレポート作成において、専用の報告支援ソフトウェアや翻訳メモリツールを用いることで、言語・指標の一貫性を維持できます。
  4. 国際的な規制動向のモニタリング
    主要なESGフレームワークや監督当局からの最新情報を継続的にフォローアップし、対応漏れを防ぎましょう。
  5. フレームワーク別の最新情報を定期的に確認
    以下の公式情報源を定期的にチェックし、最新の動向を把握しておくことが不可欠です:

(ア)B Lab Global – Bコーポレーション認証基準
 公式サイト:B Corporation Standards

(イ)Greenhouse Gas Protocol – GHGプロトコル更新情報
 公式サイト:GHG Protocol Updates

(ウ)ISO – ネットゼロ・スタンダード
 公式サイト:ISO Net-Zero Guidelines

(エ)Science Based Targets initiativeSBTi企業向けネットゼロ基準
 公式サイト:SBTi Updates

留意点

ESGを取り巻く環境は常に進化を続けており、本記事で紹介したアップデート内容の一部についても、今後さらに変更が加えられる可能性があります。
スケジュールが変更されることもあれば、業界からのフィードバックを受けて内容そのものが見直されることも想定されます。

そのため、規制当局からの発表、業界ニュース、専門家による議論などに継続的に目を向けることが、想定外の変更に柔軟に対応し、自社が常に一歩先を行くための鍵となります。

フォント次第で印象が変わる?知られざるその重要性とデザインの影響力

(English blog: Is Your Font Choice Sabotaging Your Reports? | One World Link)

フォント選びの重要性をご存じですか? その影響は、想像以上に大きいかもしれません。

フォントは、可読性や余白の使い方、さらには企業の印象にまで影響を与える重要なツールです。米国の専門ガイド「American Profession Guide」では、次のように述べられています。

「フォントが持つ力は、想像以上に大きいものです。感情や印象を、微妙でありながらも深く左右します。この感覚的な影響を理解することにより、デザイナーやマーケティング担当者、広報担当者は、より効果的にメッセージを伝えることができるようになります。」

本日のブログでは、「スペース」と「印象」という2つの観点からフォントを見ていきます。

たとえばスペースは、文章作成において非常に重要な要素です。特に日本語と英語のように構造が大きく異なる言語間の翻訳では、スペースの使い方が非常に重要になります。
実は、フォントの選び方によって、縦方向・横方向の両方でスペースを無駄にしている可能性があるのをご存じでしょうか?

日本語資料を英語に翻訳する際、英語の文章量は日本語の2倍程度に膨らむことが多く、図表、見出し、レイアウトの設計で課題が生じやすくなります。

フォントによっては、こうした課題をさらに悪化させてしまう場合もあるのです。

現在お使いのフォントは、英語向けに最適化されていますか?

フォントには、それぞれ用途に適した設計があります。

MS明朝、游ゴシック、メイリオといったフォントは、日本語表示には最適ですが、英語では文字間のバランスや可読性に課題が出やすくなります。

以下では、日本でよく使われるフォントが英語の資料に向かない理由をいくつかご紹介します。

英文レポートに不向きなフォントの例(その理由)

  1. MS明朝
    日本語の漢字・仮名に最適化されたセリフ体フォント。英語では線が細すぎて、ブロック全体が不均一に見え、長文になると読みづらくなります。
    問題: 線が細く、ローマ字のバランスが不十分。
  2. MSゴシック
    日本語資料で広く使われていますが、英語の文字は角ばっており、古くさい印象を与えます。
    問題: プロポーショナルでないため、不自然で堅い見た目になる。
  3. 游明朝
    日本語では上品な印象を与えますが、英字の文字幅が**不均一(狭すぎる/広すぎる)**で、全体がアンバランスになります。
    問題: スペース効率が悪く、文字間(カーニング)が不安定。

では、どのようなフォントが英語に適しているのでしょうか?

英語のフォントは、セリフ(Serif)体とサンセリフ(Sans-Serif)体という2つの大きなカテゴリに分けられます。以下は、アメリカの印刷会社 Carter Printing による説明です。

セリフ体(Serif Fonts)
伝統的な本文用フォントです。Times New Roman や Garamond などが代表例です。文字の先端に 「ひげ(セリフ)」 と呼ばれる小さな線があり、文字サイズが8〜9ポイントでも可読性が高いのが特長です。書籍や小説などの印刷物によく使われています。

サンセリフ体(Sans-Serif Fonts)
“sans”は「〜なし」の意味で、セリフのないフォントを指します。Google Docsの標準フォント Arial や、Microsoft Wordの自動設定フォント Calibri もこのカテゴリに含まれます。セリフがないことで、すっきりとした現代的な印象を与えるため、デジタル資料に適しています。

(出典:Carter Printing

代表的なサンセリフ体・セリフ体フォント

サンセリフ体: Arial、Helvetica、Roboto、Calibri
セリフ体: Times New Roman、Georgia、Garamond

セリフ体・サンセリフ体のいずれも、英語の資料におけるプロフェッショナリズム、明確さ、標準的な見た目を実現するうえで有効です。

では、読み手に与える印象(トーン)にはどのような違いがあるのでしょうか?

American Profession Guide」によると、Times New Roman のようなセリフ体フォントは、新聞や書籍、その他のフォーマルな印刷物との関連性が高く、格式や信頼感を連想させる傾向があります。

一方で、サンセリフ体は、デジタルコンテンツによく使用され、モダンで、すっきりとした印象を与えるとされています。

  1. Arial
    よく使用されているサンセリフ体フォントで、すっきりとした現代的な印象が特長です。画面上でも印刷物でも読みやすく、プロフェッショナルなレポートに適した信頼性の高い選択肢です。
  1. Times New Roman
    クラシックなセリフ体フォントで、フォーマルさと読みやすさのバランスが取れています。学術資料やビジネス文書でも広く使用されており、大量のテキストを読者がスムーズに処理できる構造を持っています。
  2. Helvetica
    明瞭さと中立性が評価されている、汎用性の高いサンセリフ体フォントです。文字のバランスや曲線が整っており、企業レポートやブランド用途にも適しています

フォントにそんなに違いがあるのでしょうか?

日本語向けフォントと英語向けフォントを実際に並べて比較してみましょう

以下の図では、Yu Mincho(游明朝)と Times New Roman を同じサイズで使用し、「English」という単語を入力しています。

図1

Times New Roman(セリフ体)と同様に、Yu Mincho(游明朝)にも文字の下部に“ひげ”があります。一見すると似たようなフォントに見えますが、Times New Roman(英語向け)とYu Mincho(日本語向け)では設計が異なります。

ここでは、フォントサイズを120に拡大し、ハイライト表示でその違いを確認してみましょう。

図2

灰色のボックスの高さと幅の違いにご注目ください。

Times New Roman は英語に最適化されたフォントで、文字ごとの間隔(カーニング)や文字の上下の余白がよりコンパクトに設計されています。単語1つでは大きな差に見えないかもしれませんが、100ページに及ぶレポート全体で考えると、かなりのスペース差になります。また、Times New Roman の文字はやや丸みを帯びているのに対し、Yu Mincho の文字はやや角ばっている点にもご注目ください。

次に、フォントサイズを小さくして別の例を見てみましょう。

図3

この図では、左側に日本語向けの一般的なフォント3種、右側に英語に最適化されたフォント3種を使用しています。すべてのテキストはフォントサイズ10.5で統一しており、異なるのはフォントの種類のみです。

左側の日本語フォントは、文字間や行間に余白が多く必要であることが分かります。
中でも MSゴシックと Times New Roman の差が特に顕著で、MSゴシックでは1行分余計にスペースを消費しているのが見て取れます。

また、Times New Roman(セリフ体フォント)は、Arial や Helvetica(サンセリフ体)と比べて、より伝統的で信頼感のある印象を与える点にもご注目ください。

まとめ

フォント選びは重要です。見た目の問題だけではなく、伝えたい内容を明確かつプロフェッショナルに、そして読者に最適な形で届けるための鍵となります。

フォントの使い方についてご不明な点があれば、ぜひ One World Link までお問い合わせください

次回、英語版レポートのフォーマットを検討する際は、「フォントは言葉以上に多くを語る」ということを思い出してください。

初期のデザイン段階から、英語版におけるフォント、文字方向、レイアウトの調整を考慮するよう、制作担当者へ依頼しましょう。

参考リンク

タイポグラフィの入門記事(英語)
https://www.toptal.com/designers/typography/typeface-classification

英語フォントを2つ並べて比較できるユニークなサイト(英語)
http://www.identifont.com/differences.html

生成AIを使い英文IRディスクロージャー業務を行う際のAIとの正しい付き合い方とは?

(English blog: Why Relying on Generative AI for Translation May Ruin Your Relationship With Overseas Investors | One World Link)

IRやESGの情報開示において、英文開示のニーズはますます高まる傾向の中、情報開示の準備や投資家からの質問に対する回答、社内向け報告書の管理において、翻訳はプラスアルファの業務であり、英訳業務に割く時間確保や英語化に対する予算なども厳しい状況の企業様は多くいらっしゃると思います。

弊社の多くのクライアント様も自社内にChatGPTのようなAIを導入し、社内イントラとして英訳を行い、翻訳にかけていた時間やコスト削減に取り組んでいる企業様も多くいらっしゃいます。しかし会社が伝えたい日本語の原文にある大切なニュアンスを本当に正確に表現できているのか、その英訳に一切問題がないのか、、、認識されておりますでしょうか?

AI翻訳は大きな進歩を遂げ、時間に追われるIR担当者のみなさまに対して、完璧に近いと思われるレベルのソリューションを一瞬にして提供してくれるようになりました。しかし、便利にはなりましたが、財務状況や金融規制情報など投資家の方々が日々触れている情報に対して、翻訳品質のレベルはまだ完璧とは言えません。

どのような場合にAIを活用し、どのような場合に使用を避けるべきかを把握しているかどうかで、簡潔、明白で効果的なメッセージとして発信していけるか、あるいは、大幅に誤ったコミュニケーションとなるかの違いが生じてきます。

AI翻訳が有用なツールであることは確かですが、現時点においては、完全なるソリューションではないということを今日はお伝えしていきたいと思います。これらAIツールは急速に進化しているにも関わらず、財務情報や投資家の方々のやり取りによく見られる繊細なニュアンスの違いや文化的な内容、日本語特有とも言える複雑な言語構造に対して、未だにAIは間違えることがあります。

IRやESGの情報開示において、情報の正確さや明白さは英文コミュニケーションにおいて非常に重要です。どのような場合にAIを使用し、どのような場合に人間の見解、判断を優先すべきなのかを明確に把握することで、これからの海外向けコミュニケーションに対して大きな違いを生むことができるでしょう。

AI翻訳が役に立つケースと翻訳者に依頼すべきケースを、それぞれ5つずつ紹介させていただきます。

生成AIによる和文英訳で、投資家の方々と良好な関係を保つことができる5つのケース

生成AIは、様々な状況に応じて適切な速度や性能を提供することで、翻訳業務のあり方を変えつつあります。しかし、他のツールと同様に、いつどのように使用されるかによって、その効果は変わります。

AIで和文英訳を行うことで、社内向け文書の作成など、IR担当者の皆さんの業務支援や効率性の向上につながりますが、その使い方は慎重に検討する必要があります。

投資家の方々とのやり取りをスムーズに進めるために、AI翻訳を活用できる5つのケースを紹介します。

1. 社内向け原稿およびクイックリファレンス

AIにより、社内向けのメールやメモ、報告書の作成が効率的に進められます。これらの文書は、洗練された表現よりも簡単に理解できる内容であることが重要となるためです。
AI翻訳で作成した下書きを手直しするだけで完成させることができるため、期限が迫っている場合などに役立ちます。

2. 構造化された定型的な内容

FAQや技術マニュアル、製品説明のような標準化された文章は、AI翻訳が効果を発揮する場面です。これらは、統一された用語による予測可能な構造になっていることが多く、AIが正確に処理しやすい内容になっています。

3. 大量の低リスクな内容

大量の社内向け報告書や非公式文書の翻訳を行う際、AIに翻訳のたたき台を作成させることで、時間の節約が可能です。これは完璧な最終文書を作成することよりも、概要を把握することが最優先の場合に特に有用です。

4. 用語およびスタイルの一貫性を保証

用語やスタイルを統一することは、企業間コミュニケーション、特に専門用語を用いる業界では必須です。
生成AIは、あらかじめ定義された用語集や過去の翻訳、スタイルガイドを参照することで、企業ブランドのメッセージを全ての媒体に反映するためのサポートが可能です。これにより、一貫した論調や用語によるコミュニケーションが保証されます。

5. 翻訳者の支援

翻訳ツールは、紙の辞書から始まり、”Word Tank”のような電子辞書に続いて、オンライン辞書やデータベースの登場といったように、翻訳者をサポートするために長年進化してきました。
生成AIは翻訳ツールの最新版であり、たたき台の作成や用語の提案、言語の共通パターンの特定を通して、より効率的な働き方を支援しています。
生成AIの活用により、論調やニュアンス、明瞭さの改善が可能です。また、最終的な翻訳が自然かつ正確で、エンドユーザーに合致する内容であることが保証されます。
これらのツールを使用することで、定型作業を効率化し、最も重要な業務である「高品質で読者にフォーカスしたコミュニケーションの提供」に集中できます。

生成AIによる和英翻訳で、出資者との関係が損なわれる5つのケース

財務情報の開示や投資家とのコミュニケーション、文化的背景から用いられる繊細なメッセージなどの影響力が強い内容は、正確さとニュアンスが重要になります。これはAIが未だに苦手としている領域です。

これらの状況でAIを誤った方法で用いると、コミュニケーションの行き違いや風評被害、ひいてはコンプライアンスのリスクにつながる可能性があります。

AI翻訳では目的を達成できないために、人間によるチェックが必要となる5つのケースを紹介します。

1. 財務情報の開示

財務報告書や決算発表は、特定の用語や標準書式への正確な順守が求められます。近年の研究では、財務情報におけるAI翻訳の進歩と制約の両方に着目しています。
グルノーブル・アルプ大学とLingua Custodia社の研究者は、財務情報におけるAI性能を評価する「DOLFINテスト」を導入しました。AIモデルは日々進化を続けていますが、状況に応じた財務用語の使い分けや書式の正確性には未だに苦労しています。
大規模AIモデルが様々な文脈を学習して正確で一貫した翻訳を生成することで、より良い性能を発揮する一方で、小規模モデルは苦戦することが多いです。長文では、これらのモデルは一貫性に欠ける傾向があり、新たな語句が出てくると翻訳の正確性が下がります。(Slator

2. IRおよび企業広報

東京証券取引所の調査によると、海外投資家は日本での英語による情報開示に満足していないという結果が出ています。多くの回答者が、決算発表やIR資料、即時開示資料に満足できなかった、翻訳された文章が特に分かりづらかったと答えています。
詳しくは、前回のブログをご覧ください:
日本株の評価が難しい理由とは?投資家が語る評価の壁とは・・・
英語開示の重要性を考え直す海外投資家からの声

投資家向け資料や株主向け文書、公開情報は、企業の評判を形成します。これらの情報は明快かつ簡潔で、企業メッセージに沿ったものでなければなりません。しかし、AIによって生成された和文英訳は、受動態や不自然な言い回し、矛盾のある文章になることが多いです。これにより、読みやすさが損なわれるだけでなく、メッセージの効果が下がってしまいます。
受動態を使うと、間接的で読者の関心を引きづらい文章になります。不自然な言い回しや矛盾のある文章によって、株主を混乱させたり、洗練されていない印象を与えることになります。最終的には企業の信頼性やイメージを低下させてしまいます。

3. 文化的背景やニュアンスを含むメッセージ

言語とは単に言葉をつなげただけのものではありません。文化や意図、感情を伝えるためのものです。AIツールは、原文の日本語にある全要素を含んだ文法的に正しい翻訳を生成しますが、原文の意図を自然な英語表現でどのように伝えるかまでは把握できません。
文章や段落を構成したり、情報を伝達する方法は言語によって変わります。記載スタイルや論調、言語を実際に翻訳する際は、直訳ではなくより慎重に表現する必要があります。人の手による介入がなければ、AIが生成した翻訳は堅苦しい直訳になり、ターゲットの読み手にとって分かりづらい内容になってしまう可能性があります。
例えば、日本人のビジネスコミュニケーションでは、しばしば主語を省略し、受動態や間接的なフレーズ、文化的背景から繊細な表現が多く用いられます。AIがこれらの表現を常に正しく読み取ることができるとは限りません。
日本語では自然に聞こえる表現でも、英語では曖昧で不自然な印象を与える可能性があります。たとえそれが「正しい」翻訳だったとしても。

4. コピーライティングやブランディング

マーケティング媒体やウェブサイト、プレスリリースは、ブランドのメッセージや信頼性を保ちつつ、同時にターゲットである読み手の関心を引くものでなくてはなりません。
Metaphrasis Language & Cultural Solutionsに示されているように、マーケティングコンテンツに説得力を持たせるための文化的で曖昧な表現や情緒的な訴えを、AIは理解できない可能性があります。その結果、潜在的な顧客に対して効果がなく、場合によっては不快に感じられる内容につながってしまいます。

5. 機密情報

AI翻訳ツールは、重大なセキュリティリスクを引き起こす可能性があります。AIプラットフォームに入力された機密性の高い業務情報は、保存や再利用、漏洩される恐れがあり、情報漏洩のリスクが発生します。
例えば、2023年にサムスン社の従業員が不注意からChatGPTに機密情報を入力し、会社の機密データを漏洩してしまいました。その結果、同社は知的財産の保護を目的としてAIツールの使用を禁じました(TechCrunch, 2023)。
また、主要銀行およびテクノロジー企業は、機密情報漏洩の懸念があるとして、自社の従業員にChatGPTの使用制限を課しました(Semafor, 2023)。
翻訳者はAIが担保できない守秘義務と責任を提供できます。

最後に

生成AIによる翻訳は様々なシチュエーションで役に立つツールです。しかし、万能のソリューションではありません。

特に定型業務や大量のデータに対してスピードと利便性を発揮する一方で、財務報告書やIR、文化的背景やニュアンスを含むメッセージなど、人間の見解が必要となるケースもあります。

使い方次第でAI翻訳の有効性が変わることを覚えておいてください。

明快でしっかりした構成の入力や、念入りに作り込まれたプロンプトによって結果は改善しますが、それでもAIのニュアンスや文脈を読み取る力には限界があります。

AIの有効性を高めることができるケースと、海外とのコミュニケーションにおいて正確さや明瞭さ、信頼性を保つために人間によるチェックが必要となるケースを理解することが重要です。


財務データをChatGTPに翻訳させるのは要注意

(English blog: Is ChatGPT Cooking Your Books? | One World Link)

私と同じように、「ChatGPTのほうが数字に強いに決まっている」と思っている方も多いのではないでしょうか。なにしろAIですから、データを処理したり、情報を分析したりするのは得意分野のはずですよね。

しかし、ChatGPTに大きな数字の翻訳を完全に任せきりにしている方には、少し残念なお知らせがあります。実は、数字の翻訳において、意図せず訳文を“水増し”してしまっているケースがあるのです。

ChatGPTの“数字の水増し”:ケース1
私もそうですが、大きな日本語の数字を英訳するときに迷う方は多いのではないでしょうか。
「100 million」は「一億」?それとも「百万円」?
「一億」ってゼロがいくつだっけ……?

以下のスクリーンショットは、ある翻訳で困ってChatGPTに助けを求めたときのやりとりです。

赤枠で囲ったこの2つの箇所を見てみましょう。

ChatGPTは、9億円と125億円の両方を「9 billion yen」「125 billion yen」と誤訳してしまいました。
(正しくは「0.9 billion yen」「12.5 billion yen」であり、見過ごせない大きな誤りです。)

「一度だまされたら相手のせい。二度だまされたら自分のせい。でも、堂々とウソをつかれたら……さすがに驚きます。」

次の例では、42,383百万円をゼロとカンマ付きで入力する必要がありました。

ChatGPTが返してきた答えは「423,830,000,000」。


最終チェック中に「あれ?この数字おかしいかも」と気づきました。
「百万」は「one million」なので、42,383百万は「42.383 billion」のはず。


なのに、ChatGPTはなぜ「423 billion」と言ってきたのでしょうか?

念のため、「42,383,000,000は間違ってますか?」とChatGPTに確認してみました。

ご覧のとおり、ChatGPTは「42,383,000,000は間違いです」と断言してきました。


さらに説明を求めたところ、どうやらChatGPTは「百万円=1億円(=100,000,000)」という前提で計算していたようです(これはさすがに驚きです)。

まさか、世界最先端のAIが「数字の計算」で間違えるなんて、思ってもいませんでした。

再確認と常に慎重な姿勢を
このような誤訳が、生成AIに翻訳や最終確認を任せている方々にとって、重大なリスクをはらんでいることは言うまでもありません。

AIによる翻訳を鵜呑みにしてはいけません。AIは強力なツールではありますが、まだその回答を全面的に信頼できる段階には達していません。
もしあなたの目的が“架空の10億ドル評価”で投資家を驚かせることでない限り、特に財務翻訳においては、AIを過信せず、細心の注意を払って使うべきです。

日本語の文章を直訳の英語で表現するのが容易ではない最大の理由

(English blog: The No.1 Reason Japanese and English Writing Are Incompatible | One World Link)

重要なポイントを説明するために、日本語では昔から「起承転結」のストーリーによる文章構造が用いられています。一方、英語では読者がまず初めに本題を期待していて、特にグローバルなIRコミュニケーションではこの傾向が顕著になります。プレスリリースや事業レポート、ブログ記事など、どのような媒体であっても、逆ピラミッド(逆三角形▽)の構造を活用することで伝えたい内容を効果的に表現し、読者の興味を素早く惹きつけることができます。

逆ピラミッド構造とは?

逆ピラミッドの法則では、重要度の高い情報から順に表していきます。こちらのサイト(Purdue Online Writing Lab)では、逆ピラミッド構造は「マスメディアで長期に渡り最も広く用いられている手法の一つ」で、電報で送信エラーが発生して途中までしか送れなくても、重要な情報だけは伝えられるように生み出された手法と紹介されています。 以下のイメージ図のように、最も重要な情報を初めに持ってきて、次に補完的な内容を詳しく記載し、最後に参考情報で締めるという構造になっています。

もう少し細かく見ていきましょう。

  • 最も重要な情報を初めに
    要点または重要なメッセージで始めます。これはいわゆる「5W1H」(Who、What、When、Where、Why、How)です。
  • 次に補完的な内容を詳しく
    具体的な例や説明、二次的情報などの内容を補完します。
  • 最後に参考情報で締める
    さらに詳しく知りたい読者に向けて、重要度の低い内容や背景情報を記載します。

逆ピラミッド構造の活用によるメリット

最大のメリットは、本題や重要な情報を読者に素早く伝えられることです。

業務やワークフローを管理するためのソリューションを提供しているProcess Street社が投稿したブログ記事(https://www.process.st/inverted-pyramid/)では、情報の流れが速い現代においてユーザーの集中力が低下していることに触れています。この問題に対して、逆ピラミッド構造を用いることにより、グローバルな読者が「本当に知りたい」情報を素早く提供できると紹介しています。

逆ピラミッド構造を日本語の文章と比較したらどうなるか?

ビジネス英語の文章では逆ピラミッド構造は有効で、読者(多忙な投資家やステークホルダー)にまず本題を伝えます。

では反対に、「起承転結」の例を見てみましょう。各社がそれぞれの基準を元に異なる方針に従って記載していますが、日本語の文章には「起承転結」のコンセプトが共通のテーマとして存在しています。この記載スタイルは、起(導入)、承(発展)、転(変化)、結(終結)の4つの部分で構成されています。

例えば、日本語の決算報告書や決算短信に共通して見られる次のような構文があります:

原文の日本語の構造を維持したまま英訳すると、本題(売上が過去最高を記録したこと)は最後に記載されてしまいます。また、日本語の原文は非常に複雑で分かりづらい構造のため、本題から注意が反れてしまいます。

では、先ほどの日本語を逆ピラミッド構造で英訳したらどうなるか見てみましょう。

違いに気付きましたか?
簡潔で明快な文章になっているため、多忙な読者でもざっと目を通すだけで本題を把握できます。

構造構成適した媒体メリットデメリット
逆ピラミッド・最も重要な情報を初めに
・次に補完的な内容や参考情報
ニュース記事、プレスリリース、ビジネス最新情報・素早く注意を惹くことができる
・目を通すだけで本題を把握できる
・後半を削って編集しやすい
突然に締め括る印象を与えたり、内容が浅くなる可能性がある
起承転結4つの部分:起(導入)、承(発展)、転(変化)、結(終結)
導入、本文および補完的な内容、結論
ビジネス提案、方針説明、日本語での公式文書、学術論文、 意見記事、徹底分析・長年に渡り培われてきた表現やテーマなど、日本人に文化的に共感を得やすい論理フローにより、説得力を高めることができる
・徹底した調査結果を記載することにより、説得力を与えられる
・西洋の文体に慣れた読者には、間接的な印象を与える可能性がある
・長文になりやすいため、熟読しないと重要な情報をすぐに見つけられない

Process Street社は、読みやすさの向上やSEO、アクセシビリティなど、ビジネス文書で逆ピラミッド構造を活用することによる、さらなるメリットについても紹介しています。

最後に

逆ピラミッド構造は、明快で影響力のあるビジネスコミュニケーションにとっての鍵となります。
今日から活用を始めることで読者にアピールし、あなたの伝えたいメッセージを見落とされないようにしましょう!


英語開示の重要性を考え直す海外投資家からの声

(English blog: 10 Quotes From Global Investors That Will Make You Rethink Your English Communications | One World Link)

前回のブログでは、東京証券取引所(東証)の開示の規制変更とその背景について取り上げました。東証の調査(英語ページ)によると、多くの海外投資家が、日本企業の英文開示の「タイミング」と「量」について不満を抱いていることが明らかになっています。

今回はもうひとつの重要なポイント、**開示の「質」**について深掘りしていきたいと思います。
調査結果からもわかるように、投資家は「正確でプロフェッショナルな自然な英語」を求めています。しかし、現状はどうでしょうか?

今回は、投資家が実際にどのような課題を感じているのか、リアルな声をご紹介しながら、英語開示の重要性を改めて考えていきたいと思います。

投資家が感じるフラストレーションとは?

会社の開示資料を概要やサマリーだけで済ませていませんか?
英語開示をスピーディに出せばそれだけでも一見、効率的に思われるかもしれませんが、長期的には大きなリスクを伴います。海外投資家は、十分な情報がなければ適切な投資判断ができないからです。不十分な英文開示は、投資の障壁となってしまいます。

実際の投資家の声を見ていきたいと思います。

英語でリアルタイムの質の高い情報を入手することはまだ難しく、翻訳に頼らざるを得ないことも多い。」
(欧州⼤陸拠点・運用会社・投資担当)
「多くの場合、日本語での開示が英語よりもはるかに優れている。
(英国拠点・運用会社・調査担当)
「英語での情報開示が⼗分に⾏われている会社は少ない。英語と日本語でどのような情報が欠けているのかさえ明確でないこともある。
(英国拠点・ヘッジファンド・投資担当)
「多くの会社が、⽇本語の開示よりも、英文開示で開示する情報は明らかに少ない・・・」
(英国拠点・運用会社・調査担当)
⽇本がグローバルマーケットでリーディングするには、⼀次開示は英語で⾏うべきである。欧州の大企業が重要な情報開示を自国フランス語やドイツ語で最初に公表しているのを⾒たことがない。⽇本は、⽇本語の情報開示を優先することで、外国⼈投資家よりも国内投資家の⽅が重要だというシグナルを世界に発信している。
(⽇本拠点・運用会社・投資担当)

このように、多くの海外投資家が、「要約版」や「情報不足の英語開示」に不満を感じているようです。必要な情報を英語で十分に得られなければ、投資先を変えてしまう可能性もあります。適切な情報開示が、投資家の信頼をつなぎとめる鍵になるのです。

生成AIでの翻訳は解決策になるのでしょうか?

DeepLやChatGPTなどの生成AIを活用して、IR資料や開示情報を翻訳されていませんか?
機械翻訳を活用すれば、一見「迅速かつ網羅的な開示」ができるように思われるかもしれません。

しかし、投資家の意見を聞くと、その期待とは裏腹に、「機械翻訳では不十分」との声が多く上がっています。

「コールは英文の書き起こし付きでは公開されず、英文が開示される場合でも機械翻訳されたものであることが多く、メッセージの意味をうまく捉えることができない。
(英国拠点・運用会社・調査担当)
IRプレゼンテーションは機械翻訳ツールでの翻訳が困難であるため、英文開示の重要性が高い。」
(米国拠点・運用会社・調査担当)
決算短信や適時開示書類は非常に重要であるため、機械翻訳に任せることはできない。
(米国拠点・運用会社・調査担当)
「日本語資料の機械翻訳に時間を消費する
(欧州⼤陸拠点・運用会社・投資担当)
IR説明会資料は、機械翻訳を使⽤して英語に翻訳するときに理解することが非常に困難であるため、翻訳することが最も重要である。加えて、IR説明会資料はその会社が何をしているのか、どのように⾃らを表現しているのか、戦略などを理解する上で最も重要であると思う
(米国拠点・ヘッジファンド・調査担当)

投資家が機械翻訳された資料を読む場合でも、英語に翻訳されていない資料を投資家が自ら機械翻訳して読む場合でも、本来の意味が正しく伝わらないことがよくあります。特に、日本語から英語への機械翻訳は、不自然で分かりにくい表現になりがちで、大幅な修正が必要になることも少なくありません。たとえひとつひとつの単語が丁寧に翻訳されていたとしても、全体の意味が誤って伝わることもあります。

オーストラリア国立大学豪日研究センター研究員であり、日本証券アナリスト協会の専務理事(代表理事)である神津多可思氏は、東アジアフォーラムにおいて、近年のAIの進歩と、今後の東証の規制変更への潜在的な影響について、次のようにご指摘されています。

AI翻訳の進歩により、日本語から英語への言語の壁は低くなるだろう。しかし、もうひとつの課題が残る。それは、英語圏と日本語圏では“説明や説得のロジック”が異なることだ。日本語では完璧な原稿であったとしても、英語では、理解されたとしても、それほど注目はされないかもしれない。単に正確に翻訳するだけでは不十分であり、グローバル・スタンダードに沿った構成や表現が求められる。それは企業経営情報の英文開示でも同じことである。」
(出典:East Asia Forum

つまり、英語と日本語では、情報の伝え方がそもそも違うため、単なる翻訳ではなく、論理の流れや文章の組み立て自体を英語の基準に合わせる必要があるということです。効果的な翻訳をするためには、単に言葉を置き換えるのではなく、文章の構成を工夫し、内容の順序を整理し、明確に伝わるようにすることが大切なのです。このプロセスには、やはり人の手による細やかな調整が欠かせません。急いで機械翻訳に頼るだけでは、不十分になってしまいます。特に投資のような重要な判断をする場面では、文章の正確さ、文脈の理解しやすさ、そして、明確な表現が求められるのです。

2025年4月はすぐそこです! 今のうちに英語開示を見直しましょう!

2025年4月が目前に迫っています。東証の新ルールにより、プライム市場の上場企業には日本語と英語の同時開示が義務付けられます。つまり、英語での開示を後回しにすることは、もはや許されません。

海外投資家の信頼を得て、長く関係を築いていくためにも、今こそ英語開示を真剣に考えるタイミングです。明確で質の高い翻訳は、「この企業は国内だけでなく、すべての投資家を大切にしている」というメッセージになります。

  • 英語開示は十分な情報量を確保できていますか?
  • 機械翻訳に頼りすぎて、誤解を生んでいませんか?
  • 投資家にとって分かりやすい構成になっていますか?

質の高い英語開示を実現するには時間がかかりますが、今のうちに整えておけば、あとで焦ることなくスムーズに対応できます。2025年4月の締め切りが迫って慌てる前に、今から準備を始めませんか?

「英語開示をもっと分かりやすくできるかな?」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。海外投資家を惹きつける、クリアで魅力的な開示資料を作るお手伝いをさせていただきます。

お問い合わせはこちら

「せっかく英語版のレポートを作成しても読まれない? 日本語から翻訳された英文レポートの落とし穴とは」

(English blog: Why Your Readers Don’t Read Your English-Language Communications | One World Link)

英語のレポートを日本語のレイアウトのまま、作っていませんか? 投資家が英文レポートを読まないのは、そのレイアウトが原因かも?

英語版のレポートを作成するとき、日本語のレポートをただ翻訳するだけで満足していませんか?グローバルな読者、特に英語を話すステークホルダー向けにレポートを作成する際、単に日本語を翻訳するだけでは不十分です。

実は、英語と日本語では「読みやすいレイアウト」の基準が全く違います。レポートのデザインやレイアウトが、可読性や読者の関心に大きな影響を与えるのです。

「せっかく英語に翻訳したのに、読んでもらえない…」
「内容には自信があるのに、なんだか読みにくいと言われる…」

もしこんな経験があるなら、それはレイアウトが日本語仕様のままになっているせいかもしれません!

日本語と英語ではレポートのスタイルは異なることが多いため、英語の読みやすさを考慮したデザインにすることが重要です。

なぜ、レイアウトが重要なのでしょうか?

翻訳作業に何ヶ月もかけて完成させた英語レポート。それなのに、読んでもらえない、もしくはレイアウトのせいで内容が伝わらないとしたら、どうでしょうか?

レポートの質と同じくらい、適切なレイアウトを選択することが重要です。日本語のレポートは、フォントや表、画像、見出し、行間、スペースなどを日本語向けに最適化して作られます。
では、英語版も同じレイアウトでいいのでしょうか?

多くの企業が、日本語版と全く同じレイアウトを英語版でも使用しようとします。その結果、読みにくく、内容が伝わらない英語レポートになってしまうのです。

例えば、日本語のレポートでは、見出しや小見出し、グラフや図表に、縦書きを使用することがよくあります。しかし、横書きが基本である英語ではそうはいきません。
ネイティブの英語読者は、縦書きや文字を詰め込みすぎたレイアウトに違和感を覚え、読みづらいと感じます。だからこそ、レポートをデザインする際には、日本語版だけでなく、英語版のレポートも作成することを念頭に置くことが重要なのです。

では、日本語仕様のまま翻訳された英語レポートには、どんな問題が起こるのでしょうか?

日本語のレイアウトをそのまま使うと起こる問題点

1. 読みにくい(Poor Readability)
日本語のレポートでは、縦書きのテキストが頻繁に使われます。
しかし、英語は左から右、上から下へ読むのが通常です。縦書きの要素や不自然なスペースがあると、読者は混乱してしまいます。

2. スペースの最適化ができていない(Space Optimization)
日本語では2文字ほどの漢字で表現できる見出しやテキストラベルは、英語に翻訳すると、その2倍以上のスペースが必要になることもあります。
そのため、日本語向けにスペースを最適化している表やグラフが、英語版では文字が詰まりすぎて読みにくくなることがあります。

3. プロフェッショナルに見えない(Professionalism)
英語のデザイン原則に沿って作られたレポートは、洗練された印象を与え、企業の信頼性を高めます。
しかし、日本語のレポートをそのまま英語に翻訳すると、デザインに違和感が生じ、見た目のクオリティが低く見えることがあります。

では、どのようなレイアウトが英語では適しているのでしょうか?

英語レポートを「読みやすくする」ポイント

1. 日本語の文章を作る時点で、英語翻訳を考慮する
日本語では、長い一文や主語があいまいな文章、受動態などがよく使われます。しかし、これらはそのまま英語に翻訳すると、理解しにくくなる原因になります。
翻訳しやすい日本語を書くことも重要です。

2. 横書きを基本にする
縦書きや首を傾けないと読めないような配置は避け、英語の標準である左から右への横書きレイアウトにしましょう。

3. 英語向けのフォントを選ぶ
Arial、Times New Roman、Calibriなど、英語向けのフォントを使用しましょう。
游明朝やMSゴシックのような日本語向けのフォントを使うと、英語の文字のバランスが崩れたり、スペースが不自然になったりします。
これらのフォントを並べて比較してみましょう。以下の画像は、Wikipediaのマイケル・ジャクソンに関する記事の同じ段落を、3つの異なるフォントで表示したものです。
一番左は、英語向けに最適化された一般的なフォントであるArialを使用しています。中央と右端は、同じサイズ・同じ設定のまま、それぞれ游明朝とMSゴシックで表示しています。

游明朝では、改行1つでどれだけスペースを取るかに注目してください。
MSゴシックでは、文字がブロック状に見え、単語間のスペースが広がっているのが分かります。
フォントが占める縦方向・横方向のスペースに注意しましょう!
適切なフォントを選ぶことが大切です。

4. 行間・余白を適切に調整する
行間や余白を広めにとることで、視認性が向上し、見出しや小見出しがより明確になります。

5. グラフや表はシンプルにする
日本語のレポートでは細かいデザインが好まれることもありますが、英語ではシンプルで分かりやすいグラフや表が好まれます。読者を混乱させてしまうような複雑すぎるデザインやラベル、テキストは避けましょう。
デザインが細かすぎると、かえって情報が伝わりにくくなってしまうこともあるのです。

6. 視覚的なメリハリをつける
見出しや小見出しは内容を分かりやすく簡潔に表現して太字にする、箇条書きを活用する、番号付きリストを使うなど、英語の読者がスムーズに情報を読み取ることができるレイアウトを意識しましょう。

(画像引用元:Design Studio UI UX)

上記の画像は、タイポグラフィの階層を分かりやすく示した例です。タイポグラフィの階層は、読者が必要な情報に素早く簡単にアクセスできるように、活字を整理する方法です。タイポグラフィの階層を適切に設定することで、読者が情報をスムーズに理解しやすくなります。
一番左のレイアウトは、階層がなく、文章がすべて同じフォントサイズ・スタイルで書かれており、どこが重要なのかが分かりにくいです。見出し、小見出し、本文という3つの階層で構成し、文字の大きさを変える、太字にする、斜体にするなど、レイアウトに工夫を加えていくことにより、右にいくほど読みやすくなっていることが分かります。

7. モバイルでの閲覧にも対応したデザインにする
多くのステークホルダーは、スマートフォンやタブレットでもレポートを確認します。
そのため、小さい画面でも読みやすいレイアウトを意識することが大切です。

英語レポートのレイアウトを工夫する価値はあるのでしょうか?

英語レポートのレイアウトを工夫する価値、それは間違いなくあります!
レポートのデザインを英語向けに最適化することは、単なる「手間」ではなく「投資」です。
しっかりとレイアウトを調整すれば、「せっかく翻訳したのに読まれない…」という事態を防ぎ、グローバルな読者にメッセージをしっかり届けることができます!
英語レポートを作る際は、翻訳だけでなく、レイアウトにもこだわってみましょう!


日本株の評価が難しい理由とは?             投資家が語る評価の壁とは・・・

(English blog: Why Are Investors Undervaluing Your Stock? Investors Say, “Much Harder to Evaluate the Risks of an Investment in Japan…” | One World Link)

みなさまの会社の英文開示において、海外のステークホルダーから満足のいく反応を得られていますか?「なかなか海外機関投資家と活発なやり取りはできていない…」と感じている日本の企業も多いのではないでしょうか。

2023年に東京証券取引所(東証)が実施した調査によると、海外機関投資家の72%が、日本企業の英文情報開示の現状に不満を抱いていることが明らかになりました。この調査は、主にアメリカ、イギリス、ヨーロッパ本土、アジア太平洋地域の機関投資家を対象にしており、不満の主な原因として、特に中小型企業における開示の遅延や英語資料の欠如が挙げられています。(東証調査(英語ページ)

このような背景もあり、東証は新たな規定として2025年4月から、東証プライム市場に上場している企業は、財務結果や適時開示情報などの重要な企業情報を、日本語と英語の両方で同時に開示することが義務付けることを発表しました。この新たな規定は、英語での開示を主な情報源としている海外投資家の長年の不満を解消するための大きな一歩になるかと思われます。

それでは、具体的に、海外投資家が何に苦労しているのか、なぜ苦労しているのかを見ていきましょう。

投資家の声

東証の調査における海外の機関投資家たちの自由回答には、開示情報の翻訳時期、量、質など、共通する不満がいくつかあります。

例えば、あるイギリスの資産運用会社のリサーチ担当者は、「多くの企業は英語開示で情報が少なすぎ、また、開示が日本語より2、3週間遅れることが多い。このタイミングの違いが大きな機会損失を生んでいる」と述べています。

さらに、アメリカの資産運用会社の担当者は、「情報開示は全体的に大きく改善されたが、まだ改善の余地がある。中小企業の多くは、英語での詳細な投資家向け情報が欠けていることが多い」と指摘しています。

また、ヨーロッパのある会社は、「日本語の開示が、英語よりもはるかに充実していることがよくある」と話しています。

アメリカの資産運用会社の「私は、日本への投資リスクを評価するのは、ほかの国々に比べてずっと難しいと感じています」というコメントは、まさに上記に述べた多くの不満を要約していると言えるでしょう。海外投資家の多くは、日本企業の開示情報に対して不満を抱えており、その結果、リスク評価が難しくなっているということなのです。

その結果

2023年の東証の調査によると、英文開示が不十分な企業に対して、投資家の41%が評価を割愛し、69%が投資対象から完全に除外し、28%がポートフォリオ内での投資比率を引き下げたと報告されています。

【図1】

Q. 英語での情報開示が不十分であることによって、どのような影響を受けましたか?

※上の図1は引用元からの取っておりますが、「IRミーティングの対話が深まらなかった」の青色の棒グラフはおそらく、オレンジ色となります。また、「投資対象から除外した」のオレンジ色の棒グラフは青色かと思われます。

(参考:東証調査

これらの結果から、英文開示の不十分さが、投資家の行動、さらには日本株の評価に直接的な影響を与えることが分かります。

2025年4月に注力すべきことは?

これらの問題を理解することも重要ですが、何から始めればよいのか、次の一歩をどう踏み出せばよいのかも、大きな課題となります。2025年4月からの東証の規制では、プライム市場に上場している企業に対して、以下の情報を開示することが求められます。

  1. 財務実績:これには、年次、半期、四半期ごとの決算報告が含まれます。日英の同時開示により、すべての投資家が企業の財務データに平等にアクセスできるようになります。
  1. タイムリーな開示情報:下記、投資判断に影響を与える可能性のある重要な情報を含みます。
    • 業績予測の修正:財務パフォーマンスの更新
    • 合併・買収:重要な企業再編や事業統合の発表
    • 経営陣の変更:主要な経営陣の異動に関する通知

なお、この東証の規制では、投資家の意思決定に必要な本質的な情報を網羅することを条件に、日本語開示の要点や抜粋した内容を英語で提供することが認められています。(JPXニュースリリース

これは、英語での情報開示に悩む企業にとって、大きな第一歩となるでしょう。しかし、はたしてそれで十分なのでしょうか?

前述の通り、投資家は完璧な英文開示を求めています。上記調査の自由回答から、多くの投資家が、要約や抜粋された開示しか提供されないことに不満を抱いていることが分かりかります。ある回答者は、「英語でさまざまな報告書を提出する企業も増えてきているが、例えば、決算短信のみを英語で公表するだけの企業には不満がある」と述べています。

また東証調査では、回答者が投資判断を下す際、決算短信に加え、IRプレゼンテーション(87%)、有価証券報告書(85%)を重要視していることも明らかになりました。投資家の優先順位の詳細について、図2をご覧ください。

【図2】

Q. 日本の上場企業が開示資料を英語で提供する必要性と、日本語版とのタイミングの関係について、各書類について次のいずれかを選択してください。

(参考:東証調査

まとめ

2025年4月からの変更は、単なる規制の調整ではなく、日本企業が投資家の信頼を再構築するための重要な機会でもあります。高品質でタイムリーな英語開示を優先することは、企業のグローバルな評価を高め、機関投資家を惹きつけ、株式評価を向上させるための鍵となるでしょう。

この改正により、当初は困難を伴うかもしれません。しかし、適応するための積極的な対策を講じることで、企業は透明性を高め、グローバル・エンゲージメントのリーダーとしての地位を築くことができるでしょう。相互の結びつきがますます強まる世界において、企業のストーリーを効果的に伝える能力は、単なる競争上の優位性ではなく、もはや必須の期待事項なのです。

>>次回の2月号では、翻訳された英文開示情報の質に関する投資家の声について、詳しくご紹介いたします。

――――――

読み手のステークホルダーを混乱させないライティングスタイルの一貫性とは?

(English blog: Do You Confuse Stakeholders With Inconsistent Style? | One World Link)

文章を書いたり、コミュニケーションをとったりする際、意外と気になるのが「スタイル」の一貫性です。例えば、タイトルでどの単語を大文字にするか、日付や数字の書き方、学位の表記(「PhD」か「Ph.D.」か)、さらには「on-site」や「onsite」の使い分けなど、ちょっとした疑問が浮かびませんか?

これらの疑問を解決するためにこそ、「スタイルガイド」が必要なのです。英語での執筆をする際、多くのプロフェッショナルが最初に選ぶのがスタイルガイドです。その理由は、スタイルガイドが一貫性のある洗練されたコミュニケーションを支えているからです。

企業にとって、コミュニケーションの一貫性は非常に重要です。一貫性のない表現やスタイルは、ステークホルダーに混乱を与え、ブランドの信頼性を損なう可能性があります。スタイルガイドがないと、古いルールや曖昧な記憶に頼ってしまい、プロフェッショナルな文章にはそぐわないことがあるのです。そして、矛盾や非効率、ミスコミュニケーションにつながる可能性があり、企業にとって大きな損失となりかねません。

特に翻訳業務では、スタイルガイドの役割が一層重要になります。翻訳者が貴社のスタイルガイドを理解し、それを遵守することができて初めて、一貫したブランドのメッセージが世界中で伝わります。適切にスタイルガイドが活用されていれば、社内外で行われるすべてのコミュニケーションが、企業の基準に沿ったものとなり、プロフェッショナリズムが保たれます。

推測に頼ることなく、コミュニケーションの質を向上させるためには、スタイルガイドを選び、それを実践することが大切です。スタイルガイドがあれば、文章の一貫性を保ちながら、ブランドの信頼性を確立することができます。まだスタイルガイドを導入していない方は、ぜひ今すぐに検討してみてください。きっと、あなたのコミュニケーションがさらに洗練され、効果的になるはずです。

スタイルガイドとは?

―あなたの文章を一貫性のあるプロフェッショナルにするための必須ツール―

スタイルガイドをご存じですか?スタイルガイドとは、文書の執筆やフォーマットを標準化するためのルールと推奨事項がまとめられたガイドラインのことです。これを使うことで、文法や句読点、トーン、フォーマット、さらには引用スタイルに至るまで、文章全体の一貫性を保つことができ、プロフェッショナルな印象を与えることができます。

業界によって求められるスタイルガイドは異なり、それぞれのコミュニケーションニーズに合わせて選ばれます。例えば、ジャーナリストは、APスタイルを使って簡潔で分かりやすい報道を行い、学術分野では、シカゴ・マニュアルやAPAスタイルのような、詳細な引用とフォーマットに特化したガイドラインが使用されることが一般的です。スタイルガイドを使用すれば、ライターは読者に伝えたいメッセージをクリアに、そして一貫性を持って表現することができ、ターゲットオーディエンスにしっかりと響くコンテンツを作成することができます。

そこで今回は、英語で最も一般的に使用されているスタイルガイド4つ[K2] をご紹介し、それぞれの特徴を解説します。あなたの文章作成にぴったりのスタイルガイドを見つけて、一貫性のあるプロフェッショナルなコミュニケーションを目指しましょう!

代表的なスタイルガイドの概要

APスタイルブック(AP通信)
詳細はこちら

  • 分野: ジャーナリズム、メディア、広報
  • 目的: ニュースやメディアコンテンツに最適な簡潔で中立的な執筆ガイドラインを提供
  • 主な特徴:
    • 見出しはタイトルケースを使用
    • オックスフォード・カンマ(例えば「red, white, and blue」)を避ける
    • 数字1-9はスペルアウト(例:one, two, three)

シカゴ・マニュアル・オブ・スタイル
詳細はこちら

  • 分野: 学術、出版、書籍執筆
  • 目的: 著者、編集者、出版社向けの包括的なガイド。引用方法や原稿のフォーマットなど、幅     広いトピックをカバー
  • 主な特徴:
    • 2つの引用システム:人文学向けの「ノートとビブリオグラフィー」、科学分野向けの「著者-日付」
    • オックスフォード・カンマを強調
    • ビブリオグラフィー、索引、原稿準備に関する詳細なルール

MLAハンドブック(モダン・ランゲージ・アソシエーション)
詳細はこちら

  • 分野: 人文学、リベラルアーツ
  • 目的: 文学や芸術の学術的執筆のための引用とフォーマットのルールを提供
  • 主な特徴:
    • 本文中の引用と「Works Cited」ページをペアで使用
    • シンプルさと読みやすさを重視
    • 引用や言い換えに関する明確なガイドライン

APAスタイル(アメリカ心理学会)
詳細はこちら

  • 分野: 社会科学、心理学、教育、医療
  • 目的: 研究重視の分野における引用とフォーマットを標準化
  • 主な特徴:
    • 著者-日付引用スタイル(例:Smith, 2020)
    • 見出し、要約、表/図に関するルール
    • 精度と科学的な明確さを重視

———————————————————————————————————-

《クイック比較》

  • AP: 速くて明瞭。ニュースで使用される。
  • CMS: 詳細で専門的。書籍やエッセイで使用される。
  • MLA: 引用に重点を置く。人文科学で使用される。
  • APA: データ量が多く、研究に重点を置く。科学分野で使用される。

———————————————————————————————————-

タイトルケースの違い

スタイルガイドによって、タイトルケースのルールが少しずつ異なります。どの単語を大文字にし、どの単語を小文字にするかを見てみましょう。

スタイルガイド大文字にする単語例外例文
APスタイル・最初と最後の単語
・主要な単語
・4文字以上の単語
・不定詞の「to」
・ハイフンで繋がれた主要単語の2番目の部分
冠詞、接続詞、4文字未満の前置詞は小文字にする(最初や最後以外)Annual Report Highlights Growth Over Key Markets
シカゴ・マニュアル・最初と最後の単語
・主要な単語
・一部の接続詞
・5文字以上の前置詞
冠詞、接続詞、5文字未満の前置詞は小文字にする(最初や最後以外)Annual Report Highlights Growth over Key Markets
MLAスタイル・最初と最後の単語
・主要な単語
・従属接続詞
冠詞、対等接続詞、前置詞は小文字にする(最初や最後以外)Annual Report Highlights Growth over Key Markets
APAスタイル・最初と最後の単語
・主要な単語
・4文字以上の単語
・ハイフンで繋がれた主要単語の2番目の部分
APスタイルと同じAnnual Report Highlights Growth Over Key Markets

※主要な単語には、名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞が含まれます。

タイトルケースのルールについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。

スタイルガイド別の表記の違い

スタイルガイドによって、同じ単語でも表記方法が異なることがあります。例えば、以下のように違いが出ます。

  • APスタイル: We invited three professors, two Ph.D. students, and one research assistant to the seminar.
  • シカゴ・マニュアル / MLAスタイル: We invited three professors, two PhD students, and one research assistant to the seminar.
  • APAスタイル: We invited three professors, two Ph.D. students, and one research assistant to the seminar.

では、OWLはどのスタイルガイドを推奨するのか?

文章作成において最も大切なのは、「一貫性」と「明確さ」です。この2つがしっかりしていないと、どんなに素晴らしい内容でも、読者にうまく伝わりません。そこで、OWLが推奨するスタイルガイドは、APスタイルです。

特に、投資家向けのIR(インベスター・リレーションズ)コミュニケーションには、APスタイルが非常に効果的です。その理由は、APスタイルが掲げる「明確」「簡潔」「プロフェッショナル」といった特徴が、投資家やステークホルダーに必要な情報を分かりやすく、的確に伝えるのに最適だからです。

APスタイルを使うと、複雑な財務データや四半期報告など、難しい内容もより理解しやすくなります。そして、何よりもAPスタイルは、幅広いオーディエンスに対してアクセスしやすいメッセージを届けるため、投資家はもちろん、一般の株主やビジネス関係者にも届きやすいのです。

このように、APスタイルはそのシンプルで明確な構造が、特にIR資料にピッタリです。投資家とのコミュニケーションをより効果的にするために、このスタイルを採用することをおすすめします。

適切なスタイルガイドを選ぶために

文章をさらに引き締め、プロフェッショナルな仕上がりにしたいなら、最初に考えるべきは「自分の業界」と「ターゲットオーディエンス」、そして「作成するコンテンツの種類」です。ニュース記事、研究論文、技術マニュアルなど、コンテンツの種類に応じて最適なスタイルガイドを選ぶことで、文章に一貫性を持たせ、ターゲットに合わせた内容に仕上げることができます。

スタイルガイドを選ぶ際には、そのガイドが自社の目標にどれだけ柔軟に対応できるか、そしてどのように自分たちの目的に合致するかを考えましょう。また、スタイルガイドのルールをチーム全員が把握し、統一感を持って作業を進められるようにすることも大切です。これにより、プロフェッショナルで一貫したコミュニケーションが実現します。

どんなコンテンツを作成するにしても、スタイルガイドをしっかり選ぶことで、より良い文章が生まれ、伝えたいメッセージがより効果的に伝わります。自分に合ったスタイルガイドを見つけて、文章作成をさらに進化させていきましょう!

もし、スタイルガイドに関するヒントや詳細な説明を探しているなら、Purdue OWLhttps://owl.purdue.edu/owl/index.html)はとても便利なリソースです。APAスタイルやMLAスタイル、シカゴ・マニュアルなどについて、簡単なヒントや詳しい解説が見つかります。

また、より正確で詳細な情報を得るためには、公式のスタイルガイドブックを参照するのがおすすめです。

自分の企業スタイルガイドを作成したい場合は、Mail Chimpが提供しているオープンソースのカスタマイズ可能なガイドが役立ちます!
Mail Chimpスタイルガイド

そして、スタイルガイドの作成に役立つ無料テンプレートも紹介されているこの記事もおすすめです。
最適なスタイルガイド50選(無料テンプレート付き)

【ご注意】

Grammarlyやほかの自動修正ツール、AIツールを使うときは、注意が必要です。これらのツールは、一般的な文章作成には便利ですが、選んだスタイルガイドに合わない修正を提案することがあります。特に、企業が採用しているスタイルガイドの具体的なルールと矛盾する可能性があります。そのため、ツールに頼りすぎず、自社のスタイルガイドに従うことが大切です。

一貫性とプロフェッショナリズムを保つためには、スタイルガイドのガイドラインを理解し、それに沿った執筆を行うことが不可欠です。自動修正ツールはあくまで補助的なツールとして活用し、最終的なチェックはスタイルガイドに基づいて行うようにしましょう。